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ルビーアイ・カタストロフィ  作者: アゲハ
番外編 2人の父親
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55話 龍斗と修

女性達が風呂に入り、次に入ったのはアーサーとライ


その後に入ったのは龍斗、そして修


そして家事が済んだ胡桃と桜子が同時に入る






全員が風呂を済ませた頃には、夜中の1時を回っていた






各々が部屋に入り、夜を過ごす






静けさに包まれた家






物音1つしない






暗闇に飲み込まれた部屋には恐怖すら感じる






だが、その家の1室、一部に電灯が(とも)った






それは、キッチン






その中に動く人影がある






龍斗の姿だった






電気の点いたキッチンに立ち、彼は蛇口を見つめる






そして、歩き出した先は…… 冷蔵庫前






バヒュ……


そんな空気の吸い込む音を鳴らして冷蔵庫の扉が開く


中に手を入れた龍斗は缶を1本取り出した


ビール、350ミリリットル缶


ソレをプシュッ! と、小気味良い音を立てて開ける


おもむろに口に運んだ龍斗はグイッと喉に流し込み、溜息にも似たモノを吐き出した



「ついに、か……」



彼はそう呟く



「何がだ?」


「うわ!!!」



龍斗はその場から飛び退き、声のした方向に顔を向ける


ソコに居たのは修だった



「修かよ…… 驚かせんなって……」


「悪ぃ悪ぃ♪」



そう言った修は右手を上げて笑いながら謝罪を見せる



「で、何が()()()だ? 藍ちゃんか? ソレとも?」



龍斗は口を真一文字に閉じる


そして開いた言葉は、



「どっちも、さ……」



だった


そのまま俯く龍斗に歩み寄った修は、彼の肩に手を置いた



「そうか…… ま、解るけどよ…… お前の気持ちはな…… なぁ?」


「ん?」


「俺にもビールくれよ」


「ああ」



そう言った龍斗は、修に改めて冷蔵庫から取り出した缶ビールを手渡す


受け取った修もまた、プシュッ! と、音を立てて開ける


そして開けたばかりの缶ビールを龍斗に向ける


ニヤリと笑った龍斗は、その手に持つ同じソレをコン、と当て…… 2人でクイッと一口、喉を通した



「なあ、龍斗…… 藍ちゃんの事なんだけどよ……」



言葉を切り出したのは修だった


明るいキッチンから見える暗闇のリビング


その、どれに焦点を絞る訳でも無く、ただ闇を見つめながら口を開く



「俺達じゃ…… 解決しない問題だ…… お前だって解ってんだろ?」


「ああ……」



同じく、龍斗の見つめる先も暗いリビング


ただ、真っ直ぐそちらに目を向け、彼等の視線は交わらない



「でもな、修…… ()()は俺の罪だ……」


(ちげ)ぇーよ」


「あ?」


「俺達の、だろ?」


「修は悪くない…… やっぱ…… 俺なんだよ」


「でもよ、お前じゃ藍ちゃんは納得させらんねぇぞ?」


「解ってる…… 解ってるんだ、それは……」


「任せようや……」


「それで…… 良いのかよ……?」


「しょうがねぇだろ」


「……ああ」



そこまで言って、龍斗は目を閉じる


一度、修は龍斗へと目を向けた


だが、直ぐにまたリビングに視線を戻した



「なぁ、聞いてたか?」



そう言ったのは修だ



「何がだ?」


()()()()の方だ」


「ああ…… 聞いてたよ」


「そっかぁ…… 中々に…… ツレぇよな」


「だな…… (つら)いわな」


「いつから聞いてた?」



視線を天井に向けた龍斗が答えを探す


そして修へと語り掛けた



「1週間前に胡桃から…… そして昨日、仕事中にメールが来ててな…… 多分明日来るって書いてあった」


「胡桃からか?」


「ああ」


「そっか…… 俺も同じ位に桜子から連絡来たわ」


「そっか」


