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ルビーアイ・カタストロフィ  作者: アゲハ
3章 咲子
28/157

27話 浅田 藍

涙が落ちる



ポロポロと



絶え間なく、流れた



遅すぎる程の実感



どこか便()()()()()の様に思っていたルビーアイ



ようやく実感した



自分自身に呆れる程の……



強く、大きく



暖かく、温かく



深く、より深い…… 二組の両親の愛を……



情けなかった



こんな大きな愛を感じられなかった事に、悔しさと、情けなさと、不甲斐なさと、親不孝を感じて……



私は膝の力が抜ける



床に()()



そして、また、床を……



流れる雫で…… (にじ)ませた






ギィ……



不意に扉が開く



「ん? え!? 咲子さん!? どうしたの!!!!?」



あ……



この状況はマズイよね……



床に突っ伏して泣いてるとか……



はぐらかさなきゃ……



冷静に、冷静に……




「あ、ごめーーん! ようやくブラ取り返せたから、気が抜けちゃって…… 泣いちゃった♪」



驚きの表情を見せた浅田さんは、直後、泣いた



「ゴメン…… ゴメンね…… そんなにプレッシャー掛けてたなんて…… ホントゴメンね…… なんか、凄く力強くて…… 凄く頼りになって…… 甘えちゃってた…… ホントゴメンなさい……」



「いやいや! いーのいーの! なんてゆーか…… 色んな感情が交錯した…… じゃ無くて…… えと…… なんてゆーか…… その…… ココまで凄くエキサイティングな事、無かったから楽しくて!」



ダメだ……


全然冷静に話せていない……


何とか話をそらすしか無い



「あ! コレ! 渡しとくね! 早く隠して!」



そう言い渡したのは、手に入れたブラ


鼻をすすり、体操着の袖で涙をぬぐう彼女は、



「あ…… ありがとう」



そう言い、笑顔を見せる


そして、おもむろに体操着を脱ぎ、たわわな胸を大きく揺らした





女の私から見ても…… なんと美しい……


てか、そーゆーんじゃない!!


なんだ? この状況は!?





「浅田さん!? なぜ脱ぐの!? あれ……? てか、何でノーブラ? 予備があるって言ってたよね? 付けて来なかったの?」



少し困った顔の彼女



「付けて来なかったんじゃ無くて…… 付けて来れなかったの…… アハハ……」



そう答える






どうゆうこと?


どんな言葉遊び?


いや、待って……


来【れ】なかった?





ああ、そう言う事か……






私はこんなにも周りから助けられて居たんだ


弱いなぁ…… 私……


こんな事も解らなかったなんて……


他の人からの気遣いも感じられなかったなんて……





彼女は……





私に()()()()()()()ように、予備がある素振(そぶ)りをしてくれてたんだ……



強いなぁ…… 浅田さんは……



私なんかとは大違いだよ



彼女は美しい胸を黒いブラで覆い…… そしてホックを掛けた



「コレでオーケー♪」



そう言うと体操着を身に付けた



そして私を見て、ニコリと笑う



私も()()()()()笑った






もっと強くなりたい



この心を、もっともっと、強く



彼女と居ると、それが解るかも知れない



そう思った時だった



不意に彼女が声を掛ける



「咲子さん、明日暇ある? 新しいブラはホントに欲しかったの♪ ショップ廻りしない?」


「ん? 明日? うん、暇ならあると思うけど、夕方から?」


「んーん! 昼頃とか…… あ! 時間あるなら、お昼は一緒に食べたいね♪ 午前中の…… 10時とか?」



私は首を傾げる



「明日は平日よ?」



そう言った私に、彼女は目をまん丸に見開いて硬直した直後、大笑いした



なぜ笑われた!?



「プクク…… 咲子さん…… 明日は創立記念日で休みよ!? 来るつもりだった? 学校に!? アハハハッ♪」





は、恥ずかしい……


そうだった、休みだ、明日は……


完全に忘れてた……





顔の火照(ほて)りを感じずにはいられない



「うん、来るつもりだった…… あはは……」


「やっぱ可愛いなぁ…… 咲子さんは! じゃ、明日の10時に待ち合わせしよ!」


「あい! じゃ駅前で待ち合わせしよ♪」





彼女の動きが止まる


驚きの表情だろうか?





