31話 謝罪
ガタン!!!!
立ち上がった瞬間に椅子が倒れる
「なんで!? 何でそんな事言うの!?」
何故、止められる理由があるの!?
何で!?
浅田さんの何が私にダメなの!?
倒れた瞬間に当たった脚部の痛みなど感じる事も無く私は胡桃ママにズラズラと言い放った
「何で!? 何でなのよ!! 友達選ぶとか訳分かんない!! イイじゃん! 凄く良い人なのよ!? 良い人で、思いやりもあって、凄く楽しそうに笑う人で、一緒に居て楽しいんだからイイじゃん! 胡桃ママは昔から予知みたいな事が出来てるのは知ってる! でもそれとコレとは別! いつも自由にさせてくれてたじゃん! それは私や泉を…… 信じてくれていたからじゃ無いの!? もう、何なのよ!!!!」
胡桃ママはただ、淡々と私の言い分を聞いていた
ママは胡桃ママの腕をつかんで、私と交互に心配そうな顔を見せる
私は、今……
どういう顔をしているのだろう……
私は精一杯の冷静で言葉を綴った
「何か言って、胡桃ママ…… 私は…… 私はね、みんな大好きだよ…… 今日ね…… 私、皆に本当に愛されている事を理解したんだ…… 随分時間掛かったけどね…… だからね、嫌いになりたくないの、皆の事…… 胡桃ママの予知…… 正しいかも知れないけど、そんなの実際解んないじゃん? 変えられるかも知れないじゃん? だって…… 私にはソレ、見えないんだもん…… だから精一杯、正しいと思う事するしか無いじゃん……」
胡桃ママはゆっくり目を瞑る
そして、ゆっくり開いた
「咲子…… 今、予知って言ったの?」
プチン……
私の苛立ちが限界を超えた
「今は関係ないでしょ! 話すり替えないで!!!!!」
「すり替えてない!! 答えなさい!!!!! 大事な事なの!!」
そして、もう一度、一個呼吸置いた胡桃ママは……
目の色が変わった
紅く
炎のように燃える左眼で私を見ていた
「……2度言ワナイ、コレガ最後…… 答エナサイ…………」
なんという気迫……
なんという覇気……
答えなきゃ、オワル……
胡桃ママは単眼のルビーアイなのに……
こんなにも差があるなんて……
「い、言ったよ…… 胡桃ママは予知が出来るって…… 自分でも解ってるんでしょ? 私も…… 泉も…… もう、昔から知ってるよ……」
胡桃ママはエプロン姿でキッチンから静かに出て、私の前に立つ
そして、私の目を見つめ、言った
「私は一度も予知なんてしていない…… こうなったら危ないだろう、こうなったら幸せだろう…… そう思えた事を言っているだけ」
淡々と話すその姿に、私も目を背けることは出来ない
「あのね、咲子…… それが、私が言っていた事が全て当たり、それが予知だと言うのなら…… 私は貴女に謝るわ…… ごめんなさい……」
「どういう事……?」
それしか、私が問う事は出来なかった
「うん、彼女は止めた方がいいと言ったのは、理屈の方なの…… 貴女達が予知と言ってるのは思いの方…… 私の思いが未来を読む予知なのだとすれば…… 藍さんを大事になさい……」
意味が解らない
「胡桃ママ…… 理屈とか思いとか、ソレ何?」
胡桃ママは少し困った顔をして私に話し掛ける
「んーーー…… 悪いけど、今は言えないわ…… 聞かれても言わない…… だから聞かないでね…… ただ……」
「ただ…… 何?」
「彼女は…… 藍さんと友達でいるのは…… 苦難があるわ…… とてもとても、貴女は苦しむ…… でも、全部ひっくるめて大事になさい…… そしてこれだけは忘れないで! みんなを信じなさい!! 最後の最後まで信じなさい!!」
そう言った胡桃ママは私を強く抱きしめた
抱きしめながら、私に言った
「私達を許して…… 私達の罪を貴女達に精算させる罪深さを許して……」
そう呟いて、泣いた
意味は解らなかった
ママも私達に寄ってくる
胡桃ママが、ママの耳元で何か呟く
ママは泣いた
そしてママも私を抱きしめた
そして、ゴメンねと私に言った
何度も何度も……
ゴメンね、ゴメンね、ごめんなさい…… と




