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ルビーアイ・カタストロフィ  作者: アゲハ
5章 その名はカタストロフィ
102/157

101話 9つの違和感

(ナンニセヨ…… 状態ハ最悪ダナ……)




アーサーが私に(ささや)いた


それに私も答える




(そうね…… 一旦体制を整えましょ……)




私は咲子に向かって叫んだ




「絶対に勝つ!! 私、負けないからね!!!」





その時だ


今までの様な不適な笑みとは違う




()()()()()()()()()を見た





一瞬、私は動けずに居た



優しい咲子が戻ってきた



そんな感覚に陥ったのかも知れない



咲子は言った





「ええ、待ってるわ…… 後は、よろしくね……」





踵を返し、その言葉を背中に受けた私達は走る


背後では悪魔が大声で笑っていた




「何という力だ!! 素晴らしいぞ、咲子君!!!」




そんな声が周囲に響いていた









走った先、直ぐ目の前に大学の昇降口がある


私達は土足のまま校内へと踏み入った


大きな大学


ココならば簡単には追えないと判断したのだ


咲子がもし追ってきたとして、悪魔からは200メートルは離れる事が出来ないのは聞いた


ならば確実に視界へ入れなければ戦闘にならないだろう


見える外より、危険回避の為に室内は有効だ




「ドッチニ!?」




アーサーが問い掛ける




「とりあえず…… コッチ!」




私は返答した


選んだのは西棟


長く走ると階段が見える


ソレを2人で駆け上がった


2階、3階へと一気に登る


登りきった所で私達は足を止める


正面には東棟に向かうと思われる長い長い連絡通路


左には理科室と書いてあるプレートが見えた


多分、特殊教室が並ぶと思われる西棟廊下だろう


今現在ルビーを纏っている私の体に疲れは感じない


だがアーサーは、息切れては居無いものの少し疲れが見える




私達の位置は階下から敵が来れば音で解る




正面や左側廊下から敵が見えれば対処し易いこの場所で一度、腰を下ろした








ふぅ、と息を吐いた時だ



アーサーが()()()()




「ナンナンダヨ…… 咲子……」




その顔は悔しさが滲み出て居る




「アーサー…… 落ち着いて」


「落チ着イテ居ラレルワケ無イダロ!?」




いつも優しく冷静に対処出来るアーサーが私を怒鳴る


そう、それだけの事を見てきた…… してきた……


冷静で無いアーサーを見るのはコレで2度目……


図書館でライと言い争っている時が1度目だ




私は気を取り直して正面に目を向けた




「そうね…… 咲子…… 何を考えているの……」


「考エ? ソンナ事ハ知ラナイ! ドウデモイイ、勝ツシカ無インダ!!」




私は何故か冷静で居られた


私よりも憤怒しているアーサーを見ているからか……


そのせいもあってか、冷静になれた




咲子……




貴方は……




アーサーが不意に私を見る


そして言った




「泉…… ソノ顔…… マサカ咲子ト戦ウ事ヲ躊躇(ちゅうちょ)シテ居ルノカ!?」





どんな顔をしていたのかは解らない



だけど、迷って居たのは否めなかった








疑問……








いや、違和感……?








そう、違和感があった







それも1つでは無い







8個、いや、9個の違和感が……








でも9個目の違和感は多分、解決しない








【あの力を持つ、この刀】という言葉(ワード)