()()か……」


「彼氏…… だな……」



2人はそう言って口を閉じる


彼等が口にしたのはアーサーとライの事だった


龍斗と修に来たメール



【いずれ泉が彼氏を連れてくる】



そして、



【連れてくる男性は2人で、もう1人は咲子の彼氏になると思うよ♪】



という内容の文面だった



心の準備を整えて欲しいという妻達の意志なのは充分解る



整えた



極力、整えた



顔には出さずに普通に接した男親2人がビールを片手に、キッチンで黄昏ていた



「でもよ…… お前は凄ぇよ」



修が口を開く



「ん?」



龍斗は疑問を投げ掛ける



「娘の彼氏とよ…… チェスまでしちまうんだからからよ」


「ん…… ああ…… なんつーかよ……」


「あ?」


「嫌いになれねぇ…… てゆーか……」


「つまり?」


「一緒にチェスして解ったんだわ」


「何が?」


「駒の進め方が…… ()()()んだ」


「はぁ?」


「アーサーはな…… 多分、チェスが強い」


「だから?」


「ああ…… 圧倒的な強さを見せつける自信過剰な男じゃなく、勝ちには(こだわ)るけど…… ちゃんと相手に合わせられる男だ」


「ほう……? チェス打って試したのかよ?」


「まぁ…… そんなトコだな……」



そう言った龍斗はビールを口にする


そしてニヤリと笑って言った



「アイツ…… アーサーな…… 俺が()()()()()を打った時、一瞬顔を()()()()


「ほう…… そして?」


「無駄な一手(いって)()()()()


「は? 何でよ?」


「さぁな…… だけどよ、修…… チェスの時も言ったけど、チェスは一駒一駒がとても強い…… だから無駄に取られると一気に戦況が傾く」


「ああ」


「無駄な一手は、相手にとっちゃ一気に優位に持って行くチャンスなんだよ」


「よく解んねぇけど…… だから何だって言うんだ?」


「アーサーはいつも()()()()()()()()()()()()()んだわ」


「負けるわけでもなく、か?」


「そうさ♪ 無駄な一手には、無駄では無くとも、あまり効果の無い一手を動かす…… そして俺を楽しませる」



修は苦笑いを浮かべる


そして、そのまま思いを口にした



「ソレってよ…… 自分が強ぇから遊んでるダケじゃね?」


「あはは…… かもな♪」



龍斗は笑った


だが、その目は笑っては()()()



「修……」


「ん?」


「遊んでるダケかも知れねぇケドよ…… 俺はあの男に全敗した」


「だな♪ ()()()()()()な!」


「ああ! みっとも無く全敗した♪ だけどよ……」


「ん?」


「勝ちに(こだわ)るアーサーが…… ()()()()()()()()()だったとしたら…… 何でギリギリの試合をするんだ?」


「スリルを楽しんでるとか、か?」



龍斗は頷く



「ソレも有るだろうけどよ…… ソレってよ…… やっぱり()()()()()()()()んじゃねーか?」



修は笑う



「見方を変えれば、だろ?」


「勿論だ…… でもよ…… アーサーの駒の進め方には()()()()()が無い」


「イヤらしさ?」


「そうさ♪ チェスを打つ時、俺は相手の顔を見ながら打つ…… アイツの顔はいつも素直だ」



修はビールを口にして言う



「お前がそう言うなら…… 良い奴なんだろうな」


「修…… お前、俺を全面的に信用しすぎじゃねぇか?」


「でも、お前はアーサーを信用したんだろ? 男として、な」


「まぁな」


「俺もな…… お前と同じで必死に平常心貫いたよ…… ライも良い奴そうだった…… 咲子がな、幸せなら…… 俺はそれで良い」


「良い親父(おやじ)になったもんだな」


「お前こそな♪」






そう言って視線を交わした龍斗と修は、もう一度、缶ビールを乾杯の意味を込め、コンと鳴らした


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