84話 ストック
「ミスった!!」
「突然大きな声を出してどうしたの、咲!?」
私は即座に競技場を見渡す
どこだ!?
どこにある!?
差し入れのジュース!!
大木が組まれているキャンプファイヤーのメインタワー
その横にソレが見えた
テーブルの上に乗り、紙コップもドッサリと準備されている
まさか競技場の中央で堂々と配らせて居るとは!
誰でも目につくから、誰にでも配れる
計算ずくか!
「藍! 皆のジュース、飲むの止めさせて!!」
「どうしたの!?」
「敵の攻撃よ!!!」
「ジュースが!? それに敵って!?」
「そうよ!! それに敵の説明は後!! 急いで!! 早く!!!」
「わ、解った!!」
完全なミスだ!
ウサマルの鍵の謎も完璧に解いておくんだった!
それに、危険と解っていても、敵が高田教授だって事を藍には伝えておけばこの事態は避けられた
安易に考えた訳じゃ無い……
友達を……
親友を守りたいという心理につけ込まれた!
それでも、全ての状況に対処出来るように、もっと何か方法があったはずだ!
悔しい……
心が折れそう……
いや、でも諦めない!
もう、諦めることは止めにしたんだ!!
「皆! ジュース飲むの止めて!!!」
私の一歩前に出た藍が叫ぶ
(お!? 浅田じゃん! 今日もカワイイなぁ♪)
(飲むの止めろってよ?)
「止めてってば! 毒入りなのよ!」
(でも、これウマいじゃん……?)
(腹痛くなるわけじゃ無さそーだよな?)
(だよなぁ…… 飲んじまおーゼ♪)
(毒入りなんてそうそう無いって♪)
(だよなぁ♪)
(独り占めかな?)
(浅田が? そりゃ無いだろーけどね♪)
ダメだ!!
この状況は非常にマズい!!
人間は右ならえしたくなる生物なんだ
一人がYesなら、それに続いてしまう傾向がある
被害を食い止めなきゃ……
一歩前に出ている藍から、私は一歩下がる
そして遠くに見えるペットボトルへ指を立てた
真っ直ぐに、ジュースの入ったペットボトルに向けて……
当たってよ……
そう思いを乗せ、撃った
ボパン!!
重い破裂音が鳴る
当たった!!
これで外はもう大丈夫なハズ……
いや、あのジュースに入った物が一部であるなら、まだ解決には至らない
全てを回収するまでは終わらない
「咲!? ペットボトルが破裂した!!」
そう言い、藍が振り向く
「その説明も後! アレは私が破壊した! ソレだけ言っとく!」
「ち、超能力!?」
「みたいな物よ! それより次は校内のジュースを!!」
「そうね!! 了解!!」
大きく一度頷く藍を隣に、私達は昇降口に向け、走った
私達は昇降口に向けて走る
「咲! 敵のこと教えて!」
「そうね、今しか説明が出来無いね…… 敵は……」
そこまで言った時だった
昇降口に人影が見えた
その人影は車椅子に乗っていて、そして、いつものように厚着をしていた
その人物が口を開いて言った
「敵は私だよ」
そう言ったのは高田教授だった
「あまりあのジュースのストックは無いのでね…… 壊されるわけにはいかないな」
ストック……
やはりあるのか……
今は無理だ
聞いても言うはずが無い
壊されたくない、そう意志を表したのだから
「高田教授…… やはり貴方が……」
走るスピードを落とし、テクテクと私達は歩み寄る
歩み寄った先の、その男はニヤニヤと笑っていた
そして言った
「そうだよ、私だ」
「なぜこんな事を……」
「月並みだけどね…… 世界が欲しいのだよ…… 私の統率の及ぶ世界がね」
「そんな物手に入れてどうすると?」
「ふむ、咲子君…… 君は衝動買いした事あるかね?」
何を言ってるんだ?
「まあ、数回は……」
「だろうね…… それに似たような物さ…… 世界が欲しくなったんだよ、衝動的にね」
「それにしてもコレじゃ…… 意志も無くした人体兵器でも造るつもり!?」
え!? と驚いた藍が私達を交互に見た
「人体兵器って何!?」
「もうどうしようも無いわね…… あのジュースに含まれた成分、それを接種すると、否応無く高田教授の奴隷になるのよ」
「ホントなの!? 高田教授!!」
彼は冷静な顔を崩さず、
「そうだよ」
とだけ言った




