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ルビーアイ・カタストロフィ  作者: アゲハ
3章 咲子
52/157

51話 親

私達は駅前のモニュメント前に戻る


そして椅子に腰掛けた


アーサーとライはポケットに手を入れ、立ったまま私達を優しく見つめていた





彼らの両手には、もう武器は無い





路地に入った辺りで…… 奴らの視界から外れた所で…… 煙のように、消えた






その瞬間を私は()()()()()






ライが私達を助けてくれた時にも、その後、こんな感じで銃も、サバイバルナイフも、その破片も、このように消えたのだと思う






私はあの惨劇を目の当たりにせぬよう、大通りに出るまで藍の体を抱き上げ、顔を胸に埋めて、ココに移動した



今、私の隣には藍が座る



藍の隣には泉が座る



私達3人は、アーサーとライに見つめられながら、もう薄暗くなった夕空を見ていた








赤い雲が流れる








風は私達を撫でる








さっきも似たような事があったばかりなのに……








また私達は、赤く色を変えた空を見ていた








また風が私達の髪を撫でた時、泉が藍の頬を()()()()



「痛たたた!! つぅぅーー!! 泉! いきなり何すんのよ!!」



驚きと痛みで藍が藻掻く



その顔を見た泉は笑顔を見せ、言った



「藍…… 貴女は無事…… 私達も無事…… あまりダークに考えちゃダメだからね…… 問題無かったんだからさ…… 悪い感情とかさ、持っちゃダメだからね……」



藍は目を丸くして、そして足元を見る



「言われた……」



そう言った



「何を?」



泉は聞いた



「さっきライさん? に、助けて貰った時…… 咲が同じ様な事を言ってくれたの……」



泉が私を見る



その顔はとても、優しい笑顔だった







「そっか…… 姉妹だもんね♪」








その顔を見て、私もどんな顔をしているのか想像がつく



私はライを見た



彼はとても素敵な笑顔を見せていた



その笑顔に私も同じ表情を返す






泉が口を開いた



「帰ろう! 藍も一緒に! ご飯食べよ♪ お腹ペコペコだよ!!」



と、皆に笑顔を向けて帰宅を促したのだった










5人で私達の家の前に到着すると美味しそうな香りが漂う


もう夕食に丁度良い時間になっていた


私は玄関のドアノブに手を掛け、そして引いた


後ろに続く藍が、



「お邪魔します……」



と、申し訳無さそうな声を出す


それぞれが靴を脱ぎ、1階リビングに向かった








ドアを開けた私は驚いた


リビングのすぐ横に立つダイニングテーブルの上には、こんなに…… といえる量の夕食が並んでいたのだ


キッチンに立つ2人のママが今も尚、調理の手を休めること無く、まな板の音を鳴らす


私は聞いた



「何!? この量…… いつもの倍くらいあるんじゃ無い!?」



ママが私を見てニコリと笑う



「そりゃ倍でしょ♪」


「なんで!?」


「え? だって今日は9人分でしょ?」



そう言い、ママは胡桃ママを見る


胡桃ママは私に視線を移し、微笑んだ


そして言った



「玄関に居るんでしょ? そんなトコに立たせてないで、中に入って貰ってよ♪」



私は後ろに待つ4人をリビングに招く


そしてダイニングテーブルに腰を下ろすよう促した






私はその最中も驚きを隠せずに居た






疑念を持ちつつ、私は泉に小声を掛ける



(ねぇ、泉…… アーサーとライが来る事言ってたの?)


(言ったよ? だって、じゃないと泊まるとこ無いじゃん?)



そう言い、泉は頷いた






確かにそうだ






アメリカから来て、泊まる宛てなどあるとは思えない


そして()()()()()を更に繋げる



(じゃあさ、()()()()()は?)



泉の表情が変わる



(あ…… 言ってない……)


(だよね…… 私達家族で6人…… アーサーとライで8人…… ママは多分、胡桃ママから聞いたんだろうけど…… 9人分って言ってたよ…… )


(うん…… 言ってたね……)


(藍が来るのはお見通しってわけね……)



私達は顔を見合わせ、胡桃ママを見た


そこには笑顔で調理の手を止めない胡桃ママが居た


私は泉に視線を戻す



(ホント…… レベルが違うね……)



と言った



(うん…… 勝てないね……)



