14話 最悪で最良の日
0時を回った深夜
私はランニングをしていた
タッタッタッタッタッタッ
舗装された道路を駆ける
人通りは少ない
大きな道には街灯が立ち並ぶ
その他に輝く光は営業している店舗
騒ぎ声が少し聞こえる
時間的にも、お酒を出す店なのだろう
私はそんな物には目をくれずに走っていた
目的は1つ
オフィス街を走る事
そう……
今の目的はランニングだ
タッタッタッタッタッタッ
軽快に走る
タッタッタッタッタッタッ
体を動かすのは気持ちが良い
タッタッタッタッタッタッ
意外と悪く無いわね、このシューズ……
タッタッタッタッタッタッ
古着屋で見つけたから買っちゃった♪
タッタッタッタッタッタッ
そして、このジャージの上下も動きやすい
タッタッタッタッタッタッ
丁度良いから黒のニット帽もゲット♪
タッタッタッタッタッタッ
てか、全身黒い服があってラッキー♪
タッタッタッタッタッタッ
そして……
タッタッタッタッタッタッ…… タッ……
私は足を止めた
そして見上げる
森に樹が生い茂るかのように、ソコにはビルが数多く建つ
その内の1つを、私は見上げていた
一際高いオフィスビル
最上階に灯りが見える
その階の上部、外壁
ソコには煌々と社名が輝いていた
私はソレを睨んだ
イライラするよ、まったく……
絶対許さないからね……
バチッ……
そんなショート音がし、ピカピカと点滅を繰り返す社名
それは【GF】の文字だった
私はゴールド・ファンド社に居た
正面玄関は電気が消えている
ソレを確認し、裏口へ回った
裏口には守衛が居る
守衛室でスタスタと歩き回って居た
私はタイミングを見計らい、ルビーを纏った強靭な筋力で一気に飛び跳ねた
スタッ!!
そんな着地音が鳴ったが、守衛は気が付かないようだった
ホッと胸をなで下ろす
そして、歩みを進めた
曲がり角まで来ては、手鏡を先に通路に出し、防犯カメラを確認する
首を振るタイプの防犯カメラか……
ソレもまた逆向きの瞬間を逃すこと無く死角に入る
そして辿り着いた先は、非常口だった
トレーラー助手席を開けた時と同様に袖を伸ばす
指紋を残さない為の、私なりの工夫だった
手袋を着ければいい?
いや、万一の自体に備えれば、感覚の行き届く素手が最良と考えての行動だった
非常階段への扉、そのドアノブを捻る
直ぐソコに設置されている階段を一気に駆け上がった
思いの外スムーズに最上階の非常階段、その入り口まで辿り着く
非常階段には防犯カメラが付いていなかったからこそのスピード
ふと背後に目を向けた私
見渡しの良い風景が広がる
良い景色だ
だが、黒い仕事で手に入れたかと思うと虫唾が走る
非常口の扉を開ける前に、背負っているリュックサックに手を掛けた
そのファスナーを開いて中身を確認する
数は揃っている
問題は無い
次に携帯電話の確認だ
直ぐに掛けられる状態になっている
そして、もう1つも問題ない
全てが万全だ
後は社長室に向かうだけ
今日は最悪で最良の日だ
今晩を逃すわけにはいかない
最悪だったのは、エリスが危ない目に有った事
最良なのは、その日が今日だったと云う事だ
そう、今晩がくだらない輩を一掃出来る日なのだ
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私は皆と別れ、買い物が済んだ後に電話を掛けていた
それはこのゴールド・ファンド社にだった
「hello♪ ゴールド・ファンド社デス」
「hello♪ 私はケンプリッジ大学のリサ・マクドゥガルといいます! 経済学が専攻でして…… 貴社は経済の最先端の会社なので、ゴードン・フリーマン社長に御指導や諸々を賜りたく、お電話しました♪」
「アラ? 大学生サンネ? デモ、ゴメンナサイ…… フリーマンハ急ナ会議ガ入リマシテ…… 今日、明日ノ夜マデハ予定ガ取レマセン……」
「oh my God…… 解りました! ではまた後日、ご連絡致します♪」
「thanks♪ オ待チシテオリマス」
そして、私は電話を切った
リサ・マクドゥガルか……
私もずいぶんしたたかな女になったものね…… フフフッ……
急な会議……
十中八九、エリスの件だ
後の作業着の男を派遣したのもフリーマン社長自身のハズ
間違い無い……
今晩の会議は長引く……
それに、会議の相手が有難い♪
社長が財を成した方法を知る者が揃うはずだ
だから今晩実行する事に決めた
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さて、参りますか……
私はゆっくりと非常階段のドアノブを捻った




