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ルビーアイ・カタストロフィ  作者: アゲハ
4章 求める強さの先に……
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72話 リベンジャー

「予想以上に巧く斫(はつ)ったわ……」



私はニコリとライに笑い掛けて、そう言った



【はつる……?】


「削(けず)るって事よ♪」









空を一閃した蒼剣








その剣に異(・)常(・)が(・)起(・)き(・)て(・)い(・)た(・)








私が起こした異常








その剣は、もはやその形を映してはいなかった








太い剣体には大小様々な穴が無数に空いていた








穴空きチーズの様にボコボコと穴が穿(うが)たれ、その峰と刃は、皮一枚繋がっている箇所が幾つも有る



【コレは…… 咲子…… キミが言っていた最(・)初(・)の(・)力(・)の(・)イ(・)メ(・)ー(・)ジ(・)の……】


「そう…… 成功よ♪」


【なんとも…… それに、いつの間に……】



美しい顔立ちの彼には、とても似合わない苦笑いが見える



「でね、2つ目の頼みなんだけどさ……」


【あ、ああ……】


「先日のポリバケツを出して欲しいの」


【ん? ああ、容易(たやす)い事だ】



そう言った彼の前に、ザシュ……ザシュ……と地面に刺さる音が2つ鳴り、案山子(かかし)が姿を現す



「あれ? ポリバケツ頼んだんだけど……案山子?」


【ん? 対人の練習なんだろう? 雰囲気出そうと思ってね?】



さすがは信頼するパートナー


何がしたいのかは、既に承知している



「さすがよ、ライ! ステキな仕事だわ♪」


【まぁね♪ そして……】



そこまでで一度ま(・)ば(・)た(・)き(・)を止め、彼は目を閉じる


地面に突き刺さった2体の案山子が蒼く揺れた



【3つ目はコレにサファイアを掛けろって事だろう?】


「さすがね♪」



そう口にしてライにウィンクを投げ掛ける私は、ついでにもう一つ頼み事をする



「ライ…… 離れててね…… どこまで力が及ぶか、まだ検討つかないの」



そう言い、彼が案山子から離れた所を見送ると私は目を閉じた









今まで見た経験








今までした経験








今イメージしている構想







それらを基に両手を天高く掲げる








私なら








今の私なら








ヤレルはず








自分なりの強い意志








そして、想い……








案山子に向け








その両手を








地面にまで弧を描き








一気に、振り切った








スッ……








閑かな音が耳に届く








音のした先は、勿論、案山子








ゆっくりと斜め横にスライドし、そして…… ドスッという音と共に地面に落ちた








【まさか…… そんな事が……】








ライがま(・)ば(・)た(・)き(・)で呟く


彼の眼を見て私は言った



「コレも成功ね…… そして……」



私は落ちた上半分の案山子に右(・)手(・)の(・)人(・)差(・)し(・)指(・)を向け、右手首に左手を添えた



そして、親指はピンと空を指差し、ピ(・)ス(・)ト(・)ル(・)のポーズを取る








さぁ……








行くわよ……








私は心の中でトリガーを引く






ヒュン……


ザッッッシュュュ…………








そんな軽い飛翔音と直後重い掘削音を立て、落ちた上半分の案山子が…… 



跡形も無く消し飛んだ








私自身が驚いたのはそ(・)れ(・)だ(・)け(・)で(・)は(・)無(・)い(・)








