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ルビーアイ・カタストロフィ  作者: アゲハ
4章 求める強さの先に……
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61話 精度

私は真っ直ぐ前を見ながら少し考え事をして歩いていた



スティに追求しても答えないだろう



だが、いくら彼が私の2両親を知って居たとしても、Noではなく、【泉に聞いた】……



それだけの回答で私を納得させられたのでは無いだろうか?



いや、こんな疑問を持とうがスティには筒抜けだ



無駄な質問は敵に回すだけだ



避けよう



そう思い、愚問だったと苦笑いを浮かべながらスティを見る



視線を合わせたスティは、「ん?」と疑問の顔を見せた



私は、「いえ、何でも……」



そう言い、視線を正面に戻し案内を続けた










階段を3階まで登りきった東棟の手前には理科室がある



「ここが理科室です」



そう藍が説明して、彼を促す


何故か躊躇(ちゅうちょ)とも取れる、一瞬伸ばした手を1度止め、そして再度、理科室の扉に手を掛けた



ガラガラガラガラ……



音を立てて2枚の戸が重なる



「理科室、カ……」



彼は呟く



「どうしたんです?」



私の疑問に、部屋を覗きながら彼は答えた



「イヤ、何デモ無イヨ…… タダ……」



藍は首を傾げ、



「ただ?」



そう聞く



「ウン、イヤ、懐カシイ気分二ナッテネ……」



と彼は答えた



「懐かしい? この大学に来た事があるんです?」



そう聞き返した藍に、彼は1度言葉を選んだ様な間が空いた



そして言葉を(つづ)



「来タ事ハ無イヨ…… 何ト言ウカ…… マア、ソンナ気分二()ッタダケサ…… 昔カラ研究ズクメダッタカラカナ? ハハハ……」



「そうなんですね…… 研究って大変なんですね…… 咲もそうだけど、結果が出ないとイライラしちゃって……」



「コラ! 藍! 余計なことは言わない! もう!!」



そう3人で笑い合い、理科室を出た



理科室を出たところで以前感じた、ルビーの残り香が漂う



数日前のあの日のように、例の爆発事故の記憶が過ぎる









ただ、あの日と違うのは……









少し嘔吐感を感じている事だ









なんだか気持ちが悪い










体が重くなったというよりは、足が地に着かない浮遊したような軽さ



それにより変に酔っているような、車酔いにも似た感覚に襲われる








こんな所で吐くわけにはいかない








私は胸に手を置いた








瞬間で良い








軽く感覚を麻痺させる程度のルビーを掛けるつもりだった








気軽に使わないと決めていても、コレばかりは使わずに居られない








解っている








コレは、この嘔吐感は、ルビーの残り香による、記憶の混乱が招いた物だろう








そのまま何も無いココで、いきなり一般人の様に嘔吐すれば2人から無駄に心配される








何の前触れも無く吐けば当たり前だ








それを避けるために、軽く自分自身にルビーを放つ予定だった








でも、恐怖による躊躇(ためら)いがあった








ブラ騒動の際に自分自身へ掛けた肉体強化








軽症とはいえ、私は私自身の限界値を解っていないせいで、足を痛めた








それを今の体調(コンディション)で実行する事に恐怖があった








気持ち悪さは、胸の辺りだ








心臓を止めはしないか、傷付けないか、それが頭を過ぎる








あ……








ダメだ








吐く








ヤバイ








私は胸に向かって力を放った





自分自身に放った力から、結論、私が傷付けられる事は無かった








むしろ完璧なまでに寸分違わぬ力を施した








痛みは無い








力を上手く使いこなせた?









上手く、使いこなせてる?








いや、違う……








自分自身の精度が上がったのでは無い








この場の力なのか……








何かが()()()()()()()()()()








そう感じた








キャーーーーーーーー!!!!!



突如、私は悲鳴を上げて飛び退く



足元に何かが触れた事に驚き、鼓動が早鐘(はやがね)を打つ



元居た所を見ると、そこにはゲシュペンスト



高田教授の飼い猫のゲシュが居た



ニャー、と幽霊猫とは思えない、猫らしい声をあげる



そして私はゲシュに近寄った



「いきなり何よ!? もう! 驚かせないでよー……」



そう言い、腰を下ろして私はゲシュの頭を撫でる



ゲシュは優しそうな顔を見せ、その後、気持ち良さそうに目を閉じていた



背中に藍が声を掛けてくる



「咲ばっかズルイ!! 私なんか()()()()()()のに!!」








頭が真っ白になる








何故(なぜ)








何故、私は








ゲシュを撫でられたのだ……?








今正(いままさ)に、何故……








あの日、理科室で触ろうとした時には、私の手は空を切った








私の手はゲシュを通り抜けた








何故今は触れてる!?








「ねぇ! 咲! 触るコツ教えてよ!!!」



そう背中に藍が怒鳴り掛ける



コツって言われたって……



そう思った時に、スティが語り掛けてきた



「コノ子ハ人ヲ選ブンダヨ♪ 好キ嫌イジャ無クテネ…… 【コツ】ハ無イヨ…… ツマリ、触レル人ハ触レルノサ♪」



そう言い、スティもまたゲシュを撫でた



藍はふくれっ面で何度も撫でようと試みる



だがその手は、やはりあの日の私の様にゲシュの体を通り抜ける








何故、私は触れる?







何故、スティは触れる?







そして何故、藍は触れない?







私達と藍との差は何なの……?

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