53話 覚醒ルビー
寝るにはもう丁度良い時間に成っていた
「さて、そろそろ寝るか!」
時計を見てパパが言う、そして
「2階の一室にライとアーサーの寝床作んなきゃな!」
意気込んでリビングから出ようとした所をママ達に止められた
「修、待って! もうその部屋に寝床なら作ってるわよ♪」
「寝る前に作るとか、そんなギリギリの事を私達がすると思う?」
そうママと胡桃ママにたしなめられる
返す言葉も無いパパは困り顔だ
アーサーは笑顔で
「アリガトウゴザイマス♪」
と会釈する
ライも同じく会釈した
「じゃあ」と言い出すパパは面目の為にも、もう一度提案をした
「藍ちゃんの寝床だな! 咲子の部屋にでも作るか!」
「胡桃が言ってたから、それも終わってるわ♪」
ママの言葉に愕然とするパパ
完敗したようだ……
「え? ちょっと…… 私、泊まるんですか!?」
そう、藍が驚きの声を上げる
「え? もう夜の11時だぞ? 泊まるだろ?」
と、パパ
いきなりの事態に藍は口をパクパクと動かしていた
「いや、そんなつもりは無かったのですが…… 親の事もあるし……」
「そうか? 今、親御さんは家か?」
「いえ、今夜は夜勤で帰るのは朝方かと……」
「じゃあ、問題ないな!」
パパは笑顔を見せた
「そ、そうです…… かね? はい、では有難く…… あ、母にメールだけ入れときますね!」
そう言い、携帯電話を取り出してボタンを押し始めた
ライは胡桃ママを見ていた
ただ、ジッと見ていた
そして私に視線を向けて、まばたきで話し掛けてくる
【藍が泊まる事が決まったのは今だ…… 家に来る事になったのも数時間前…… そんな素振りは無かった、泉の母親は予知が?】
ライのまばたきがそう言う
【うん、それらしい事が出来るよ】
【そうか、なるほど…… さすがは覚醒ルビーだ……】
そう言い、また胡桃ママを見ていた
どういう事なのだろう
そのままの疑問をライに投げ掛ける
【覚醒ルビー?】
コクリと頷くライ
【うん、泉の母親は単眼だろう? 咲子も僕達も双眼だ…… でも力の全てを識っている胡桃さんには…… 多分、僕らは誰一人勝てないだろう…… 見ていれば解る…… 彼女の力は…… 意思は…… 限界を超えている…… 本当に素晴らしいよ……】
そう言い、また、胡桃ママを見るライ
その眼は、その表情は、憧れにも見えた
皆がお風呂やら寝床やらに移動を始める
アーサーとライのパジャマはパパ達が貸してくれた
藍には私がパジャマ代わりのスウェットを貸す
先に女性陣がお風呂に入る事になった
私も準備をするとしよう
何だか家の風呂に入るのはとても懐かしい気持ちになっていた
それもそのはず
研究室に入り浸っていたから仕方が無い
勿論、シャワー位はある
だが、疲れを取るには、やはりお風呂が一番だ
「家のお風呂が一番落ち着くよねぇ♪」
そう言い、リビングを出ようとした時にママから声を掛けられる
「研究頑張ったもんね! 入ってらっしゃいな♪」
うん、と頷くと私はドアノブに手を掛けた
「研究大変なの?」
背中に声を掛ける胡桃ママ
ココには藍は居ない
丁度良いタイミングだ
ふと思い出した、研究の理解不能だった箇所を聞いてみる事にした
胡桃ママなら何かしらの答えを持っているかも知れない
そう思ったのだ
「あ、そうそう! 胡桃ママに聞きたいんだけど、動く血って解る? ルビーアイの残り香がするから、ルビーに近い何かだと思うんだけど……」
私は率直に聞いた
「動く血? 知らないなぁ……」
当たり前だ
理解不能なんだから
「だよねぇ…… うん、ありがとー!」
ただ、胡桃ママでも知らない事があるのかと、少し安心もした
「ま、DNAも解らないんだもの…… 血ですら無いのかもね……」
そう呟き、戸を開けた瞬間だった
「DNAが…… 無い……」
胡桃ママが何か引っ掛かった事が有るかのように復唱する
「え!? 何か知ってる!?」
私は開けた戸を閉め、ママ達の所に歩み寄った
「DNAを読み取れない血…… 昔、あったわ……」
「え? ホント? 聞かせて! 何でも良いからヒントが欲しいの!」
コクリと胡桃ママは頷き、私のママに3つのコーヒーを頼んでダイニングテーブルを囲み、座る
そして、私にも椅子に座るよう促す
私は言う通りに腰掛けた
胡桃ママが、静かに語り出した
「昔ね、私達の戦いの時にあったわ…… DNA情報の無い血が…… ある人が、ルビーの涙と言ってた」
「ルビーの涙?」
「そう、それは、呪の穴から流れ出た、何か、らしいわ」
「呪の穴?」
「呪の穴はね、ルビーで作ったワープホールの様な物よ…… 厳密には違うけどね…… ルビーを使いこなせる人によっては、その距離を縮める事も出来る」
「つまり?」
「だから、ワープよ…… 瞬間移動ね…… 短、中、長距離を一瞬でね」
「凄いね…… 胡桃ママは出来るの?」
「ええ、出来るわ」
そう言った時だった
後ろから、誰かに頭を触られた
そんな気配はまるで無かった
ゾクリと背中に汗が流れる
それと共に、全身に鳥肌が立つ
マズイ……
率直に
そう思った
だが少し、冷静になる
この家に敵は居ない
私は
ゆっくりと
背後を見る
そこに居たのは
胡桃ママだった
何が起きたのか、理解が出来ない
私は、即、正面に向き直る
目の前に…… ダイニングテーブルを挟んで、目の前に居たはずの胡桃ママが居無かった
私は再度、背後を振り返る
微笑んだ胡桃ママが言った
「コレが呪の穴を抜ける瞬間移動よ」
さも当たり前の様に言った
ライの言葉
【覚醒ルビー】
勝てないなどのレベル差では無い
力が、次元が、違いすぎる
そう、感じざるおえなかった
そして、こうも思った
この力さえ手に入れれば
私達の戦争に勝てるかも知れない、と……




