47話 完璧な攻防の姿
サファイアって何!?
伊達じゃないって?
偽物じゃ無い、飾りじゃ無いって事?
本物……?
泉の言葉を、私の脳が復唱し、反芻する
理解したいが、理解出来ない
でも……
理解出来ないが、理解出来た
ソレは違和感
あの時、ライはサバイバルナイフを放った
あの時、ライは拳銃を撃った
あるべきハズの無い所から……
解っている
アレは何かしらの力……
それがサファイア……?
私は泉を見る
彼女はアーサーとライを見ていた
無表情で見ていた
私の視線に気付いた泉は、一瞬目を向け、また笑う
(大丈夫、座って)
そう、言っているように思えた
私は座った
藍も座らせた
奴らの姿を見せぬよう、藍の顔を私の胸に埋めた
苦しくないよう、隙間を作って私の胸に埋めた
コレからの事が理解出来ぬよう、藍の頭を抱え、私の二の腕で彼女の耳を塞ぎ、私の胸に埋めた
震える藍
そして、強く私の体を抱き締めた
何とも言えない緊張が走る
ただ、緊張と呼べる物を感じて無い者が居た
壁を背にする私達と、男達の間に居る……
そして直立した……
アーサーとライ
そして、泉だった
アーサーとライは一度振り向いた
そして、
「スグ終ワルカラ待ッテテ」
それだけ私達に告げる
コレから力を、発動する
そんな予感がした
知らない事は、知るべきだ
私はその予感のまま、アーサーとライの動きを見逃さぬよう見続けた
アーサーが少し右手を上げる
ライは少し左手を上げる
その2人の間の空気が揺れた
少し蒼い様な蜃気楼が立つ
そのまま2人は男達から見て、1列に一瞬並び…… そして元居た位置に戻る
その2人の間には、また、ポリバケツが握られていた
マジックの様な手際良さ
素人では、そう思うしか無い
コレは有り得ない力なのだから当然といえる
ポリバケツを瞬時に出した時、約20人の男達はざわめき立った
彼らは、そのポリバケツを地面に置いた
ゴトン…… ゴトン……
ポリバケツが2度鳴り、そして揺れる
そして、ガラン… ガラン…… とまた2度、音が鳴った
そのポリバケツに何か入っている
そう、誰もが思ったはず
リーダーが口を開く
「おもしれーマジック見せてくれるねぇ…… ククク……」
そして半笑いを浮かべた
周りを取り囲む男達も冷静を取り戻し、笑いを浮かべる
アーサーとライは表情も変えず、腰を曲げ、ポリバケツの中に手を入れた
取り出した右手にはブレード、と言うのだろうか…… 峰の無い、両刃の剣……
そして、左手には拳銃、ハンドガンが握られていた
(おいおい…… アレって……)
男達がまた騒ぎ始める
当たり前だ
奴等は武器、何より拳銃の恐さに躊躇したのだろう
アーサーとライの姿を見た私の感想は違う
なんと……
なんと美しい光景か……
そう思った
完璧な攻防の姿
近ければ切る
遠ければ撃つ
逃げ場は無い……
リーダーと思われる男が一瞬顔をしかめ、そして表情を戻した
そして男達の動揺を制した
「何騒いでんだ、テメーら……? ありゃチャカのパチモンだろーが…… よく見てみろ! モデルガンだ!」
私にはよく解らない
ただ、チラリと見えた銃口は鉄の弾丸が放たれるとは到底思えない小さな口径をしていた
一瞬で見破るリーダーを大した者だと思いつつも、私は疑念を隠せないでいた
さっき助けてくれた時には、間違いなく本物の銃弾だった
それは鉄のサバイバルナイフを粉微塵に破壊し、間違いなくソウだと解る
何故、今更オモチャを……?
そう感じたのは私だけだろう
藍は今も尚深く私の胸に顔を埋める
先ほどのが本物だと知って、見ているのは私だけなのだ
だが、その答えはすぐに出た
アーサーとライは男達に銃口を向ける
オモチャだと知りつつも男達の表情に緊張が走る
そして
プシュ……!!!
プシュ……!!!
妙な空気音
同時に悲鳴が上がった
断末魔の様な叫び
男達の内の2人が顔を両手で抑え、地面でジタバタと藻掻いた
本気で撃った……
そう思った
無事だろうか、などとは感じず、ソレだけ思った




