78話 イメージ
この声は……
聞き覚えが有る……
あの人だ!
「ジャッジメンター!? 貴方なの!?」
【ん? ああ! 咲子か♪】
その声、脳内に直接響く昨日聞いた声……
アノ世界の番人、ジャッジメンターだった
【なるほど…… 到達したね、ソコに♪】
ソコがドコかはもう解って居る
「そうなるのかな?」
【そうさ…… おめでとう♪】
「ありがとう……」
【ん? 浮かない声だな? どうしたね?】
「あ、うん…… 実はね…… 助けたい生物が居るの」
【ほう? それは、そちらの獣医とやらに頼むべきでは?】
「コノ世界の生き物じゃ無いのよ……」
【ソノ世界のじゃ無い…… ふむ…… 呪の穴かな?】
「そうらしいわ……」
【なるほどな…… で、終焉の扉かい?】
「解らないけど…… そうするしかないって知り合いが……」
【知り合い…… か…… ヤレヤレ…… いいだろう…… そういうことならレクチャーしよう】
「ありがとう! そして、どうすれば……?」
【この扉に…… ああ、穴に見えるかも知れないが、ソコに、分解と構成のイメージを強く持って通せば良い、それだけさ】
「イメージ……」
【そ! イメージが大切だ♪ 道標も何も無い…… だから、咲子のイメージ通りのエスカレーターを創る感じかな? それが整えば、後は『無』と『呪』の穴がそれぞれ必要な物を、必要な分だけ調達してくれるよ♪】
「そんなに簡単なの!?」
【簡単かどうかはイメージ次第さ♪】
「そうね……」
【ただ、ソノ知り合いってのが扉の開け方を教えてくれたんだろう? なら、《出来る》と期待してくれてるんじゃ無いのか?】
「そうね…… やってみる!」
【それでこそ咲子だ! 僕も期待しているよ♪】
「ありがとう、ジャッジメンター♪ 貴方が友達で良かったわ♪」
【友達……?】
「そ! 友達♪ 色々あってね、解ったんだ…… 友達ってね、信頼して、一緒に居られる…… 心を開ける人の事を言うんだなってさ♪」
【そうか…… 嬉しい響きだ…… じゃ友よ、頑張りな♪】
「うん!」
私はマインラットを手にした
イメージ……
この子を助けたい……
だから……
生きて!!
そして、そっと願いを込め、扉に近付ける
大穴からは奇妙な触手の様な物がウネウネと這い出してきた
怖さは無い
コレは味方
それが何となく、認識出来ていた
その後ソレは、マインラットを包み、持ち上げ……
そして、そのまま穴の中に吸い込んだ
しばらくの時間が過ぎた
ただ、何をすれば良いのか考えだけがグルグルと脳裏を巡る
焦っても仕方がない
そんな時だった
ピ……
何かの音が鳴る
いや、これは…… 鳴き声だ
即座に終焉の扉を見た
ソコからまた、先程の触手の様な物がウネウネと這い出して来る
ソコに抱え込まれて居たのは、紛れもなく、マインラットだった
私が触手の下に両手を伸ばすと、ウネウネと動くソレは、私に返しに来たと言っているように、そっと両手にマインラットを預け、そして穴に縮んで行く
よく解らないソレに、私はつい……
「ありがとう!」
そう言ってしまっていた
一瞬止まった触手は、もう一度ゆっくりと伸び出し、私の頭を一度撫でると、穴に戻って行った
意志がある……
いや、意志を持たせたのか?
私が?
これが、ニア・ラピスなのか……?
そもそも、しばらく待ったといっても、一分足らずなのに……
こんなにもスピーディーに再生出来るなんて……
何かが手首の辺りをくすぐる
目を向けると、マインラットが頬ずりしていた
【成功したかな?】
突然、脳裏に響く声
「ジャッジメンター♪ うん! ありがとう♪」
【良かったね♪】
「貴方のお陰よ♪」
【僕は何もしてないよ?】
「レクチャーしてくれたよ!」
【レクチャーだけさ】
「それが助かったのよ♪」
【場もあったからね♪】
「場?」
【そ!】
「ソレは何?」
【あまり教えすぎると、自分本来の感覚の捉え方、慣れ方に支障が出るから言えないなぁ】
「なるほど…… 自分で考えろって事ね♪」
【平たく言えば、そーゆー事♪】
「解ったわ! ホントありがとう♪」
【いえいえ♪ じゃ、用事が済んだら扉を閉じてくれないか?】
「あ! 了解、忙しい所ゴメンね!」
【少し忙しくなるのは約8時間後だよ♪ まだ時間はある、問題ないさ】
「今は10時回ったとこだから、夕方6時位?」
【そうなるね】
「そっか…… それまでどーするの?」
【いつも通りさ】
「いつも通り?」
【待つだけ】
「暇じゃないの?」
【慣れたよ…… ズッとこうしてるって言ったろ?】
「そっか……」
その時だ
ふと、衣服のポケットに個体の感触を捉える
「あ、ねぇ、暇潰しって訳じゃ無いけど、お礼にコレをあげるよ♪」
そう言い、私はポケットの個体をジャッジメンターに渡す気持ちを込め、扉に放り込んだ
【ん? コレはなんだい?】
「ガムっていってね、噛むと味の広がるお菓子よ♪」
【ほう…… 奇妙な物だな? 僕は食べなくても生きて居られるから初めてだ……】
「美味しいよ♪」
【ふむ…… どれ……】
しばしの間が空いた時だった
【ゲホッ!! カッッラ!! 凄く辛いぞコレ!!!】
「あははははは♪」
【騙したな!? 咲子、テメェ!!】
「騙してない、騙してない! 慣れると美味しく感じるようになるよ♪」
【ったく…… 慣れるまで何年必要なんだよ……】
「すぐ慣れるよ♪ あ! ゴメンね! また、話し込んじゃった…… じゃ、閉じるね、またね!」
【ああ、なんだかよく解らないコノ食べ物もありがとな♪】
私は両手を合わせる
それと呼応するように、紫色の大穴が縮み、そして消えた