そう苦笑いを浮かべ、泉が返した








調理の音が止まる


しばらくして大皿に盛られた麻婆豆腐がテーブルに並んだ


てゆーか……


ほとんど中華料理だった……




エビチリ……




青椒肉絲(チンジャオロースー)……




棒々鶏(バンバンジー)……




酢豚……




全てが大皿に盛られ、量がとんでもない……


スープは何故か…… オニオンスープだった……


キッチンでカチャカチャとママ達は調理器具の洗い物をする


私達5人は、並んだ料理の量を見て苦笑いが浮かぶ





胡桃ママがキッチンを出てダイニングテーブルに寄ってきた


そして笑顔で口を開いた



「貴方がアーサー、貴方がライね? うちの子と仲良くしてね♪」



2人は顔を見合わせ、胡桃ママを見て笑顔で頷く



その姿を確認した後、笑顔で藍を見た




無言で藍を見つめる




ただ、ずっと見つめていた




藍は居たたまれなくなり、私に視線を向ける




その姿に、あっ!と声を上げ、



「ごめんなさいね! ……藍さん…… よね? いつも咲子がお世話になってるみたいね♪ これからも…… これからも…… 仲良くしてあげてね……」



そう言う胡桃ママの瞳には、涙が浮かんでいた


そして、深く、深く、頭を垂れた


訳も分からず、藍が立ち上がる


そして、



「こちらこそ凄くお世話になってます! とても…… とても大切な…… 友達です!! これからもお目に掛かると思いますが…… 宜しくお願いします!!」



そう言い、藍も深くお辞儀をした





不意に藍の両手を掴む人






掴んだのは






私のママだった



「咲子は悪くないの…… 悪いのは私達…… ごめんなさいね…… ごめんなさい…… ごめんなさい…… ごめんなさい……」



ママの両手は端から見ても震え、そしてその瞳からも涙が流れていた



あまりの出来事に目を丸くしながら、藍は私と泉を交互に見る



私達も何が起きたのか解らず、5人で顔を見合わせていた






その時だった







ガチャ……







玄関の戸が開く音がする


そして何だか懐かしさを感じる声がした



「ただいまー!」

「ただいまー!」



パパ達だ


コツコツと玄関で音がして、止まり、次にパタパタとスリッパの音が鳴る



そしてリビングの戸が開いた



「駅で修に会ってさぁ…… 一緒に来たわ!」



そう言い、ネクタイを緩める龍パパ



「同じ電車に乗ってるとは気が付かなかったよなぁ! あはは!」



こっちが私のパパだ


そして私達5人を見たパパが驚きの表情を見せる



「お? 今日は大所帯だなぁ? これはこれは外人さんか!? イケメンだなぁ! トムクルーズが2人か?」



訳の解らないことを言うのがいつもの癖だ



確かにイケメンだが、年代上すぎでしょ……



「お? そしてこちらは随分と美人さんだ! オードリー・ヘップバーンだな!」



それ、更に年代上でしょ……


それでも意味の解る龍パパは大笑いしていた


ママが顔を上げる


その流れる涙にパパは驚いた



「桜子!? どうした!?」



パタパタとスリッパを鳴らし駆け寄り、ママの肩に手を置く



一瞬、言葉を選んだ様子のママが口を開いた



「こちらの美人さんが…… 藍さんよ……」



そう言った



首を傾げたパパの姿



その顔を見て、ママは言い直した



「浅田…… 藍さんよ」



と……











パパは止まった



すぐ後ろに居た、龍パパも固まって居た








沈黙が流れる








何故か、とても長く








それを感じた








パパはママを見ながら








肩に置いた手を、下ろした








そのまま、動かなかった








動けずに居たのかもしれない








アーサーも私達を見て、どうしたのかと不安の表情を見せる








ただ、ライは、表情をあまり変えずに居た



いや、目を閉じ



その表情は、少し悲しそうにも見える



少し、余裕の持てた表情に変わったパパが藍を見つめた



そして言った



「君が…… 浅田藍さんか…… ようこそ、我が家へ…… これからも咲子と仲良くしてあげて欲しい……」



そこまで話したところで是非を聞く間もなく「着替えをしてくる……」と言い、リビングを出た



その姿を見送った龍パパは目を瞑り、そして動かなかった



ただ、その口が少し動いていた



小声であまり聞き取れなかったが








()()()()()()……








そう言っていたように聞こえた







そして目を開くと藍に言った



「皆は悪くないんだ…… 悪いのは私だ…… 泉は、咲子は何も悪くない…… 私の未熟さが招いたんだ…… 私だけ裁いてくれ……」



そう言い、深く頭を垂れた



胡桃ママは龍パパの肩に手を置く



ママは龍パパの反対側の肩に手を置いた



その光景は()()()()()()()()()()()姿()、そのものに見えた



藍が首を傾げ、龍パパに聞く



「あの…… 言ってる意味が解らないのですが……」



困惑の表情を浮かべる藍



「私が清算すべき事なのだが、状況的に娘達へ(ゆだ)ねてしまう罪も…… 許して欲しい…… 泉と、咲子とは…… 仲良くして欲しい……」






どういう事なのだろう






理解が出来ず、何ともいえない表情をする藍



私は龍パパに聞いた



「龍パパ……? 昨日の夜、ママ達も同じ事を言っていたよ…… それ、どういう事?」



皆の視線が私に集まる



ママ達は涙を()()()()()()様子だった



龍パパはただ、無言で床を見ている



だが、その肩は震えていた








ガチャリとリビングの戸が開く



沈黙を破った音だった



入ってきたのは私のパパ



パパは龍パパの頭をグシャグシャ撫でまわすと



「着替えて来いよ」



とだけ伝えた



顔を上げ、パパを見た龍パパは



「ああ」



そう言い、リビングから出た

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