「どうしたの? 駅前はダメだった?」



不安になった私は、そう聞いた


ビクッと震え、我に帰った様子の彼女



「あ、ああ…… ゴメンね…… 下の名前で呼んでくれたのかと思って驚いちゃった!」


「ん?」


「今、あい!って返事してくれたでしょ…… 私の名前、浅田(あい)なの♪ フフ」






知らなかった


てか、ホントに人と関わり合うのは面倒だから、名前すら知る気が無いのは当然だ


実際、浅田さんの苗字すら今日まで何となくの、うろ覚えだったのだから……


記憶が当たって良かったくらいの感覚だったのだ、女子更衣室で会った時も……



「な、なんか、ゴメンね!」


「謝る事なんて無いよ! 嬉しかったの!」





下の名前で呼んでしまって謝ったんじゃ無い


ホントは今日まで名前すら知らなかった事を謝っていた


そんな思いを知ってか知らずか、彼女は言った



「とりあえずさ…… ココ、もう出ない?」


「そ、そうだね…… 人体模型君も帰れって言ってる……」



ヒイイィィ!! と両手で頭を振る彼女と少し笑い、実験機材室の扉を開ける



そして足を止めた



男子生徒の声が近い


ローラー作戦で2階まで来ているのだろう



「もうブラは取り返したから安心だけど、そろそろココにも来そうだね……」



彼女は苦笑いをして、



「そうだね……」



と、顔を引き攣らせる



そして声を上げた



「あ! 咲子さん! アレ!」



理科室側に足を入れた私達



彼女の指差す先には教卓があり、その上でゲシュが丸まって寝ていた



だが、浅田さんの声でピクッと耳を揺らし、起き上がる



私は、おいでおいでと言いながらゲシュに手を伸ばした



物怖じしていない様に見えるゲシュは無言のまま、私に抱えられるのを待っているようにも見える



だが……



私の抱えようとした両手は、その体を通り抜けた……



やはり、貴方……



淋しそうな表情にも見える顔で、ゲシュは踵を返し、教卓を軽い足取りで降りると理科室入り口に向かう



私はそれを見送った



私の後ろに居た浅田さんは私の前に廻り、「いいの? 行くよ?」と言う



私は、「いいの、ゲシュは自由だから」と答える



「でも……」と言う浅田さんは、「鍵開けてあげなきゃ」と言葉を繋げたが……



次の瞬間



一度こちらを見たゲシュは、そのまま前にある、戸に向かって…… 通り抜けた








浅田さんは固まって居た








通り過ぎたゲシュを見て、微動だにしなかった








解る……


それは、つい先程、私も経験した事だから


ただ、私と彼女の違うことが一点あるとすれば……



それは、()()()()()()()()()()()()()



人の理解を超えた力は存在すると、()っている事だ



だから彼女に、先に伝えなかった



アノ猫が名前の通りゲシュペンスト、つまり【幽霊】かも知れない事を



そして恐かった



私はゲシュと本質は違って居ても、同じ(たぐい)の、理解出来ない……



人とは呼べない……



力を持って居るという事が、だ



嫌われるのが、恐かった



だが、それは……



その考えは、すぐに否定された



「咲子さん…… 見た? 今、あの子、猫ちゃん? ゲシュちゃん? 通り抜けたよね? 扉を……」



私は顔を背け、目を(つぶ)



そして、「うん……」



と答えた



彼女はクルリと私に向き直り、私の両肩を強く鷲づかみして大きく体を揺さぶる



「スゴくない!? てか何!? マジ、スゴくない!? ゲシュ…… ゲシュペンスト! 幽霊猫ちゃん!! ホンモノだぁ!! チョー感動!!!! カッコイー♪♪ あの子欲しー!! マジ、チョー欲しー!!!」





意外だった





私は驚き、目を丸くしてしまって居ると、鏡を見なくても解るほど実感していた


浅田さん…… 貴女……


なんだかホッとした


順応性なのか、好奇心なのか……





でも、不可思議がこの世に在ることを解ってくれている


恐怖ではなく、本当の歓喜の表情は驚くほど…… 美しい人だった


興奮冷めやらぬ眼差しで私を見る彼女は言った



「あの子って、確か……」



言いたい事は解る



「うん、高田教授の飼い猫だよ」


「だよねぇ!! 行ってもいーかなぁ!? あの子と遊びに行ってもいーかなぁ!? ヒャーーー!!! テンション上がるーーー!!!」



あまりの興奮に、少し()()私も居た……



「い、いいんじゃ無いかな? 教授に聞いてみよー…… か?」



彼女は目を見開き、「うん! お願い!!」



と、即座に答える



「う、うん…… 聞いておくね…… と、とりあえず理科室出よう?」



そう私は問い掛けた

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