24話 暴動
ブラ争奪戦の幕が切って落とされた
男子生徒が相手じゃ走るのも限界が来る!!
それに廊下に湧いて出れば身動きが取れなくなる!!
飛び降りるしか無い!
私は開けた窓に手を掛け…… 飛んだ!!
体が軽くなる
でも、無情な重力
引き寄せられる…… 大地に
走馬燈というのはコレだろう
凄くスローな体験
だが脳内は実に冷静だった
双眼のルビーを煌めかせる
降り立とうとするのは中庭
私は体を屈め、着地点にある芝生をルビーアイで抜き、私自体に無数に当てた
コレで少しでも速度を落とすしかない!!
ズダーーーン!!!!
ズザザザザーーーー…………!!!
中庭に降り立ち、思いの外滑ってしまった事に、いささかの焦りはあったが予定以上に上々だ!!
足にも体にも問題は無い!
私の制服前面が草まみれになった以外は…… ね……
いや、そんな些細な事はどうでも良い!!
草を払って後ろを見る
一階3年教室、その廊下の窓が……
開いていない!!!
3年1組側から……
20組に至るまで見渡すが……
開いて無い!!!
くぅーー!
何度も何度も…… 胡桃ママ!! ゴメンね!
心で謝る
今は急を要する!
私は右手で顔を覆った
その指の隙間から見える窓の鍵に向かって願う…… 開け…… と
ツツツツツ……
窓の鍵が静かに動き出し、開いた
思いっきり戸を開き1階に飛び入る
見上げると3年3組のプレート
3年5組はこっちか!
踵を返し、走った……
いや、違う…… その足を止めた……
何コレ……!?
あり得ないでしょ…… コレ……
二階から降り、一階を走り抜けようとした考え自体は間違いでは無いハズ……
予定外なのは……
ほとんどの3年生が既に廊下に出てしまっているという事!!!
何て事だ……
コレじゃ進めない!!
(あっちらしーぞ!)
(急げ! 他の奴に捕られる前に!)
くだらない叫びが耳障りだ
(浅田先輩のブラ、黒だってよ!!)
ちょ…… 待って……
今の誰だ?
先輩って言ったのか?
マジ嘘でしょ!?
1年男子も参加とかあり得なくない!!!??
それって全校男子がブラ争奪戦してんの!?
浅田さん…… 貴女…… 隠れファン多すぎ……
あまり人に興味が無いから気にしてなかったけど……
よく考えてみたら美人かも!!
甘かった……
そこからして、そもそも間違いだったなんて……
この状況……
いや、待って?
進む方向が一緒だから進めないだけじゃない……?
そっか!
ソコまで考えて無かった!
大誤算だ!!
相手は猫なんだから足元位はすり抜けるよね!!
それに知らない人から恐い形相で追いかけられたら逃げるのは当然!
ブラを落とさないのを願って……
逆方向から行く!!!!
この学校はロの字
ある意味、挟み撃ちに出来るハズ!
知らない男にブラ捕られて愛で回す何て事考えたら…… 私なら生きていけない!!
浅田さん! 待ってて! 取り返してあげるから!!
後ろを振り向く
人は…… まばらだ!!
走れる!!
その時、目の前に先生がやって来た
私は先生に掴み掛かる!
「先生! この人達を止めて! この暴動を校内アナウンスで止めて! 早く!」
私のあまりの剣幕に驚いた様子の先生
「咲子か! なんだ? この暴徒化した生徒は? 男だけみたいだが?」
説明するのも面倒だ!
この緊急時にまったく!!!
「浅田さんのブラを猫が持ってっちゃって、勝手にブラ採り争奪戦してんの! 早く校内アナウンスで鎮静して!!」
「浅田のブラ!?」
「そう! 早く止めて!!」
「解った! 先生が取り返すから待ってろ!」
「いや、校内アナウンスで呼びかけてってば!!」
「咲子、大丈夫だ! ちゃんと取り返すから!」
「そうじゃなくて! あ! ちょ!! 先生! そっちじゃ…… そっち放送室じゃ無いって!」
「邪魔だ、どけ」と言いながら男子生徒を掻き分けてドンドン進む先生……
ダメだ……
あの人…… 頭逝っちゃってる……
あてにならない…… 離れ際のヨダレをすすりながら満面の笑顔が…… 残酷なまでに、先生すら敵に廻った事を証明した……
先ほど侵入した一階窓から寂しい風が私の髪を撫でる
先生含めた全男子生徒が悪魔の表情で目指すのは…… 浅田さんのブラ……
なんだこの地獄絵図は……
いやいや私!
しっかりしろ!!
気を強く持て!!!
取りあえず、反対側から廻ろう!!
聞こえてくる怒号を聞けば、ゲシュはまだ一階を逃げているよーだ
取りあえず…… ダッシュだ!!
その時不意に肩に手が置かれた
驚いてその手の先を見る
浅田さんだった
大きく肩を揺らして息を切らす
その姿は体操着だった
多分動き易さではなく、さっき言ってた授業の為と、ジャージ姿の方がブラウスよりも透けないからだろう
いや、この予想は外れだ……
予備のブラがあるって言ってたものね
「ハァハァ…… こ、コレ…… ハァハァ…… ケホッケホッ…… 何?」
暴動の事を言って居るのかな?
「あ、浅田さんのブラを手に入れるために暴動起きたみたい……」
私は苦笑いを隠せない
「ハァハァ…… ぼ、暴動!? ゲホッゲホッ…… 私のブラで!? ドン引きなんですけど…… ハァハァ……」
浅田さんの顔は確かにキレイだった
改めてよく見ると、かなりの美人
そして何故か、大人の女性に見える艶っぽさもあった
その顔が無残なまでに引き攣っている……
ですよねーー…… マジドン引きするよねぇーー……
「うん…… ドン引きよね…… だから早く手に入れなきゃ!!」
私は彼女にガッツポーズを見せる
その姿を見た浅田さんもフフフと笑い、息を整えながら同じポーズをした
「そーね! 取り返さなきゃ!!」
私達は笑顔で頷き合った




