70話 紫の眼
神様には逆らえないよね……
そんな事を私は思う
そして、その神様とやらは自由奔放のようだ
ジャッジメンターの気苦労を分かる気がする
「そっか…… 大変ね」
【まぁ、でも、ココは僕じゃ無きゃ抑えられないからね】
「そうね…… ポンポン生き返られたら困るものね」
【全くだ……】
フフフッと、そんなつもりは無く、私の口から笑い声が漏れた
「貴方も面白い人ね……♪ そういえば神様に言伝って言われても、アメリカは遠いし……」
そう言った私にジャッジメンターは首を傾げる
【あれ? キミからは残り香がするんだけどなぁ?】
「残り香?」
聞き返した質問には首を振った
【まぁいいや…… さてと、キミはルビーだな】
その人型の闇の頭部にあたる位置に、ギョロリと紅い眼が生まれた
【そして、片翼はサファイア】
またその頭部に、今度は蒼い眼が私を見据える
だが直後、その眼を細めた
その確かに見えた表情では無いが、それは笑って…… 微笑んで居るようにも見える
そして彼が言った
【もう、解っているんだろう? ココが、ドコか……】
私は頷く
そして、答えた
「死後の世界…… 黄泉…… ね?」
【正解♪ そしてキミは条件を果たした】
「条件?」
【解っていたんだろう?】
「ああ、そういう事ね…… 解らなかったわ…… ただ……」
【ふむ、ただ?】
「この世界を見たかった、ライと同じ世界を見たかった、ソレだけ」
【そっか! 片翼の伴侶には十分な素質だね♪】
「伴侶とか、まだ早いし……」
【いや、なるよ…… 僕なら解るからね】
「そっか…… じゃ、そういう事にしておくわ……」
【キミも本当に面白い子だ…… そして喜びをストレートに出す事が出来ない、不器用な子だな】
「大きなお世話よ……」
【まあ、いいさ】
その闇人の頭部には、右眼に蒼眼、左眼に紅眼があった
その中心より少し上
眉間か額か……
そう思われる位置にニュルリともう一つ瞼が生まれたのを見た
【この扉を壊す勢いで外から叩かれてる…… 大した片翼だよ…… 愛されてるねぇ】
「貴方にも良い人が出来ると思うわ…… 優しさを感じるもの」
【……フフ…… キミに会えてよかったよ、咲子…… 数分だが、何百億年とココに居る僕にとってコレほど楽しい時間は今まで無かったよ……】
「私もよ…… ジャッジメンター……」
【ありがとう】
「こちらこそだよ」
【最後にルビーを持ちながら、この扉から現世に戻るキミに施そう…… だが申し訳ない…… キミはまだ真の覚醒者では無い…… 手前までしか開けられない…… 全てを開けるのはリスクだ…… キミが崩壊する…… だからニアだ…… ニア・ラピス】
「施す? 開ける? リスク? ニア? 何を言っているのか解らないよ……」
【解らなくても良い…… 今はまだ、その必要が無いから解らないだけだよ…… それに今現在、真の覚醒者は3人しか居ない】
「3人?」
【そう、1人目は神、もう1人は胡桃という女性だ】
「胡桃ママは、私のもう1人の母親よ♪」
【なるほど、どおりで…… まぁ、帰ったら親とも片翼とも仲良くしてあげてくれ♪ 今でもまだ片翼が神ならどれほど幸せで、僕も楽が出来るかと思うよ……】
「アハハ♪」
明らかに本心で言っているであろう言葉に笑ってしまった
本当に苦労している事がまざまざと解る
だが彼の言葉に、ふと質問したい事があった
「あ、ちなみに3人目は?」
【色々な名前を名乗っているからね…… いちいち変わって覚えるのが面倒だ】
「そっか…… 大変ね……」
【君の今後ほどでは無いさ…… 近々運命を変える時が来る…… 変えるのは君だ…… そして君にしか変えられない…… ニアである君にしかね…… 君の選ぶ未来によっては…… 明日、この扉を1000人程度は通るだろう】
「重役だなぁ……」
【フフッ……】
そう笑った闇人は、閉じていた額の瞼を開ける
そこには『紫の眼』が私を優しく見ていた
【さあ、帰るんだ…… 67年と138日4時間13分丁度にまた会おう♪ 今度はこの扉から現れるキミとね】
優しく私に告げる彼
その言葉に私も何故か、温かみを感じる
「その時はもう少し、ゆっくりと話しようね♪」
【楽しみにしてるよ】
そう言った所で、何か気付いた様に彼は話し出した
【ああ、思い出したよ……】
「ん?」
【3人目…… 真の覚醒者の今の名さ】
「へぇ! 何て名前?」
【高田って男だよ】
頭が真っ白になる
ただ、その感覚のまま……
目の前の【扉】が静かに開くのを見た
それだけが妙に……
でも鮮明に……
視界を埋めた




