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ルビーアイ・カタストロフィ  作者: アゲハ
4章 求める強さの先に……
59/157

58話 キャスト

そろそろ良い時間だ


私と藍は登校する為に家を出た


全くの横一列よりも、私は少し後ろを歩く


()()()()()()はもう御免だ


私だけなら即座に事を済ませられる


そう、視界に藍を置いてさえ居れば(あと)は背後に集中するだけで済む



()()()()()があったのだ



杞憂で済んで良かったと本当に思う








私達は何事も無く大学の校門をくぐった


内履きに履き替え、教室に向かう



「ねぇ咲、また昼はいつものトコよね?」


「うん、そのつもり♪」


「りょ♪ また後で♪」


「うんうん、また後で♪」



今日の1限は、藍とは別々の受講科目だった為、それぞれの方向へと向かった






私は授業のある西棟に向かう


ある程度()を進め、振り向くと藍の姿が視界から消える


私は生物学研究室に小走りした


私の1限の授業は生物学研究室に関係は無い


まだ時間は有る


生物学研究室で()()()()()()があったのだ


今は高田教授に会いたくは無いが、それでも行かなければならない








足を止めた私が見上げた先にあるのは、生物学研究室と書かれたプレート



軽く深呼吸をする



ココに入るのに、これほど緊張したことは無い


いや、1年前、ココに初めて入った時と高田教授のクールさに、毛嫌いされているのかと思っていた時位は緊張したかも知れない


だが、今は全く別の感情で緊張している事を…… 私自身が知っていた






【奴】が居ませんように……






その思いで、戸に手を掛ける






ガラガラガラガラ……






残念だが、その祈りは届かなかった






開けたすぐソコに、奴が居た






だが、私が持っていたであろう緊張とは別の緊張が走る








誰だ……?








見知らぬ男性がソコに居たのだ



年の頃は、高田教授に近い位だろうか




体系はふくよか、口の周りにたわわに生やした白髭、頭髪も白髪、顔には青いレンズのサングラス…… そして上品さを醸し出すのは、その白い上下スーツと白いフェルト帽だった



一見、ケンタッキーの入り口にでも居そうな姿



動いているから、人形では無い



それにその体系や顔の雰囲気からは、白い服装で無ければ映画監督にでも居そうな人だった



何はともあれ、アメリカ人なのはすぐ解る



この見知らぬ男性…… というより、老人と高田教授は話していた







私に目を向ける高田教授



「ああ、咲子君か…… そうだ、紹介しよう」



そう言い青いサングラス以外がオール・ホワイトの男性に(てのひら)を向ける



「こちらはハーパード大学のスティープン教授だ」






名前まで映画監督っぽい






という野暮な語り掛けはしないでおく






「初めまして、プロフェッサー・スティープン」



会釈する私を見るや否や彼は、私に握手を求めて来た



「No! No! スティ、デO.K. youガ咲子? トテモ優秀ナ生徒ダトMr.高田カラ聞イテルヨ!」



優秀?



お世辞でしょ?



都合良く、良い振りしているだけでしょ?



まぁ、こんな事を言ってもどうしようも無い



「ありがとうございます、プロフェッサー・スティ」



「イヤイヤ、本当ノ事サ! オ世辞デハ無イヨ!」








今…… 何と言った?








()()()()()()()、そう言ったのか!?








