28話 収束
2人で頷き合い、そして理科室の内鍵を開けて廊下に出た
男子生徒の声がすぐ近くに聞こえる
もう、そこの階段を登る所だろう
ニャーー……
不意に猫の声がする方向に目を向ける
そこには車椅子に乗った高田教授と、その膝に乗ったゲシュが居た
私を追い越し、浅田さんは教授に駆け寄った
「教授! 今度その子に会いに行ってもいいですか!?」
首をかしげた高田教授は、すぐに少し笑みを浮かべ、
「もちろん、それはこの子も喜ぶ」
それを聞いた彼女は喜びで何度も何度も飛び跳ねた
その姿をみた高田教授は目を逸らし、一転、私を見る
その表情は、ただ、何も無かった
変化も、感情も、何も見て取れない……
無表情
恐くは無い
いつもの事だ
もう慣れた
ガヤガヤと声がする
振り返ると階段の手すりから、黒い頭がニョキニョキ生えてきた
その1人の視線がこちらに合った
(浅田さんじゃね!?)
(マジだ! メッチャ可愛いー♪)
(てか、何でココに居るわけ!?)
ゴチャゴチャ騒がしい男達に私は寄っていき、もうブラは取り返した事の成り行きを説明した
(嘘つくな!)
(時間稼ぎだろ?)
と言う声が多く聞こえたが、即座にその言葉は鎮められる
浅田さんが体操着の襟元を肩まではだけ、ブラの黒いストラップを見せたのだ
何よりの証拠になったその行動に男達は泣き崩れる
人によっては、その姿にヒューーーー! と口笛を吹く始末……
呆れる変態どもだ……
そんな輩に不快感を持った時、背中に声をかける教授
「咲子くん、明日から…… は、ダメか…… 創立記念日だったね…… 明後日から夜は泊まり込みで研究に付き合ってくれないかね? 1週間位なんだが」
「はい、大丈夫です…… 新種生物の細胞分裂の監視ですか?」
「飲み込みが早くて助かるよ…… ご名答だ」
私は頷き、
「了解です! 1週間分の着替え持参でいいですね? それと鍵付きロッカー貸して貰えます?」
またも首をかしげる教授
「鍵付きロッカーかね?」
私は肩越しに、背後に向かってクイッと親指を向ける
「はい、こーゆーバカ共の脅威もありますので……」
後ろからは男達の声が上がった
(咲子、テメーは浅田の足下にも及ばないんだよ!)
(お前のブラなんか要らねーー!)
(え? フツーに咲子は可愛くね?)
(うんうん、可愛いと思うけど?)
えっと……
なんだか冗談が…… フツーに自分の首を絞めたよーな……
高田教授の引きつる顔を初めて見る私
「そうだな、手配しよう……」
そう教授が言って頷くと、私の背後に向かって高田教授は解散を促したのだった
ただ一点だけ違和感を持った事があった
なぜ……
あの時……
いや、深く考えるには、今日はもう疲れた……
もう家に帰りたい……
こうしてようやく事は収まった
この出来事は大学内でも最大規模の黒歴史として刻まれる事となる……
一般名
【下着暴動事件】
そして校内では誰が広めたのか、
【美女・浅田さんのブラ争奪事件】
と命名され、また、それを誰が略したのか……
【浅田さん争事件】
と、かの有名な大昔の事件をもじった名前で不名誉歴史に名を残す……
そして更に不名誉な事に、この事件を世間にも知られる事となる
あまりにも大きな暴動という事もあり、マスコミがこぞって面白可笑しく騒ぎ立て、翌日の朝の情報番組【オ得ダネ!】のスタートニュースに取り上げられる事になってしまった……
校長先生は頭を抱えていたが、理事長はまだそこまで長い歴史の無い大学がメディアによって取り上げられ、小さな町の大学なのに、まあ、それほど騒がれる美女も居る大学だと公表出来たのは入学希望者の確保に繋がったと喜んで居るそうだ……
転んでもタダでは起きない学校だね……
ムダに疲れたのは生徒達なのをわかってない……
ヤレヤレ、だよ……




