98話 デッドエンド
ココは地獄か、天国か……
私は目を開けた
感覚だ
人としての感覚のまま立っていた
普通に、人間らしく、立っていた
私は汗で溺れそうな程の顔を触る
そして目の前に視線を向けた
目の前、その先には……
咲子が居る……!?
その左奥には悪魔…… 高田教授の姿があった
地獄か……
いや、違う……
生きている?
生きている……
私は生きている……
何故だ!?
咲子が言った
「サファイアの盾か…… 事前に掛けてるなんて、念の入り方がしっかりしてるね……」
サファイアの盾!?
いつ!?
そうか!
咲子達に会う前にアーサーが敷地内に入った所で念の為】と掛けてくれた盾か!?
助かった……
汗まみれの顔を触った
そして手の甲で汗を拭き取る
その手には少し、赤い血がついた
汗でにじみ、色が薄れる
手に付いた血液を見る限り……
少々の切り傷で済んで居るようだ……
え!?
でも、サファイアの盾って……
いや、今はそんな事は後回しだ
あっちは本気
私も集中しなければ!
「まぁね…… アーサーに救われたわ!」
「アーサーに? フフっ…… そうなのね」
なぜ笑う!?
何か検討違いの事でも言ったのか!?
いや、揺さぶっているだけだ!
「何はともあれ…… 咲子…… 仕切り直しよ!」
私は咲子を見据えて叫んだ
彼女はピストルの形を模した右手を下ろした
何故下ろすの!?
貴方の攻撃は、それがメインでしょ!?
攻撃の意志が無いとでも言うの!?
「咲子…… 何で右手、下ろすの?」
「終わったからよ」
「終わった……?」
「そう、英語は解らないけどね…… 言葉通り、デッドエンドってやつ」
デッドエンド……
行き止まり……
何も起きていない……
私には何も起きていない!
行き止まりって何!?
「泉…… その顔では、何が起きているか想像も付かないみたいね」
だから何!?
私は何の問題も無い!
自信を持って勝ちを誇られる物は喰らっていないハズ!?
「え、ええ…… 理解出来ていないわ……」
咲子は笑った
そして言った
「貴方の負けよ…… それが確定したわ…… そして、見えていない事が【泉と私との差】よ」
見えていないって何だ!?
何が起きているんだ!?
イライラするよ、まったく……
勝ち誇りやがって……
私はまた右半身を咲子に向けた
構えた
何が負けてるって!?
まだ終われない!
「ふざけないでよ! 私はまだ終わって……」
そこまで言った時だった
ジリっと右足を前に擦り進めた足が背後に飛んだ
私はバランスを崩し、前に倒れ込む
何が……
何が起きた!?
疑問と状況把握よりも強い何かに襲われる
熱い!!
倒れながら私は右足を見た
右足の脛が鮮血を流していた
そして少し窪んだ様に見える
何かに削がれた!?
脛の肉ごと吹き飛んだの!?
私は痛みをこらえて立ち上がる
痛みでフラつく……
焼けるような痛み……
咲子はまた笑った
「ね? 終わりでしょ?」
何かした……
咲子が何かした……
動作に何か違和感があったわけでは無い
でも、アノ顔は…… 咲子の攻撃だ
私は動揺を隠せなかった
見えない攻撃なんて…… 信じたくない
出来うる限りの冷静を装って、私は口を開く
「へ、へぇ…… 面白い事するね…… 咲子……」
「でしょ♪」
なんだこの余裕は……
ホントに終わり…… 行き止まりなのか!?
教えるか、教えないか……
それでも私は聞いた
さっきの事といい、多分、咲子は話す
絶対的優位性を持っているからこその余裕で……
「咲子…… 何が起きたのよ……?」
「地雷よ♪」
「地雷……!?」
「そ、地雷♪ 地上にあるわけじゃ無いから、空雷…… かな? そんな言葉無いけどね…… アハハッ♪」
巧く私に喰らわせた余裕
その表情が、ソレを物語っていた
「泉、目を凝らしてご覧よ♪」
え!?
「目を……?」
「そ、目を凝らすの♪」
私は目を細めた
空気中には何も無い
地面にも何も無い
石ころが在るだけ
石が!?
いや、まさかね……
「見えてないの? なら足りないよ?」
「足りない……?」
「ええ、力が足りない…… もっとルビーアイを【眼】に掛けるイメージでやってみて?」
ルビーを眼に!?
そうか……
アメリカで手に入れた感覚上昇の様に掛けるって事か!
私は眼を閉じた
ルビーを纏う感覚を頭部に向ける
そして、眼元に集中する
こんな、感じか……
そう思い、眼を開いた
その時だ
恐ろしい光景に眼を疑う
ナンダ…… コレ……!?
ソコには……
無数に飛散する【紫色の球体】が浮いていた
「コレは…… 何!?」
「やっと見えた? ソレが私の罠よ♪ 私から生まれた爆弾だから、私には危害が無い…… でも貴方には…… ね? もう解るでしょ?」
この足のように……
肉体を食い千切られるって!?
なんて面倒な力……
ソレよりも…… 痛すぎる……
平静を装うのがやっとだ……
そう、平静に…… 冷静に……
そう、冷静に力を使いこなせ……
私はルビーを右足に向ける
感覚を抑えろ……
痛覚を取り払え……
思いの外、素早く痛みが薄れる
やれば出来るじゃん…… 私……
そう、こんな時こそ…… 冷静に……
私はパパとママから受け継いだセンスが有る!
自信を持て!
そして冷静に咲子に聞いた
「アンタ…… 一体いつの間に……」
「今さっきよ? 戦ってる最中に種を蒔いたの♪」
「今…… 芽が出たって事……?」
「そゆことー♪」
そう言って咲子は笑った