【あの力】とは勿論ラピスラズリの力だろう








だから、ラピスを所持して居ない私達が考えを巡らせた所で解決はしない








だから時間の無い今、2人で話し合えるのは私の8個の疑問であり、違和感なのだ……







「ねぇ、アーサー?」



「ナンダイ……」



「咲子ね…… さっき、【待ってるわ、後は、よろしく】って言ってた」



「ソレガ……?」



「うん、再戦を臨むなら……私が勝ちに戻る事を伝えた時、【待ってるわ】ダケで良くない?」



「ツマリ……?」



「だからね、さっきは何気無(なにげな)しに聞き流したけど、【後は】以降って要らないよね? 【後は、よろしく】って、【後は頼んだ】って事でしょ?」









コレが1個目の違和感だ……








「何カ頼マレタト……?」



「解らないけど…… ただね、違和感が有るのよ…… それに……」



「ソレニ…… ナンダ?」



「ライも()()()()()かも知れない……」





アーサーは目を見開いて私を見た



絶句していた





「アーサーは私に敷地内に入った時、サファイアを掛けてくれた…… そのお陰で、私は右足と左腕の損傷があの程度で済んだ」



「ア、アア……」



「ねぇ、アーサー…… アーサーのサファイアの盾は…… 咲子が放つラピスの銃弾を防げる?」



「イヤ、無理ダロウ…… 泉ノ傷デ解ル……」



「だよね…… 右足は少しずつ前に出したから設置タイプのラピスの範囲に入った時、少し肉を削がれた」



「ウン……」



「左腕は、ソコに元々設置してあったから…… 最初から範囲内…… 一気に()()()()()()()……」



「ソウナル……」








そう








だからだ……








だから、どうしようも無く()()()()()()()()








絶対に有り得ない事が起きたのだから……








起こったんだ








私の身に!








だからアーサーに聞いた








「じゃあさ…… ピストルの弾丸が【顔に直撃】した時は? 何で少しの切り傷で済んだと思う?」





ハッとした表情をアーサーは見せた



そう、それこそが2つ目の違和感



あの直撃が範囲内で無い訳が無い!





「ね? あり得ないでしょ?」



「ソウ…… ダナ……」



「アーサーの盾が無理でも、ライなら? ライのディープ・サファイアなら防げるとしたら?」





アーサーは私の眼を見ながら固まっていた



そしてフッと意識を取り戻したかのような表情を見せた





「ディープ・サファイア…… ドウダロウ……? 可、不可ハ…… 何トモ言エ無イガ……」







そう…… そうなのよ…… アーサー……







私の違和感……







3つ目と4つ目がソコに有った







「アーサー…… もし…… もしよ? ライがディープ・サファイアを掛けてくれたとしたら…… いつだと思う?」



「掛ケラレル…… タイミング…… ソンナ時ハ…… ン? エ!? マサカ……!!?」




私は頷いた




「そうよ…… 貴方が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ! あの時、心配してくれてると思ってた…… それも軽く聞き流してしまった言葉…… 【頭部と心臓は守れ】よ!!」





変な言葉だった



だったらそんな事は言わずに、【無理はするな】……



もしくは、【危なくなったら逃げろ】……



それでも良いハズなんだ……





「ライのディープ・サファイアは、言葉にするだけでも発動する危険が有るって言ってたよね!? だから言葉を封じたって!! だから、あの時にディープ・サファイアの盾を掛けてくれたんだわ! いや、アーサーの盾の上に、ライがディープの盾を()()()()した! だから貫通し無かった! 【強固】に【最硬】を重ねたから!!」



「ライ…… アイツ……」





そう言ったアーサーは、少し、嬉しそうだった





「だからね、もう一つの違和感に辿り着くの」



「モウ1ツノ違和感?」



「そうよ! 私と戦う前に、咲子は聞いた…… ライに聞いた! 【2箇所ね】って…… そしてライは【2箇所だ】って! 多分それが、盾の事! ()()()()()()()()()()()()()()()よ!」



「ソレデ…… 安心シテ直撃サセタノカ!?」



「そうよ! 私がアーサーの盾で守られた、そう咲子に言った時…… 【そうなのね】って笑ってた…… なんで笑われたのか疑問だった…… この考えなら合点がいくじゃない? 勘違いしてるのを笑ったのよ! サファイアの盾では無く、()()()()()()()()()()()()()()()()()私を笑ったの!」



「ソウカ! ナルホド!」



「そして、頭部を狙う予定だったけど、私の動きによっては心臓に当たる事を避けた! 心臓はマズイ、即死だ…… だから、むしろ守らせたのよ! 私があのタイミングで…… コレで、あの戦闘で100%死な無い選択肢が確定した!」



