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ルビーアイ・カタストロフィ  作者: アゲハ
3章 咲子
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29話 言葉無き会話

私と浅田さんも三階理科室前から離れた


そして、それぞれの教室に向かう


暴動のせいで、彼女は運動の科目を受講したことに成るのだろうか?



そう思った時だった



「咲子さん…… そー言えば、電話折り返すとか言ってなかった? いーの?」



そうだった!


一連の件で、それすら忘れてた!



「ありがとう! フツーに忘れてたよー……」



彼女は苦笑いを見せる



「だよねぇ…… パタパタしてたもんね! じゃ、また明日、駅前でね! またね♪」



そう笑顔に変え、手を振り教室に向かう彼女


私も手を振り、2階連絡棟廊下で携帯電話を取り出した



トゥルル…… トゥルル……



なんだかもう、ホントに疲れた……



トゥルル…… トゥルル…… トゥルル…… ピッ!



繋がったようだ



「泉! さっきはゴメンねー! ちょっと立て込んでしまっててさー!」



実際ホントに立て込み過ぎていた……


究極に疲れる位に…… ね……



「いいのよ! むしろ忙しい時にゴメンね!」



泉は優しく、むしろ自分が悪いと謝りだす


悪いのは私だ……


泉とは気が付かなかったとしても、テンパり過ぎて、携帯電話を無視してたんだから……



「いいよ、いいよ! 随分いつもと違う、珍しいタイミングで電話くれたけど? どーしたの?」



それが一番話したかった事


彼女が住むアメリカとは、時差が14時間程度あるはず


いつもなら私に合わせて夜8時頃に掛けて来てくれるのに、今回は早すぎた


だから泉からの電話の可能性は、私にとっての0%だったのだ



「うん、実はさ、その町で今…… ルビ、じゃ無くて…… 紅い眼の人間が目撃されたって聞いて驚いちゃってね……」



最近騒がれている例の件の事か……



「そーらしーね…… でも大丈夫! その時は()()()()するから!」



()()()()する


大切な人を守るために……


その時は、ちゃんと戦う


でも、それまでは封印する


コレは私のケジメだから


もう、ママ達の言うことを軽んじない、そう決めたんだ……




「そーゆー問題!? いや、まあ…… でも無茶はしないでよ? 力に差が有ったら、私達でも……」



急に泉の言葉が止まる


どうしたのだろう?


いや、多分、周りに誰か居るのかも知れない


ついさっきも()()()()()と言い掛けた言葉を、()()()に言い替えていたのを思い出す





だが力に差があっても


もう、私は迷わない


大切な人を守る為なら、危害を加える者を排除する


だけど軽はずみにはもう使わない


楽だとか、都合良いとか……


もう、そんな使い方はしない


コレが私の決めた制約


大事でも無い、そんな理由で使うほど私がバカなら……


もう、私は、私の命を絶つ


そう、決めたのだ……






私の決意は堅い


今までの私が愚か過ぎた


命を絶つなんて言えば止められるのは解ってる


だから、コレは私だけの心の制約





妙にナーバスになった瞬間だった





「hello! my name is Ellis!」



はい!?


え、英語!?


知らないよ!? 英語なんて!!!!


私は中学校の記憶をフル回転させる



「え!? えーーーーと…… マイ…… ネーム…… イズ…… 咲子……? ナイスチューミーチュートゥー……?」



やばっ!


コレは、【私〈も〉お会いできて嬉しいです】だ!!!


最後のトゥー要らなかった!!!


マズイ!!


バカだと思われたかもーーー……






それからは頭が真っ白になる


何と話していたかなど覚えてない……


ohとか、Yesとか……


なんか適当に合わせて居たような気がする







会話に区切りが見えた頃、沈黙を手に入れた


テンパり過ぎて、何をどうすればいいのか……


泉…… 恨むよ……


とりあえず大きく深呼吸をした……






その時だった






トントン……



受話部から音がする



トントン……



何だろう?



トントン……



接続不良……?


いや、集音部辺りを叩いてるのかな?


ただ、何か違和感の様な物も感じていた私は、



「ん?」



と声を上げる



そして感覚の何かが()()()とハマる瞬間を感じた



「あ!」



昔パパから、ママとケンカした時に取って欲しいフォローを()()で覚えていた



コレは、()()()()()()()()()()だ!!



よく耳をこらす



【こ】トーン、トーン、トーン、トーン

【ん】トトーン、トトーン、トン

【に】トーン、トトーン、トン

【ち】トン、トトーン、トン

【わ】トーン、トトーン



間違い無い!


会話してくれてる!!


私も同じ音で返した




電話先から聞こえる指の音がとても軽くなった気がする


誰かは解らないけど、楽しそうな音


コレがあるから、忘れなかったようなものだ






パパはママとケンカした時と、もう一つの時にモールス信号を使って助けを求めてきた


ケンカの時はいつも重かった指から奏でる音……


もう一つの時には、とても軽かった…… 優しいメロディーだった






それはママにプレゼントを準備した時






誕生日……






母の日は私と……






クリスマス……






ただただ、いつもありがとうと伝えたくて準備したプレゼントの時……






そして一番好きな指から奏でるメロディーは、結婚記念日と私の誕生日だった



いつもより長く、そして暖かく指で奏でる会話に、今も続く家族とのコミュニケーションだとしても、私は少し、懐かしさと心地良さを感じていた



ひとしきりの会話が終わる



なんだかとても暖かい気持ちになれた



早く家に帰りたくなってしまう……



でも、昼前……



まだまだ授業は続く



もう、2・3日分の体力は消費しているのに…… 無慈悲な授業だ……




長い長い授業を受け、科目によっては浅田さんと席を隣にし、私は頑張ってその日の受講科目を受けきった……


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