50話 相性
(何が起きてんだよ!?)
男の一人が質問とも取れる怒声を発した
(わかんねーよ!! 女を撃ち抜けねぇ!! 何なんだよコレは!?)
その声への回答もまた、質問だった
リーダーの顔が強張る
状況を理解出来ない表情
当たり前だ
普通では無いのだ
彼らも、私達も、だ
泉が、呟いた
「アンタら、腐ってるね…… 女の子に向けて撃つんだ…… 最悪だね…… 許さないよ……」
そう言い、口を閉じる
アーサーとライが振り向く
そして泉と視線を交わし、頷いた
泉は右の手をゆっくり上げる
その手は自分の顔を覆った
解る
発動する
ルビーアイを……
眼を見られぬ様に覆ったのだ
私もあの下着暴動の最中行った行動
ソレを泉もしていた
そして彼らに言った
「アーサー、ライ…… 行くよ……」
アーサーは、屈んで構えた
ライも、屈んで構えた
「three……」
「two……」
「one……」
終局へのカウントダウンが
「zero……」
今、告げられた
私は2人を見た
アーサーの姿は無かった
ライの姿も無かった
見えなかった……
所々で…… ザッッ!! と土が舞う
眼で追うことが出来ない神速とも呼べる速さ……
コンッッ……
何かが鳴った
何かが落ちた音
ソコに転がるのは
男達の持つ銃口!?
銃口というよりは、もはや真っ二つになっていた
半身が落ち、もはや銃とはいえない、プラスチックの塊を男達は手にしていた
一瞬の出来事
だが、次々と、その一瞬が連なる
コンッッ…… コンッッ…… コンッッ…… コンッッ…… コンッッ…… コンッッ……
男達の持つ銃の全てが、その本来の形を変える
そして、止まった彼らの…… アーサーとライの持つ剣が…… 少し、青光りしていた
とても美しく、蒼光りしていた
ルビーアイで、2人の筋力を上げたのだと瞬時に理解する
私が、私にしたように、泉はソレを彼らに施したのだ
考えも付かない方法だった
自己にでは無い
他人に施したのだ
何というセンス……
胡桃ママのバトルセンスを確かに継いでいる
私が自己に施した際には、痛みを感じる所で止めた
それは自分の体がルビーに耐えられる限界を知らなかったから感じた痛み……
それを人に、他人にだ……
アメリカに渡り、力と精度が高まった様にも感じる
差が付いた、そう、感じた
【嫉妬】
多分、私はソレを感じていた
彼女に負けていると……
泉に負けていると……
そう、感じてしまった……
プラスチックの塊を持ち、呆然と立ちすくむ男達に、彼らは放った
自分の持つその銃で眉間に向け、何発も放った
男達は叫声を上げ、その声は失意の絶叫に変わり、そして、のたうち回る……
顔を引きつらせ、ソレを見ている男が居た
リーダーだ
彼は数歩、足を引いた
カタン……
その足に当たり、音を鳴らすプラスチックの塊
それは半身に斬られたモデルガンでは無い
最初に所持して現れた男2人の、最初に狙われた男2人の、手から溢れ落ちた2丁のマシンガンとアサルトライフルと呼ばれた銃だった
ソレを見てニヤリと笑う
即座に腰を曲げ拾い、両手で構える
「まだだ…… まだ終わらねぇ!!!!」
奇声を上げるリーダー
その銃口はアーサーとライに向いていた
そして放つ
プシュュッッ…… プシュュッッ…… プシュュッッ…… プシュュッッ……
シャタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ………
左右の銃から響く小気味の悪いメロディー
何度も鳴り、何度も聞いた空気を裂く音
彼らに当たったハズの弾丸
その弾丸は体を通り抜けた
教授の猫、ゲシュペンストの様な物体透過かと疑う
だが少し違う
いや、冷静に見ると、全然違っていた
足元の土が舞う
そしてすぐ横の土がまた舞った
体一つ分、左右交互に移動し避けていた
着弾の瞬間の回避
そこに元よりあったかのような自然ともいえる残像
アーサーとライがそれぞれ2人ずつ居るかの様な感覚に陥る
この距離で確実に回避する技術
何度も何度も、舞う土
これも相性なのだろう
味方として手を組んだ、ルビーとサファイアの相性
【盾】を携えた彼らに、泉の【剣】が加わる圧倒的な強さ
味方である彼らを、恐ろしいとさえ感じる
男性の筋力を増せば、これほどまでに人知を超えるのか……
あの日の、自分に掛けた力の私では、多分、そのスピードの半分にも満たなかっただろう
恐ろしかった
そして美しかった
リーダーが持つ2丁の銃の左右に、彼らは跳んだ
そしてソノ銃の半身が、カランと乾いた音を立て落ちる
その顔は、完全に戦意を無くしている様に見えた
リーダーが彼ら2人を交互に見て、そして走った
路地に向けて駆け出した
その両足、背中、後頭部に向かって2人は、ためらいも無く…… 撃った
何発も、何発も撃った
痛みに耐えられず、足を絡ませ転ぶ男
その傍らに2人は静かに歩み寄る
そして言った
「逃ゲルノカ?」
そう口にしたアーサーは前のめりに倒れる男の後ろ髪をムンズと掴み、仰向けに返す
そして言葉を続けた
「ココニ居ルノハ、オ前ヲ慕ウ仲間ダロウ? ソレヲ放リ出シテ逃ゲルノカ?」
男の目から雫が落ちる
そして開いた口から漏れる言葉は、最悪だった
「お前らが…… お前らが居れば俺のチームは最強だ…… コイツらはもう要らねぇ…… お前らさえ居れば…… なぁ、手を組まないか!?」
恐れながら、涙を流しながら、そう言った
2人は目を深く閉じる
そして開いたその眼は青く、そして、悲しみが見えた
「話二成ラナイ……」
そして空き地中央に歩き出した
のたうち回る男達を踏み付けながら、ただ真っ直ぐ、中央に向けて歩いた
そして止まった
アーサーが口を開く
「ナァ、君達…… コレガ君達ノ…… リーダー…… ナノカ? 君達ノ事ヲ何トモ思ッテ居無イ…… コレガカ?」
痛みに叫ぶ男達は何も答えない
悲鳴だけが周囲に響く
だが、コレで良い
もう、あの男に肩入れする者は居ないだろう
むしろ、男達から狙われる存在に成ったのだ
そしてアーサーは続けた
「今度僕ノ女二手ヲ出シタラ…… 女ノ友達二手ヲ出シタラ…… 次ハ確実二…… 殺ス…… 猶予ハ渡サナイ…… 完全二抹消スル…… 二度言ワナイ…… 忘レルナ……」
そう言い、のたうち回る増援も含んだ約30人になった男達の眉間に、もう一発ずつ
その銃弾を、放った




