46話 チーマー
私は泉を見た
実に平常心を保った姿が目に映る
「どうしたいの?」
泉は彼等に聞いた
男達のリーダーは髪を掻き上げる
「俺らもチーマーとして舐められる訳には行かねーのよ? 解る? この辺を占めてんの俺らなの…… だからさ、って事」
泉は目を閉じた
そして、
「言いたい事は解るよ?」
そう、返した
ニヤリと笑うリーダー格の男
「話が早くて助かるよ……」
「でも、チーム解散なっちゃうよ?」
泉は、恐れをおくびにも出さない表情で淡々と語る
ココには藍も居るのに無茶だ……
チラリと私を見た泉はニコリと笑った
ムリだ……
周囲に助けを求めるなら解る
藍の居る前でルビーアイは使えない
それ位、当たり前なのに……
泉…… 何を考えてるの……?
リーダーの男は呆れ顔を見せる
「この人数だぜ? 解ってんのか、姉ぇーちゃん? 度胸だけは認めるが、まぁ認めついでに終わったら相手して貰うぞ…… ククク……」
そこまで口にした時だった
背中に汗が流れる
コレは……
殺気……
解る
放っているのはアーサーとライだ……
恐れは無い
明らかにチーマーと呼んでいた男達に向けられたモノ
私は無理と知りつつも藍に小声で話し掛けた
(逃げて…… ココなら、さっきと違って人目が多い……)
(出来るわけ無いでしょ!!)
コレも解っている
この答えが返ってくるのは……
でも、言わずにはいられなかった
(お願い…… 逃げて…… そして警察呼んできて……)
ココから離せれば何とでもなる
私と泉なら、こんな輩20人程度……
この世から蒸発させるのは容易い…… いや、言い過ぎた…… ソコまではしない…… 出来ないのでは無い、し無い、ソレだけ
一瞬固まった姿を見せる藍が私に言った
(来ないよ…… さっきの警官は、あっちの道を曲がったトコにある駐在所の人だもん…… さっきの男達を追って行ったから…… すぐには来れないと思う……)
その言葉に納得してしまう
なんでこんな時にまで貴女はそんなにも高い洞察力を……
嬉しいし、悲しい
その洞察力、観察眼……
それが無ければ、事態は即収束する
もどかしさばかりが心を掌握する
リーダーが言った
「まあ、こっち来いよ……」
その言葉で促される様に、男達が取り囲んだ
私達の前方に約10人
私達の後方に約10人
逃がさない、そう意味の込めた布陣なのは素人でも解る
そして向かった先は……
あの空き地だった
もう戻りたくないと思っていた空き地
ココで何も無い
何も無かったのだ
でも……
藍の心を傷つけた空き地
ソコにまた戻った
マズイ事になった
そう、私の心がブザーを上げる
私達は奥の建物の壁に背中を付ける
追いやられた、ココに……
「落とし前…… 付けて貰わなきゃなぁ」
リーダーが口を開いた
何をすればベストなのか
私は考えを巡らせ、そして、泉を見た
泉は居なかった
いや、居た
視界に入らなかっただけ
泉は座っていた
無表情で座っていた
余裕とも取れる姿
舞台の観客の様な余裕だった
考えもまとまらず、私は泉に問う
「泉……」
一瞬、私を見た泉はまたニコリと笑顔を見せ、そして言った
「咲子、藍、座って♪」
ソレだけ言った
そんな事出来るわけが無い、そう言おうとした
私達が何とかし無ければ、と、そういうつもりで言葉を発しようとした
その言葉を止めたのは、他でもない、泉だった
彼女が紡いだ言葉は、
「彼らは強い…… 相性はあるかも知れないけど、そうね…… 1対1なら私達は負ける位ね……」
そう言った
表情を変えず、さも当たり前の様に……
そして続いた言葉は
「サファイアは…… 伊達じゃ無いよ」
だった