「ソレダ! ダカラ確実二頭部へ撃ッタ訳ダ!」



「そう! そして、まだあるの…… だとしてもね、全力は安心出来ない…… だから終始、若干手を抜いて居た様にも感じる……」





コレが5個目の違和感





「ナゼ!? アノ能力差デカ!? アリ得無イ!!」



「そんな事は無いわ…… だって、本気で殺そうとしてたなら…… 最初から右手はピストル、左手は刀…… 咲子が言っていた究極の戦闘スタイルが出来ていたハズよ!?」



「タ、確カニ……」








そしてコレが6個目の違和感








「まだ違和感は有るの…… アーサー? ライはシルバーチョーカーを着けなかったよね?」



「ウン……」



「彼は奴から渡されたソレを【右手】で受け取った…… 覚えてる?」



「勿論ダ…… エ? ア!!?」



「さすがね♪ 気付いたでしょ? 奴に返した時には【左手】だった様に…… 今なら思うの!」



「ウン、ソウダ! 確カニ【左手】ダ! ソレニ、粗雑二返シタ!」



「そうよ! アレは多分、ダミーを返したのよ! 偽物、レプリカよ! だから落としても()()()()()()()()()()()()()! オリジナルのチョーカーはライが持っているハズ! 咲子と藍を助ける為に、何かしている…… あの時ライは【コレは咲子のと同じ物か】って聞いた、それで今何かしらの対策を練っている…… だから咲子の援護をし無かったんだわ! それに……」



「ソレニ、ナンダ!? 言ッテクレ!」



「うん、言葉を封じていたライの言葉に所々意味があるのなら、チョーカーを受け取った際に【これは壊されるべき代物】って言ってた…… それこそチョーカーを外す為の【何か】をしようとしている証拠よ!」



「待テ、泉…… ライニ…… ソレヲ説明スルノハ簡単ジャ無イゾ? 意思疎通デ何トカ出来ルトハ思エナイガ……」



「いえ、アーサー…… 意思疎通じゃ無い…… ()()()()()()して、()()()()()()()わ」



「イツダ!? 事前ニカ!? シルバーチョーカー、アレハ今日、咲子ガ大学デ付ケタ物ダロ!?」



「事前じゃ無い…… ()()()()()()()よ」



「何ヲ…… 言ッテル!?」



「事実よ…… 私達の目の前で…… 私にも、アーサーにも…… ましてや悪魔野郎にも解らない方法で話した」



「ソンナ事ガ!?」



「ええ…… ()()()()()()でよ! 本来、音で伝える技術のハズ…… でも、彼らは眼で……【まばたき】で伝えられる! あの時、ライが咲子の元に行くまでの見つめ合っていた【無言の時間】によ!」



oh my God(なんて事だ)……」



「だからライは咲子の元に行った…… そしてオリジナルのチョーカーを受け取った…… 私達の元に居るよりも、奴側に付いていれば背中を向けられる…… それは死角で作業出来るからね……」



「ナルホド…… アノ時、ライガ言ッタ【ダ、ソウダ】…… アレニ違和感ガ有ッタ…… ソレガ、ソレカ!?」



「そうね…… 私も思ってたよ…… あの時の【だ、そうだ】は、ただのシルバーチョーカーの説明をもう一度聞かせただけに取れる…… だから私は【自分達は不利《だ、そうだ》】って解釈した……」



「僕モサ……」



「だよね…… アレはライのカモフラージュ…… 私達に注意を向ける事で、その瞬間に【左手でレプリカを作った】…… そして、その【左手】で返す【違和感を消す為】に奴に即座に、粗雑に放り投げた…… いつまでも【何故か左手で持つ違和感】を消す為にね♪」



「何テ事ダ…… 2人カラ巧ク(だま)サレタナ…… ハハハ……」





私は頷いた



そして、確証を持った





「だからね、アーサー…… 総合的にみて、2人は敵じゃ無い…… 多分、何かを必死で【遂行】している…… 近距離戦になった時にソレを話さ無いのは……」



「ソウダナ、咲子ガ話サ無カッタノハ…… 例ノ、シルバーチョーカー…… 多分、細工ガ有ル…… 集音マイク…… ソウイッタ物デ伝エラレ無カッタンダ!」



「アーサー、それよ! だから咲子はヒソヒソと小声で伝えるんじゃ無く、堂々と会話の中に説明を加えた…… そんな事、私が敵ならズラズラと説明はしない!」



「説明ッテ!?」








コレが7つ目の違和感







「力を…… 強さの種を明かすような…… 本来隠すハズの【ラピスの説明】…… ソレを私が《なぜ、そんな力を?》と、更に聞いたときに一瞬、目を悪魔に逸らしたのは奴に聞かれたくなかったから! そして、私を本当に倒したければ簡単に済むハズの【共鳴の仕方】と【共鳴解除後のバトル】…… 私に共鳴が及ばない事を知った時の【誤算と取れた表情】…… そして……」



