22話 始まりは捜索
少し話を戻そう
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泉と離れて1年が立った
そろそろ慣れもしたが、晴れ間はさしても、まだ少し肌寒い朝の9時
澄んだ景色……
上着を羽織り、一人で登校しているとやはり少し、物悲しさを感じる
私、【咲子】も近場の大学である東大に入学した
東大といっても東京大学では無い
東今日大学という
この大学は、以前両親達が通っていた高校だったらしい事を入学した時に聞いた
大火事があったとかで廃校になっていたのだけど、私立校として新しい理事長が立ち上げたとか何とか……
そんなニュースを見た気もする
その大学は生物学に秀でた学校で、私の目を研究するにはもってこいの場所だった
あまり人とは構わない様にしている事もあり、友達と呼べる友達は居ない
だからこそ研究にも精が出る
強がりかも知れないけどね……
不意に私は声を掛けられた
「咲子さん! 教授が呼んでるよ!」
「ありがとう♪」
誰だったろう?
覚えようともしないから覚えられない
私は興味を持ったもの以外は覚えるつもりも無い
確か隣のクラスの浅田さん?
だっけかな?
まあ、そんな事はどうでも良い
教授が呼んでる
幾人も居る教授の中で、私を呼ぶのは生物学研究室長の高田教授しか居ないだろう
私は生物学研究室に足を運んだ
ガラガラと音が鳴る
私は生物学研究室の戸を開いた
「失礼しまーす!」
そう言うと、こちらに向き直った男性が居た
キィキィキィ……
そう足元から音を立てて私に寄る男性
男性とはいってもお爺さんだ
キィキィ……… キ…
体を運ぶ車椅子を止め、私を少し見上げる男性
この人が生物学研究室長の高田教授
いつもクールな人だった
そしていつも厚着をしている
そのせいで小太りにも見えてしまう
でも、ガッチリとした顔立ちは、ボクサーの様でもあった
その顔立ちがよりクールさを増してしまう
「やぁ、咲子君 早かったね」
「いえ…… 何か御用とか?」
「ふむ、少々頼みたい事があってね」
私は少し首を傾げ、
「はあ……」
そう答えた
彼は少し困った表情をしながら口を開く
「実はゲシュがまた逃げてしまってね…… 捕まえてくれないかな?」
「またですか…… ホント嫌われてますね……」
ゲシュ、フルネームは【ゲシュペンスト】
高田教授の飼っている猫だ
ゲシュペンストの意味は【幽霊】……
なぜそんな名前にしたのか以前聞いたら、昔、友人から預かった猫で、よくよく居なくなるからその名前になったらしいと彼は答えた
そしてまた今も居なくなっている…… 確かに間違いの無い名前だろう……
そして、教授ももはや身よりは無く、自分と同じ境遇で世界から突き放された同朋の様な物だから、この名前を気に入っていると言っていた
意味は解らなかったが、「そうなんですね」と私は答えたのを覚えている
「で、どの辺か検討つきますか?」
「無いね」
「……ですよね」
まあ、いつもの事だ
クール過ぎて冷たくあしらわれて居る気もするが、気にしてもしようが無い
私は生物学研究室を後にした
さて、どこから探したものか……
キョロキョロと見渡す
ゲシュが居る気配など微塵も無い
この大学はホント広い……
参ったねコレは……
さい先の悪い事だ
すでに心が折れそうな気分
そんな時だった
「キャーーーー!!!」
悲鳴が聞こえた!
何があった?!
私は悲鳴の聞こえた方向に走った
廊下を走ってはダメ!なんて子供の躾みたいな事を守れはしない
何かが起きているのは確かなのだ
ダッシュだ!!
方向的には……
こっちのハズ!!
声が聞こえたのはこの部屋か!?
扉の上には【女子更衣室】と書いてある
痴漢でも侵入したのだろうか!?
取り押さえなければ!!
ガラガラガラガラ!!!
戸を思いっきり開ける
タオルで前を隠した女生徒が目を見開き、私を見た
「さ、咲子さん!?」
この子はさっきの……
えーと…… 浅田さん?
「浅田さん!? 今の悲鳴は!?」
「あ…… うん…… 私のブラが……」
「痴漢ね!? どっち!?」
「違うの!」
「ん???」
はて?
ブラ泥棒でしょ?
何を言ってるの?
だから友達なんて面倒なのよ……
「ブラでしょ? 盗まれたんでしょ? 痴漢はどっち?!」
私は女子更衣室内をくまなく見渡す
どこに行った!?
卑劣な輩め!
絶対捕まえてやる!!
「だから違うんだってば!」
浅田さんは赤い顔で私に向けて叫ぶ
「だから、何が!?」
「ブラを被って持ってかれたの!!」
な、なんという事なの!?
か、被る、だと!?
そこまで墜ちた輩だったとは……
奴のレベルは高そうだ!!
ソコまで痴漢アビリティが高くては、いかに冷静な私でも姿を見た瞬間にドン引きフリーズしてしまうかも知れない!
マズイぞ私……
冷静に……
冷静に対処しなければ……
「解ったよ、浅田さん! 捕まえて来るから待ってて! こんのぉーー! ブラ泥がーーー!!!」
自分を奮い立たせる!!
私は天井に向かって吠えた
勢い付けて更衣室を出ようとする
意気込んで行かないと奴には勝てない!
今ですら、醜態さらした輩を想像しただけで鳥肌だ!
ガラガラ!!!!
バーーーーーン!!!!
更衣室の戸を思いっきり開けた
その時だ
不意に腕を掴まれた
振り向いた先には浅田さんが居る
止められる理由は無い
貴女のブラを取り返してあげる!!!
「咲子さん! 待って!! だからまず話聞いて!!」
「話なら聞いてるよ! ブラ泥を捕まえてあげるから待ってて!」
「違ーーーーう!!!!」
「え?」
何だろう?
私は勘違いなどしていないはず?
いや、違うと否定されたからにはチョット冷静に聞いてみよう