落ちた案山子の隣に残り、地面に突き刺さっていた下(・)半(・)分(・)もまた、ほとんど原型を留めて居なかった







「強さは解ったけど、もう少しコントロールが必要ね…… 危うく建物まで壊しそうな程、飛ばしちゃった……」








ライは、初めて唖然とした表情を私に見せる


もう十分だ


力のイメージの全てを完全に形作った



「さて、ライ! 帰ろう♪」


【え?】



驚きの表情と共に私を見詰めている彼



【でも、咲子? もう一体の案山子は? 何かしたかったんだろう?】



私は眼を細め、笑顔で答えた



「もう十分よ♪」



そう言い、2体目の案山子を指差す


ライがその指差す先の案山子に目を向けた








そこには杭が一本刺さっていた








本体は無く、足元の杭、一本だけが地面に垂直に立っていた








自然に








さも、最初からソレだけが有ったように……








ただ、そこに存在した








【何を…… したんだ……?】


彼は目で問い掛ける



「アンテナよ♪」


【アンテナ……?】


「そう♪ 更にね、イメージが湧いたの! 予定通りだよ!」


【何だか解らないけど…… でも少しショックだ】


「何故?」


【結構、強めにサファイアを掛けたハズなんだけどね…… いとも簡単に僕の盾を突破されると…… ヘコむよね……】


「ごめんね…… でも多分、私のこのイメージは…… この世の全ての物を破壊するわ……」


【だろうね…… イメージを聞いた時に、そう思ったよ】


「あ! てか、もう6時半過ぎよ? 帰ろう♪」



そう言い、空き地を立ち去る


いや、立ち去るハズだった


目の前には、1人の男が私達を睨み、立って居た








見覚えの有る男








絆創膏(ばんそうこう)を幾つも貼り付けては居るものの……








腕や、顔や、首元、胸元に至るまで赤黒い傷が幾つも見える









「テメェ…… 居やがったな…… ぶっ殺してやる……」








そう口にした男は、昨日のチームのリーダーだった








ライが私を腕で静止させ、そして前に出る


私はその腕に手を添えた


そんな私を見たライが、目を丸くして振り向いた



【大丈夫よ…… 加減を試したいし♪】




私は男に解らぬよう、ま(・)ば(・)た(・)き(・)でライに伝える






その意志を尊重してくれたのだろうか


溜息をつき、ライは私の後ろに下がってくれた



「はぁ? 女が俺とやろーってのかよ?」



リーダーだった男が怪訝そうな面持ちで問い掛ける


どんな戦略を持ってココに現れたのかは知らない


ただ、昨日の私とは違う


藍も居ない


そして、私にはアレがある



「言っとくケド、私…… 強いよ?」


「あっそ! でも女程度にゃ負けねーヨ? 手加減もしねぇ…… コケにされたままじゃ収まらねぇ…… 俺ゃ、その外人にリベしたいだけなんだわ…… 後で可愛がってやるから、どいてろや!」



私は解りやすく首を横に振った


そして言った



「この人はね、私の大切な人なの…… アンタには勝てない…… 私にもネ♪」



有り有りと見える激怒の表情


すぐに顔に出す様が三流だ


私は更に言った



「ねぇ、リーダーさん…… 貴方、ダンス好き?」



怪訝な表情に変えるリーダーが私を見ている



「…… 知らねぇな…… 興味も無ぇよ」


「そ? じゃ、教えてあげるね♪」



私はゆっくりとリーダーに掌を向け……








その手の中指と親指を触れ……








パチンと鳴らした








疑問の表情を崩さない男








その表情が直後、変わった








左足が、本来の間(・)接(・)可(・)動(・)範(・)囲(・)のまま、後(・)ろ(・)に(・)飛(・)ん(・)だ(・)








奇妙なステップの様に……








何が起きたのかも解らないまま、その体が重心の分けていた左にゆっくりと傾く








キレイな45度に傾いた時に、何かがまた弾けたように、その姿のまま反対側に吹き飛んだ









左足、左脇腹の衣服が裂けて見える箇所から鮮血を吹き出し、右に吹き飛ぶ








壁にぶつかった訳では無く、何かに弾かれ今度は右腕の鮮血を噴霧させて、逆に飛んだ








また左に








また右に








段々、左右、斜め上に吹き飛び








体を揺らしているのか、痙攣(けいれん)させているのか……








ブルブルと体を宙で揺らして、体内の血を撒き散らす








そして、ズダァァン………… 








重い音を鳴らし、地上に堕ちた








ピクリとも動かない


でも、かろうじて鼓動のする男を足下に見ながら私はライの手を引き、路地に入る









ライが私を見て眼で言った








【咲子…… 訂正するよ……】


「ん?」


【僕は、泉を天才だと言った】


「うん」


【僕が間違っていた…… 天才なのは君だ、咲子……】


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