86話 祖父
なに?
今、何て言ったの?
【孫】?
この男は、【祖父】?
いや、まさかね……
ハッタリだ
いや……
でも、この男が今、ハッタリを言っているようには見えない
真実?
いや待て、受け入れるな
確証など無いんだ
確証は無いけど……
確証を見つけてしまった……
私の名は……
母が、すべての花は美しく【咲き誇る】からと……
それと、祖父に操られてしまった美しかった祖母を思って、現世では幸せに…… そう思って付けたと言っていた
操る力を持った人間
奴が言った、自分のルビーアイに付随する力
記憶改ざん
それこそまさに、祖母に使った力なのではないのか……
それに、私は祖母に顔が似ていると……
声も似ていると……
それは、家族なら似て当然……
この男は…… まさかホントに……
でも、私の中には祖母は居ない
それは解る
彼女の記憶は勿論無い
胡桃ママのように別人格も無い
生まれ変わりでは無い
絶対だ……
私は私だ……
でも…… でも……
ホントに…… この人は……?
「教授…… 貴方…… まさかホントに……?」
「ああ、真実だ」
「私のお爺さん…… なの?」
「そうだ、聞いてないのか?」
「聞いてるわけ…… 無いでしょ……」
「そうか…… 随分嫌われた者だな……」
「でも、祖母は貴方に操られた…… そう聞いているよ……」
奴は静かに目を閉じた
「まあ、結論としては…… 間違いでは無い」
「結論……? 貴方はそれで愛していたと言えるの!?」
「だから結論だ…… 力の暴発だよ…… しようのない事だ」
「しようがない!? そんな言葉で勝手に終わりにすんな!」
「私には治せなかった…… 私の方が力が強かったからな」
「力が強いのと、治せないのとの違いが解らない!!」
フゥと、溜息をついた教授が口を開く
「咲子よりも私の力が遥かに強かった…… 私の傍に居るだけで、その力が干渉するんだよ……」
干渉……
違う……
多分、共鳴したんだ……
「だから、私と一緒に居る時点で、もうどうしようも無かった……」
そう言って、奴はゆっくりと空を見上げた
「そんな咲子を奪った……」
「奪った? 誰が……?」
ゆっくりと私に視線を戻し彼は言う
「お前の両親さ」
「そんな事をするわけがない!!」
反発したかった
それ以外の思慮で叫んではいない
あの優しい2組の両親がするわけがない、そう思った
「そうだな…… してはいない、殺してはいない…… 直接携わったのは加藤という男だ」
「加藤…… 聞いたことがある…… 確か、胡桃ママが恩人と言っていた……」
「まあ、それも間違いじゃ無い…… 私達の戦争だ…… やり方は卑劣でも、間違いのない方法とも言える…… だが、許すつもりもない」
「でしょうね…… 真実は当事者じゃないと解らない…… 貴方の言っていることを全て鵜呑みにするつもりもない」
「ああ、それで良い」
そう言ってまた、奴は笑った
私は藍に耳打ちした
(藍…… コレ以上は無理…… 危険だから逃げて……)
そこまで言った時に言葉を遮られる
「止めておきたまえ…… 浅田君は君を制御する為に必要なんだ」
この男も心が読めるのか!?
「そのシルバーチョーカーには集音マイクが付いているからね…… 内緒話は筒抜けだよ」
危ない……
心を読めないと解っただけでもホッとした私がいた事に気付く
そしてスティの様に心を読む力は無いという事も立証された
でなければ、こんな機能を付けはし無い
「最低な趣味ね…… 盗聴とか……」
「しようのないことだ…… うまく立ち回るためにはね」
「立ち回る? なるほどね…… 校舎を探し回っていた時にも、ぼやきで私の居場所を掴んで逃げてたわけだ……?」
「まあね…… 何はともあれ、咲子君…… 私の元に来るんだ」
「世界征服しに!? 私がそんなのに手を貸すわけないでしょ!!」
「貸すさ…… 間違いなくね」
「どうしてそんな事がわかるの!!」
奴が私達を交互に見た
その視線は私達の目より、少し下の様に思える
そして指を指した
「そのシルバーチョーカー…… それはね、私の心臓にリンクしていてね…… 私が死ねば周囲の空間を削り取る…… この場合は首を根こそぎな…… だから刃向かえば死ぬぞ……」
「嘘よ!!」
「ならそれでも良い…… ただし先に言っておくが、そのシルバーチョーカーを無理に取ろうとしてもソウなる…… 壊そうとしてもソウなる…… 勿論、外部からの力が働いてもソウなるぞ? それに私とのリンク切れ…… そうだな…… 200メートル以上かな? 離れると、やはりソウなる」
「そんな……」
コレでは本当に奴隷じゃ無いか……
こんな状態では戦えない……
「フフフッ…… 状況が解ってきたようだな」
「ええ…… あんたがどれ程卑劣かって事はね!」
「ちなみに、もう一つ面白い機能がある」
まだ何かあるのか!?
「な、何よ……」
「紅い石が付いているチョーカー…… 咲子君のチョーカーは今伝えた爆発に付随する何かがあると、青い石の付いている浅田君のチョーカーが同時に爆発する」
「あ、あんた…… 何て事を!!」
「外したくなったかい?」
「付けて居たいわけが無いでしょ!!」
「なら方法はある」
そう言ってニヤリと不快な笑みを浮かべた
「それはね、青い石のチョーカー所持者を殺せば良い」
「出来るわけ無いでしょ!!! 私を舐めんな!」
不意に私は藍を見た
ずっと静かにしていた事に違和感を持った
覗き込んだ藍の表情は青ざめている
そしてその眼には生気が感じられなかった
そして呟いていた
「そんな事って…… そんな事って……」
ずっとソレだけを壊れたレコードの様に繰り返していた
解る
自虐しているのだ
コウなってしまった事を悔やんでいる
自分がチョーカーを渡さなければ、と
私は言った
「藍、大丈夫よ♪ 言ったでしょ? 私が助けるって! だから気にしないで頑張ろ♪」
少し瞳に光が戻った藍が涙目で私を見つめる
「咲…… ごめんね…… ごめんね、私……」
「何言ってんのよ! コレが無事に取れたら、またお揃いのチョーカー買おうね♪」
「……うん」
そう言った藍の顔は、悲しみと悔しさは見て取れるものの、生気が感じられた




