89話 新聞記事
2人に叫ぶ私
そんな私の姿に少し冷静を取り戻した様に見えるアーサーが殴り掛かろうとした足を止め、その後、手を降ろした
「泉……」
「何があったの!? いつも仲良いのに!!」
「泉…… 実ハ……」
そこまで言った言葉を遮ったのはライだった
別に、手で遮った訳ではない
殴り掛かろうと遮った訳でも無い
圧倒的な……
今までに感じた事も無いプレッシャー
それがライから私達2人に放たれていた
そんな事はあり得ない!?
いや、有り得なく無い……
今まで温厚だと思われていたライ
今までと違う自己主張を感じた
そして、言った
「アーサー…… ソレ以上ノ言葉ヲ言ウナ…… タイミングガ重要ナノハ知ッテイルダロウ? オ前ノ言動ハ全人類ヲ殺スゾ」
そのプレッシャーに負けたのか……
アーサーは2歩、後退って言った
「ライ…… 僕達ナラ大丈夫…… ソウ言ッタネ……」
「アア……」
「信ジルゾ……」
「当タリ前ダ…… 言ッタロウ? 僕ダッテ納得ハシテイ無イ、ト…… 実行サレ無イノガBestナンダヨ……」
「ソウ…… ダナ……」
明らかに感じていたプレッシャーがフッと消えた
何があったのか見当も付かない
「ねぇ、何があったの……?」
「何デモ…… 無イヨ……」
それだけ口にしたアーサーは図書館に向きを直す
その背中にライは声を掛けた
「アーサー…… 今ノ…… 大切ナ物ヲ壊サレル、怒リト絶望感ヲ忘レルナヨ……」
背中を向けたままのアーサーが質問した
「怒リト絶望……?」
「アア…… 気ガ付カナイカ?」
「……フ…… ……ソウ言ウ事カ……」
「ソウ言ウ事ダ」
「Thanks……」
そう言ってアーサーは図書館に歩いて行った
私は振り向き、ライを見る
彼はスッと目を閉じ、そして同じく図書館に歩いて行った
私は少し、その場で佇んでいた
何があったのだろう……
聞いても教えてくれない
アーサーがアレだけ激怒する事……
何?
私の事?
別に私に今々、何かあったわけでは無い
考えても結論は出ない
そう思った私は図書館に戻った
図書館に入り、新聞のコーナーに戻る
何の事は無い
2人はたまに声を掛け合い、新聞を丁寧に読み進めていた
何があったのだろう?
もうそんな事は忘れ……
元に戻って良かった
それだけ、思った
3人で新聞を調べて行く
掛け時計を見ると、16:03を指していた
「何の情報も無いね……」
私が呟く
「アア……」
「アア……」
2人もソレに答えた
「何で無いのかな…… テレビでも取り上げられているのに…… キーワード…… かな……?」
「フム……」
「敵に関わる事…… 関わる事は…… ルビーアイ…… 研究…… 生物学…… 不思議……」
そうだ……
それを忘れていた……
それもキーワードに入れるべきだったのかも知れない
元々、その為に…… ルビーアイをもっと知るためにアメリカに留学したんじゃ無いか!
私は2人のメモ紙を取り上げ、ペンを走らせた
そこに書いたのは【生物学】だ
「ゴメン! この字も無いか調べて!」
そう言ってメモ紙を2人に手渡す
アーサーは目を丸くし、その【生物学】という文字をずっと見ていた
「どうしたの?」
「イヤ…… コノ字……」
アーサーは立ち上がり、新聞棚に歩いていった
そして指をゆっくり走らせて新聞をなぞる
そして一冊のソレを取り上げ、私達に広げた
「確カ…… ココニ…… ア! 有ッタ! 泉、コレジャナイカ?」
私はその記事を覗き込んだ
【ノーベル賞に期待】
そして隣には
【生物学の第一人者は東今日大学に】
と書いてあった
新聞の内容は至ってシンプルなものだった
簡単に言えば、新種の生物を見つけた事が記載され、また、自身でもハイブリッド生物を生み出す事に成功した
と、書いてあった
そんな事があって良いのか?
クローン技術なのでは無いのか?
ソレは問題が無いのだろうか……
そんな事も思ったが、特別驚くべき内容では無い
でも、驚いた
驚くに値した
そしてゾクリと背中に汗が流れる
その新聞には、中央に老人
その周りに数名の研究スタッフか生徒か……
そんな写真が掲載されていた
「この人…… 見た事がある……」
「ドレダイ?」
アーサーの問い掛けに指を指す
私の指は、中央の老人を指差した
「コノ…… オ爺サン?」
「うん…… 確か…… 昔、家で……」
記憶を蘇らせる
昔……
家のドコで……
3階……
書斎……
写真……?
家族写真……?
「家族写真!!!!」
「家族写真カイ? ドウシテ写ッテルンダ?」
「私のじゃ無い!!」
「ジャア、誰ノ?」
「桜ママよ!!」
「桜子サン? 父親カナ?」
「そうよ! だから咲子のお爺さん! この人が敵よ!!」
「何ダッテ!? 本当ナノカ!? マズイ、急ゴウ!!」
「そうね! 先ずは家に戻ろう! 早く!!」
そう言い、念の為その写真を携帯電話でスナップショットし、図書館を後にした




