62話 識る事
あの日の私は何をしていた?
思い起こす
あの日はブラ騒動の真っ最中だった
何故あの時、私はゲシュに触れられ無かった?
私が持っていて、藍は持っていないモノ
まさか、ルビーアイ……?
いや、そうだとすれば合点が行く
あの日の私はルビーアイを使っていなかった
今はルビーの残り香に酔った自分自身を整えるために発動した
だから触れたと言うの!?
私はスティを見た
「コノ子ハ元ハ私ノ飼イ猫デネ…… Mr.高田二預ケテ居タンダ…… 私ガ生ミ出シタ猫ナンダヨ」
え?
私と藍は固まった
クローンだとでも言うのか?
何の為に?
私はそう思いスティと視線を交わす
「咲子、ソレハ追々教エルヨ」
私は視線をゲシュに戻し、考えた
でも、生物を生み出す何て事が?
そしてまたスティを見る
「ん?」と不思議な表情を彼は浮かべた
「いえ、なんでも……」
そう口にして、ゲシュをまた見つめ、撫でた
解ってしまったのだ
色々と、だ
思ってしまったのだ
色々と、だ
今、勝てる算段が付いてしまった
万が一、高田教授にスティが肩入れしても、勝てる
彼の心を読む能力には死角がある事に私は気付いた
そして、そうで無くても、ある意味危険な人物だと知ってしまった
彼の能力の死角
ソレは、目を見なければ、視線を交わさなければ心は読めない可能性だ
多分、間違い無い
そして最悪の結果は……
あの日のゲシュは、理科室を出た後に……
車椅子の高田教授の膝の上に乗った
ほぼ間違いなく、ルビーを使える者だからこそ、触れられる
ソレは、高田教授が100%ルビーアイ所持者という証
そして、今、目を合わさず隣に居るスティもまた、ブルーのサングラスの奥にある瞳はルビーアイをいつでも光らせられる事の出来る者だ……
そして、コレが最悪
ルビーアイを発動していないのに、紅く無いのに……
ゲシュを触れる事が出来るレベルのルビーアイ所持者という事になる
私と違い、黒眼のまま力が外に溢れている高田教授
そしてプロフェッサー・スティなのだ
目を見るときには無心にならなければ……
知られれば噛みつかれる恐れが、ハッキリと解った
私は識ってしまったのだから……
「さて、大体まわったかな? 少し遅くなったけど、ご飯食べよ♪」
私の提案に、ふくれっ面だった藍も表情を戻し、笑顔で頷いた
「ゲシュもおいで♪ キャットフードは無いけど、弁当分けてあげるから」
私の言葉に機嫌を更に良くしたゲシュが足元を体毛で撫で回す
くすぐったさもあり、幽霊猫なのに食事が取れるのかとも疑問を持ったが、彼は私達について来た
そして私達は2階連絡通路に戻った
食事を済ませるとプロフェッサー・スティは、thanksと案内の礼を口にして去って行った
藍と2人きりになり、ようやく落ち着いた私が居る
「この後、どーする?」
藍が私に問い掛けて来る
「うーーーーん…… 午後は必修科目は無いから、チョイやりたい事あるんだよねー」
「やりたい事?」
藍は首を傾げて質問を重ねた
「そ! チョイね!」
今は午後2時を少し回ったところだ
まだまだ時間はある
今の内に手に入れなければならない
「そっか! なら私も必修科目無いし、帰ろっかな!」
「え? いいの?」
「うん、私、どうしても読みたい本をまだ途中にしてたからさ!」
「そっか、じゃ、帰ろう♪」
大学生活が、気分で授業を受けたり受けなかったりとこんなにラフで良いのかと思いもしたが、私も了承した
私の用事は授業よりも大切な事だ
私は色々と識ってしまった
整理が必要だ
そして、その整理は私の糧となる
どうしても、今、この色々な感情と共に……
試しておきたかった
もう、イメージは出来上がっている
後はそれを、出来るという意志で使いこなすだけ
そう、イメージだ
私の
私なりの
私だけの、強さの為に……




