69話 審判者
不意に立ち上がった影の様な……
ヒトの様な者が腕と思われるモノを上げ、私を指差した
そして頭の中に直接響く音……
いや、これは…… 声?
【キミが喚ばれし者かい?】
そう影人は言った
「喚ばれし者?」
【あれ? 違ったかい?】
「よく解らなくて…… ごめんなさい……」
訳が解らない言葉を口にされ、私は素直に頭を下げた
【あれれ? 随分と腰の低い媒体だね……】
「媒体……?」
【まぁ、でも、いいや】
「どういう事?」
【その質問もいいや…… キミには抵抗力が働いてる】
「ねぇ、どういう事? ごめんなさい…… 何が何だか解らなくて……」
影の様に全身が黒い
表情も見えない
そんな彼…… だろうか?
背後にある天まで突き刺すかのように聳え立つ扉へ、クイッと親指らしきモノを向けた
【だから、この扉の外から君を引き戻そうと創造の力が働いているんだよ】
「創造の力……?」
【そう、創造の力】
「それは、何?」
私は首を傾げる
彼は静かに私へ告げた
【世界を形作る力…… サファイア・アイ】
サファイア・アイ!?
外から……
外から私を呼んでいた声!
ライだ……
ライしかいない!
私がココに居る事を識っているのは!
「ライ…… ライ……! ライ!! 貴方なの!?」
扉へと叫ぶ私に、影人は頭部を少し傾けた
【なるほど、神の生み出した片翼か…… 友達かい?】
「いえ、多分、私はもう気付いて居る」
【ナニをだい?】
「彼は私の信頼する…… 好きな人よ……」
【ほう…… そうか…… 恋人かい?】
「そうなれば良いと…… 思ってるわ」
私は素直に答えた
こんな場所で隠していてもしょうが無い
私はライが好き……
そんな気持ちに呼応するかのように影人が口を開く
【片翼は君を愛してるようだよ】
「え?」
【でなければ、コレ程この扉のノックが強いわけは無いからね】
「そうなのね…… ライ…… 逢いたいよ……」
【逢いたいかい?】
「うん」
【君が逢いたいと願うなら、逢わせてあげても良い】
「貴方は…… 誰?」
【ジャッジメンター】
「ジャッジメンター…… 審判者……?」
【そう】
「神様なの?」
【違うよ…… 門番さ】
「地獄の門番なら、三つ首狼のケルベロスってのが普通だと思っていたわ……」
【神話と僕を一緒にするなよ…… 面白い子だなぁ♪】
「フフフッ……」
私達は笑った
足元には砂漠
空には雲1つ無い晴天
そんな場所で自然に笑いが溢れた
唐突に話し掛けて来たのは影人、ジャッジメンターだ
【キミは感謝するべきだね】
「何に? ライに?」
【片翼にもそうだが、もっと感謝するべき人が居ないかい?】
「うん、勿論よ…… パパとママね」
【当たりだ…… そして聡明な子だ…… 即座に解るとは、愛されてるね♪】
「ありがとう♪」
【キチンと逆向きに辿り着いたのは君が3人目だ】
「1人目は?」
【モリサダという男だよ】
「日本人?」
【さてね…… 生まれた経緯に興味は無いから】
「そっか…… その人はどこに?」
【地球の…… アメリカという国だったかな?】
「ライ…… 片翼…… そっか…… その人が神様ね?」
未だに表情はうかがえないが、一瞬止まった姿を見る限りでは驚いているようだ
【ほう…… 大した勘の良さだね♪】
コクリと頷く私
「親から受け継いだ物だからね♪」
【ふむ、良い子だ…… もし彼に会えたら言伝を頼むよ】
「なんて?」
【少し魔獄領域が騒がしい、ちゃんと処理しろ、ってね】
「自由奔放な神様なのね……」
【そうなんだよ…… ちゃんとして欲しいものだ…… ま、ベースは人間だから、簡単に行き来が出来ないのは承知しているが、僕はココを離れられないからね】
「なるほどね♪ あ、辿り着いた2人目は?」
【ラインフェルト】
「ラインフェルトさん?」
【何を言っているんだ? 片翼の名前じゃ無いか】
「え? あ!! そっか、ライってしか呼んでないから解らなかったよ……」
【やれやれ…… まぁいいさ】
「あれ? そういえば、アーサーって人は来なかった?」
【ん? ああ、アノ子供か…… 来たよ…… でも意識を無くしていた…… ラインフェルトにおぶさって来たよ】
「そっか…… 確か4,5歳の頃って言ってたもんなぁ……」
【そんな年頃だったな…… ま、どちらにせよ少し反則だったのでね…… ラインフェルトにだけディープをくれてやった】
「反則? ディープ?」
【ああ…… 彼らには神の道標が有った…… だから辿り着けた…… でも、まぁ神のやる事だ…… 僕が何か言うつもりも無い…… だが……】
「だが?」
【真のサファイア…… ディープ・サファイアをくれてやるには意識が無いとどうしようも無いからね…… それに残念なのは、彼は一般人だって事だな】
「残念? なんで?」
【神になるには一度死を選び、世界と一つにならねばならない…… 彼は確かに死んで、そして戻った…… だが、神の才能は無かった】
「神の才能? ライすら持てない程の物なの?」
意外だ
戦闘において、私がライに勝てるとは思えない
そんなライですら才能無しなんて……
じゃあ何が才能として必要なのだろう?
その答えはすぐに教えられた
【ルビーアイ所持者さ】
「ルビーアイが無きゃダメって事?」
【そう…… でもルビーはそれだけで才能なんだよ】
「ふーーん…… でもルビーは呪の穴を通ると手に入るハズじゃ無いの?」
【よく知ってるな♪ 当たりだ! でも、外れだ…… そんなに簡単じゃ無い…… 才能と、体力と、精神力と、何にも負けない意志…… 何て言うか…… いわゆる、それに特化した天才が成れるんだよ♪ 実際失敗例もあるしな】
「失敗例?」
【いや、何でも無いよ】
そう言って彼は口をつぐむ
言いたくないのか、言う必要が無いのか……
それでも彼の意志を尊重すれば、私は聞く事を諦めた
「そうなんだ…… 貴方は色々識ってるのね…… ジャッジメンター…… 貴方は相当強いんじゃない……?」
【まぁね…… 2番目に、ね】
「1番は?」
彼は言った
静かに一言
【神】
と……




