97話 戦闘開始
私から視線を外さない咲子が言った
その右手は、やはり先程までの様に【人差し指と中指】をピンと伸ばし、ピストルの姿
私も対処しやすい半身の構え
そして、自身にルビーアイを纏わせた
「泉…… お先にどうぞ」
そう言った咲子の指は私に向けられている
頭部、というよりは若干下……
多分、狙っているのは胸だ
考えてるね、咲子……
この状況で頭部に確実にヒットさせるのは射撃上級者だ
的の小さい頭部よりも、大きい体…… その中心に有る胸を狙うのは銃撃戦の殺し合いなら常套手段ともいえる
確実に当てて、怯んだ頭部を改めて狙う
そのつもりだろう
でも何故だ……
相手は私よりも遠距離に向いているハズ……
近付かれるのは、むしろ不利なのでは……
そう考えに至った私は答えた
「アンタからどうぞ♪」
フフっと笑う咲子
「なら行くよ」
「ええ」
その人差し指が紫色に染まる
さっきより遥かに小さい!!
リンクが切れるとココまで落ちるのか!?
だが、早かった
野球ボール程の大きさの弾丸が私に向かってくる!
私は左に避けながら、その弾丸に今持つ力を高密度に高めたルビーを放った
だが、貫通する
やはりダメか!
私の隣を恐ろしい力の塊が通過した
当たれば終わり
冷や汗が流れる
相手は長距離戦に向いている
なら、近付けば!!
私は咲子に向けて走った
彼女は後ろに飛び退く
私よりも遅い
私は追った
私の目の前に咲子を捉える
咲子のピストルが目の前の私、その頭部に向いた
マズイ!
私は頭を傾ける
咲子は放つ事をせず、少し顔を歪ませた
撃たない!?
何故だ!?
いや、考えるな、私!!
私はルビーを纏った拳を放つ
咲子はすんでで体の前にXの字に組んだ腕で受け止めた
それでも吹き飛ぶ咲子
追い打ち!
私はまたルビーを放った
捉えた、完全に!!
パンッッ!!
陳腐な破裂音が周囲に響く
少し吹き飛び、それでもいつも通り立つ咲子にダメージは無さそうに見える
だが、今の音は当たったハズ!?
当たったのにナゼ!?
正面に居る咲子は防御の為に組んで居た腕を下ろした
その体には異常がある
怪我では無い
青いオーラを纏って居た
わかる、これはサファイアの盾……
まさか……
ラピスラズリって……
疑問は聞く
応えなくても、その中で藻掻くしかない
「咲子…… ラピスって……」
ニコリと笑う咲子
「さすがね…… そう、気付いたでしょ? ラピスは【ルビー】と【サファイア】の【ハイブリッド】よ」
やはりか……
厄介な……
でも、勝機に繋がりそうな糸口は見えた
私よりも、どれ程高い力がラピスに有るのかは解らない
でも今までの咲子の潜在能力からすれば……
私に分が有るのは、【ルビーアイの絶対量】……
そして、両親から受け継いだ【ルビーアイとの相性】……
今の咲子の限界は解らない
ママが3分の2と言っていた絶対量
それをドコまで縮められてしまったか……
もはや私を超えているのか……
それすら謎だ
謎でも、最善を求めるならラピスは未知の力……
甘くは見れない
体に纏う力の相性は、私の方が上に見える
でも…… だから念の為、短期戦にするべきだ
今解っているのは、アノ指から放たれる弾丸が脅威……
近距離なら私に分がある
と、思う……
それに……
いや、いい、まずは倒す
無駄な時間を与えてはマズイ
私は走った
咲子に向けて!
とにかく近付く!
瞬発力は私が上だ!
また目の前に咲子を捉えた
やはり、私の方が速い!
私は咲子に【紅い右拳】を振る
その手を咲子は【蒼い左掌】で受け止めた
即座に【紅い左拳】を放った
それもまた彼女は【蒼い右掌】で受け止めた
「やるわね、泉……」
「甘いんじゃない?」
私の右拳は囮だ
そして、左拳も囮!!
精一杯のルビーを込めた【深紅の右膝】を咲子の腹に向けて突き上げた
「グッ……!」
拳を掴んだ手を離した咲子は、嗚咽と供に宙に浮いた
だがその腹には青い蜃気楼が見える
盾出すの速い!!
だが、今しか無い!!
このゼロ距離で放つしかない!
私は今持てるルビーを一気に右手に貯めた
瞬間、咲子の右手が形作るピストル
ソレが私の頭部を捉えた
宙に浮いて尚、狙うって!?
でも今しか無い!
感覚で動けば避けられる!!
紫色の弾丸が私に放たれる
今!!
私は顔を傾け、避けた!!
顔の隣!!
ブォ!!
小気味悪い音と共に、直ぐ横の空間が裂かれる
「もう解ってんのよ咲子! アンタの弾丸は連射出来ない!! だから私の……」
勝ち!!
そう言いたかった
放たれたのだ
2撃目が!!
確かに躱した!!
なのに何故!?
私の目に映ったのは咲子の【人差し指】では無い
咲子の【中指】だった
人差し指と中指を向けていたのはコノ為か!!
2段拳銃…… デリンジャー・ガン……!!
最初から2発目を準備していたんだ……
1発目を回避されるのが前提なんだ!
全部先読みされていたのか!
私が囮にした拳……
それよりも自分を近距離でも守れる…… 強固な盾の自信があったのか!
1発目を後で放たなかったのはコノ為……
確実に1発目を避けさせて安心させる……
それこそが……
咲子の囮!!
アンタ……
凄いよ……
咲子……
私の負けね……
紫色の銃弾が……
1発目を躱し、傾けた私の頭部に一直線に向かってくる
スローに見える
来る
無理……
避けられない……
当たる……
もう目の前に……
ズバォォン!!
重い音を立て、私は吹き飛んだ事を鮮明に恐怖として覚えている
全感覚の中で、特に視覚が現実から千切れた……
そんな感じだった……
私の全てが終わった
助けられなくてゴメン、パパ……
親不孝でゴメン、ママ……
先に……
逝くね……




