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ルビーアイ・カタストロフィ  作者: アゲハ
3章 咲子
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35話 藍の青春

「なんかー、メッチャ嬉しーなぁ♪」



そう言うと、藍は残りのオレンジジュースを飲み干した


そして私を見る



「飲もう! お互いジュース無いわけだし!」



手元を見ると、今先程飲み干したグラスには、氷だけがカラン……と音を立てる



「そうだね!」



私はまた店員を呼んだ



「オレンジジュースと…… 藍は?」



メニュー表に目を通した藍は、パタンと閉じて店員を見る


そして言った



「もう、気分は…… テキーラで♪」



ガタン!!


私は椅子から立ち上がった


ちょ、待て!


私、19よ!?


貴女も19でしょ!?


もうハタチの誕生日が来たの!?


可能性が無いとは言えないけど……




だから余計なことは言えない


もしも違って店員にバレたらマズい!!


私は無言のまま藍を見た


その視線を感じたのか、まぁまぁと手を振り、私に着席を促す



「大丈夫よ! 私は24だから♪」



はい!?!?!?



何と答えていいのか判らず、私は無意識に口をパクパクと動かしていた



「あちゃー…… 嫌われちゃったかな? あ! 店員さん、私だけは成人なんでテキーラのオーダー大丈夫ですよ♪」



ニコリと笑顔を見せた店員は会釈をして、厨房に消えた



私は思考をフル回転させ、言葉を選ぶが、口を次いだ言葉はストレートすぎた……



「藍…… ホントに…… 24……!? なの!?」


「そだよ♪」


「そだよって……」


「嫌われちゃったかな?」



私はブンブンと頭を振り否定する



「そんな事、1ミリもない!」


「良かった♪」


「だけど…… 驚いちゃって……」



当たり前だ


同級生だと思って居た


いや、それにしては艶っぽさもある女性だとも思った事はある


それにしたって……





そんな考えを巡らせていると店員がオレンジジュースとテキーラをテーブルに置く





私は一口、それを飲んだ



「私ね……」



口を開く藍は淡々と話し始めた



「今は学生に専念してるけど、元は社会人枠で入学したんだ……」


「そうだったんだ……」


「うん…… 私の親って、母親だけでね…… 父は私が生まれる前に病気で死んじゃった」



私は言葉が出せずにいた



「でね、母は若い内に私を産んだから、すぐ働きに出て、あまり家に居なかった…… それでも感謝は勿論ある! だから、私も高校を卒業したら働きに出た…… 少しでも家に、母に給料あげたくてね」


「うん……」


「でも、そんな私に母は言った…… 貴女は若いんだから、まだ青春楽しみなさいってね♪」


「うん……」


「だから私はアノ大学に入ったの…… でもまだ迷ってる…… 本当にこれで良かったのだろうかってね……」


「どうして……?」


「だって…… 母はずっと働いてる…… 高校卒業して私が産まれて、それからずっと働いてる」


「高校卒業してから…… ずっと……」



私は他の言葉が見つからなかった


藍のママは、私の歳にはもう子供が居て…… もう立派に母親してたんだ……



私とは大違い……



凄い人だ……



「咲…… 私ね…… だからホントに私だけ気楽に過ごしていいのか疑問なの……」


「そうなんだね……」


「うん…… 学校行ってても、別に青春なんて感じられなかったんだ…… 恋する訳でも無いのに…… でもね……」


「ん? でも、何?」


「あったの、青春……」



藍は笑顔を見せた



「そーなんだ♪」



私もつられて笑顔を見せる



「貴女よ」


「貴女?」


「そ、咲と会えた…… 貴女の眼差し、貴女の力強さ、貴女の頼りがいのある物腰…… 凄く友達になりたいって思ってた」



藍の、はにかむ顔が眩しく見える


そして座ったまま大きく背伸びをしながら彼女は言う



「この人と友達に成れたら、凄く幸せだろーなぁって…… そして私はもっと成長出来るだろうなぁって思ったの♪」



「あ、それ! 私も思った! ……私ね、あまり他人に興味無かったの…… でもね、この人は私に無い物いっぱい持ってるなぁって…… この子と一緒に居たら私はもっと…… 人として成長出来るかもって!」



「同じだね!」



「うん、同じだね!!」



そう笑い合い、私達はまた食事を進めた



私は少々ばかりの疑問を投げ掛ける



「でもさ、藍? 貴女、結構昨日の暴動で隠れファン居たじゃ無い? 恋人とかさ、その中から選べないの?」



藍は即座に目の前で大きく手を振り否定した



「ありえないからー!! そりゃ告白とかされたこともあるよ? でもさ、ダメなんだよね……」



「なんで?」



私は首を傾げる



「若すぎてダメだぁ…… アレが隠れファンなら、私は隠れファザコンかな? アハハ!」


「ど、どゆこと!?」



少し困った顔を見せる藍は言葉を続けた



「うーーーん…… 会ったことはないよ? でもさ…… 多分、その影みたいなもの? 追ってるのかなぁ…… 私、年上じゃ無いと無理っポイわ♪」


「なら先生は? 藍を好きそーな先生居たよ?」



更に大きく手を振り、大否定



「ムーーーリーーーー!!! 何てゆーか、心の歯車みたいなのが、カチッとハマらないんだよね……」



ありゃりゃ……



全校男子生徒さん…… 並びに男性教諭方…… ご愁傷様……



「そっか…… まあ、人それぞれあるよね…… 藍の好きな人、好きになってくれる人、その内に見つかるよ!」



藍は笑顔で、



「うん、ありがと♪」



そう言った








もう、気が付けば夕日が顔を見せている


楽しくて……


でも、切ない話もあって……


時計に目を向ける事は無かった


気が付いたら夕方の5時を少し回っていた





もう、こんな時間だね





どちらが先に口にしたのか解らない


明日からは大学に寝泊まりの生活になる


準備もしなければならない


今日は帰る事にした






帰り際に藍は、研究室に毎日遊びに行くねと言ってくれた


別に危険な研究では無い


私は、楽しみにしてるね、と返す


とても楽しい一日だった

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