私は口に出していないはず……








表情にでも出ていたのだろうか








私は自分でも解る強張った表情を戻し、冷静さを何とか取り戻そうと試みる



だが自然と固い表情になってしまう事もまた感じて居た



それはしようのない事だ



敵が居て、その友達も居る



プロフェッサー・スティが()()()()()()()()()()()()()のだ




「咲子君、そういえば何故君はココに? 間もなく授業だろう?」



教授の問い掛けに何と答えるのがベストだろうか



そんな考えを巡らせる



奴はまだ私が敵に回った事を勘づいていないはず……



考えた末、ストレートに聞く事にした



無駄に()()()()()言葉に詰まるのは、こちらの心意を探られる



それはリスクだ



「例のマインラットがドコまで研究進んだのかなって思いまして……」



奴は表情を消し、いつものクールさがうかがえる



「アレは出張中だよ」



「出張中…… ですか?」



なるほど



面白い答えだ



この疑問に対しての表情の変化といい、アノ生物には何かがあるのは解る



曖昧な言葉を選んだというとは、優位はこちらに有る



「出張って、どちらに?」



「…… うむ、明日には戻ると思うが、とある研究所で調べたいと連絡があってね……」



「未確認生物ですよ? 信用できる施設なんですか?」



「信用は出来るさ」



「相当の大きい施設じゃないと、ココより良い研究なんて出来そうに無いと思いますが……」



「まぁ、そうなる」



「なんていう施設なんです?」



「……随分と聞きたがるな? どうしたね?」






くっ……



ここまでか……



これ以上は探られたくないという()()()()()()を出されては、この先はもう聞けないだろう……






言葉を…… 言葉を選ばねば……






「いえ、数日でも研究しましたからね…… 愛着…… て言うのも何ですが、そんな感じですかね…… 他で粗雑に扱われたくないっていうか……」



「ふむ、なるほどね…… まあ、問題は無いよ…… キチンとした所さ…… まあ明日には戻ると思うから、会ってあげれば良い」



「わかりました……」



キチンとした施設なんて保証は無い



どこかに隠している、という線もある



それこそ()()()に、であってもだ



いや、奥の無菌室に入室していない状況の私からすれば、本当は居るかも知れない事だって捨てきれない








だが、奴は2度言った








明日には戻ると








連呼するのであれば、確かに明日には戻るのだろう








明日には会えるのだろう、アノ生物に……








アレの謎を解くのは明日になりそうだ








私は踵を返し、生物学研究室から出ようとする



その背中に高田教授は声を掛けた



「咲子君…… 後で時間作れるかね? プロフェッサー・スティの大学案内を頼みたいんだが?」



「あ、はい、昼食時間とかなら大丈夫です」



振り返る私は、そう頷いた



「そうか、助かるよ」



「No、No、No! 大丈夫ヨ! 急イデ無イカラ! モウ少シノ間ハ滞在出来ルシ♪」



そう言う彼は大きな手振りのリアクションで拒否する



「そう言うなよ、スティ…… (みの)りある滞在にしたいだろう?」



「ムゥ…… マァ、ネ」



「なら決まりだな…… 咲子君、頼むよ」



「了解です」



「あ、そうそう、咲子君」



今度こそ部屋を出ようとした時に、また声を掛けるのは高田教授だ






次は…… なんだ……






優位と思われていた感覚が鈍る






これでは蛇に睨まれたカエルだ






冷静に






冷静になれ、私……






「はい? なんでしょうか?」






「さっきから表情が固いね? どうしたんだい?」








マズイ








面倒な事になる








何と言えばいい!?








その一瞬、グルグルと考えを張り巡らす








何がベストの答えだ!?








この状況を打破出来るのは何だ!?








そうだ!








家族ならどうする!?








パパなら、何の事?、と()()()()()……


ダメだ、ミスキャストだ


リスクが高い


ママだ!


勘の良いママなら……


状況に合わせられるママなら何と言う!?




そう、状況だ




即座に状況を理解しろ、私……




逃げ文句ではダメだ




リスク無く、納得させる明確な理由が必要だ






あった、()()()()



聞かれた私の一瞬が導いた答えはコレだ!








「いえ、何というか…… あまり外人さんをこんな小さな町で見掛けないから緊張してしまって…… それに英語なんてHello位しか解らないのに案内とか…… 大丈夫なんでしょうか…… 私で……」




不安なら明確な材料になるハズだ




「そうか…… まあ慣れるよ、彼は良い人だ…… それに彼は聞いての通り日本語も多少話せるから大丈夫だよ」



その言葉を聞いていたスティは、その高い鼻の頭をポリポリと掻いていた



そして高田教授も少し笑顔を見せた








危なかった……








なにはともあれ、乗り切れた








ありがとう、ママ……








「では、昼食時間になりましたらココに来ますね? 大丈夫ですか、プロフェッサー・スティ?」



「Yes! Yes! オ願イスルヨ!」



スティはうんうんと何度も頷き答える



「了解です♪ では案内と軽く散歩しながら一緒に食事しましょう♪」



そう言い、私は受講科目のある教室に足を運んだのだった








授業を受けている時に、ふと考え事をしていた


高田教授の事では無い


プロフェッサー・スティの事だ








奴は()()()()()、だ



少なくとも面識は無い



私達の行動に最善が求められるなら、敵と考えるべき…… それが大前提だ



そして共に、状況からすれば未知の敵であり、最悪ともいう






ただ、()()()()()()()()()()()というだけ






だから敵として見て、行動するのが今のところ最善なのだ






そう……


新しい、高田教授に繋がる(キャスト)が現れた事を【識った】という最善






つまりはスティの私達に対する役回りは二択






【敵】か、【傍観者】か、だ


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