「ソシテ……?」



「咲子は言ったわ…… 【その従順の液体で仲間を増やす】って…… アレはこのタイミングを待ってたのよ! 私達がこの大学に入るタイミングを! この大学の何処かに【残りの液体】が有る! ソレを処分させる為に刀で遮った! 私達が向かう先は悪魔じゃ無い! 【背後に有る大学】って…… 私達を斬りもせずに足止めしたのよ! 私達がこの【答え】に行き着く可能性に賭けたの!!」



「ソレガ答エカ!」



「うん、それこそが咲子の【後は、よろしく】…… つまり【後は頼んだ】って事だったのよ!」



「自分デハ出来無イ事ダカラカ…… 悪魔カラ離レラレ無イシ…… デモ待テ? ソレデモ…… アンナニ泉ヲ痛メ付ケル必要ガ?」



「言ったでしょ!? 【何かを必死で遂行している】って! 多分何通りかのプランの中で、今は必死に悪魔の奴隷を演じてるのよ! 【私に敵対する咲子】を! そして憶測だけど、ライから事前に【サファイアの修復】を受けた事が有ったのかも? だからアーサーが【私の傷を修復】出来る事が計算済みだったんだわ!」



「何カラ何マデ…… 大シタ女ダヨ、マッタク…… 本当二神カヨ、咲子ハ……? O.K.!! ヨシ、行コウ泉!! 【残リノ液体】探スゾ!」



「ええ!! 行きましょ!」





ん?



何通りかの…… プラン……



プラン……



D……



ライが言ってた【D、理解した】……



プラン…… D!!



私の言葉の中に8個目が有った



8個目の違和感の糸口が!






「待って、アーサー…… 最後にもう一つ違和感!」



「次ハ何ダ!?」



「プランD…… って、解る?」






アーサーの表情が凍った



そして、目を背けた






「解ラナイ……」






嘘だ……






「顔、固まってるよ? ホントの事言って?」






アーサーは私の眼を見て顔を歪ませていた






「本当二知ラナイ…… Dハ知ラナイ……」






「プランD【は】知らないのね? ならA・B・Cは?」



「知ラナイ…… 知ッテイルノハ、Bダケダ」



「そのプランBだけでも教えて!」






アーサーは私の眼を見ながら動かなかった



表情は硬く、迷っている様だった



話せない理由なんてドコに有るのか……



知識が大切な局面なのに……



沈黙は数秒だったのかも知れない



だが、とても長く感じたソノ時間の後、アーサーは言った






「ゴメン…… 今ハ…… 無理ダ」



「な、なんで!? 意思疎通が必要なのよ!?」



「泉…… 咲子ヲ信ジル事二決メタンダヨナ?」



「そ、そうよ……」



「ジャア、最後マデ信ジヨウ…… タイミング…… ラシイカラ…… 今ハ、言エ無イ……」






私はそれ以上、聞けなかった



親からも幾度となく言われた【タイミング】



それが今となって嫌という程に感じていた



咲子の行動は、正に全てが【タイミング】そのものだったから……



今まで話した違和感の全てが【タイミング】



最初からこの大学に私を向かわせない事も【タイミング】



生半可なラピスを使わない…… 圧倒的な力を悪魔野郎に見せつけるのも【タイミング】なのだろう



だからアーサーが言っていた【私を痛め付ける必要】が有った



私達の力が拮抗していれば、こんなに追っ手が遅いわけが無い



私達が大学に入った時、すぐさま奴隷達を向かわせたハズだ…… ココに!



咲子の圧倒的な強さがあって出来た【悪魔野郎の気の緩み】……



咲子さえ居れば、私はいつでも殺せるという【安心感】…… そして絶対的な恐怖対象から除外されたからだ!






「解ったわ、アーサー…… 貴方の判断を信じる! 今度こそ行きましょ、【残りの液体】を見付けに!」

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