48話 動物のマーキング
チーマー達の両手で顔を抑える様を見れば、目では無さそうだ
多分、手の位置からすれば眉間だろう……
だから、解った
本気で戦い、その上で戦意を無くす為にモデルガンにしたのだと
プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ……
プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ……
2人が更に撃った
それぞれ計4発に聞こえた
狙った先は……
倒れている男2人に向けた、追い打ちだった
もう、解っている
卑怯
それで良いのだ
今は本来、一般的に見て、私達にとって絶対的不利で有るべき状況
心理的に折ったのだ、心を……
撃たれた男2人は顔を見せ、大の字に仰け反り、その後、転がり狂う
その眉間からは流血があった
そして両手の甲からも流血していた
4発のプラスチックBB弾が地面に転がっている
2人の放った弾丸は、転がる男の両手足を撃ち抜いた
足は衣服に阻まれ、ダメージが見えない
だが明らかに、眉間、両手のダメージは流血により顕著に見える
泉が冷静ともいえる口を開いた
「ダメージが大きい…… ガス銃みたいね…… エアガンの比じゃ無い…… フツーは人に向けないけど…… ね」
当たり前だ
絶対にしてはならない行為を、今まさにしているのだ
それもこれも私達を守るために他ならない
(あの外人、マジで撃ちやがった……)
男達に明確な動揺が走る
動揺を制したのは、やはりまたリーダーだった
「こっちは何人居ると思ってんだ! 全員で行けや!!」
アーサーとライに向けて手を向ける
奴らがそれぞれ顔を見合わせ、表情を変えた
コクリと頷き、彼らを見る
そして走った
アーサーとライは対称に離れてソレを撃つ
見事な腕前、明確な射撃……
プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ……
空気を裂く音が鳴る
それと共に眉間から血を流し、転がり狂う肉塊がのたうち回る
次々とソレが増えた
軽く10数人を撃ち倒した
速すぎるほどの展開
リーダーの傍らには6人程の男が恐れの表情を見せていた
リーダーが叫ぶ
「テメーら…… とっとと行けや!!!」
男達は動かない
いや、動けないのかも知れない
誰とも解らぬ男達の一人が言う
(だってよ…… コレ、無理だろ……)
その言葉で他の5人が状況を完全に理解し…… 萎縮した
その心を完全に折った行動を今も尚、彼らは…… アーサーとライは取っていた
プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ……
プシュ…… プシュ…… プシュ…… プシュ……
その音は、今、地面に体をこすり付け、動物のマーキングの様な姿を晒す男達に向けてのメロディー
のたうち回った男達の数人が気絶している
完全な姿だった
完全な景色だった
恐いわけでは無い
ただ、美しいともいえる、完全な敗北を奴らに叩き付けた瞬間だった
「何ビビってんだコラ!!!」
リーダーが、残る男達に激昂する
だが、男の一人が言った
(なら、アンタが行ってくれよ……)
その声に表情を激怒へと変えた者
リーダーだ
「んだとコラァ!!! もう一辺言ってみろや!」
男の胸ぐらを掴む、そして殴った
吹き飛ぶ男
それを見ている男5人
その内の一人が電話をしていた事に今更ながら気付く
マズイ……
警察か……?
いや、違う
この状況では、明らかに転がっている男達は奴らのメンバー
どう考えても、むしろ奴らに問題が出る
ならば、増援か……
後者の考えが肯定される
奥の路地から男10人程が姿を見せた
その手にはマシンガン、そしてそれより大きい銃が黒光りしていた
男を殴り、少し息を切らせたリーダーが体を起こし、そして腰に手をやり、ニヤリと笑う
「マシンガン、アサルトライフルか…… 悪くねぇ…… ククク…」
アレも多分、ガス銃と呼ばれる物だろう……
その姿を確認したライは中央から一度離脱し、私と藍の元に駆け寄る
そして、私に手を差し伸べた
そして立ち上がろうとする私を逆の手で制した
え?
立ち上がらせたかったわけではないのか……?
ライは目を瞑り、そしてまた開いた
そして私の目を見て、まばたきした
そのまばたきは【このままココに居て】だった
私はコクリと頷く
一度、泉を見たライは手をかざす
泉の姿が、少し蒼く揺れている
それが当たり前という程の安心しきった顔を見せる泉がライに頷く
そして小声で「thanks」と告げた
気が付かなかった
私の…… いや、私と藍の体も少し、蒼く光っていた
ネットリとした、少し暖かい何かに包まれる
驚くのと同時にライは中央に飛んだ
そして、奴等を見ていた




