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目の前の光景に頭の中に浮かぶのは言い訳や懺悔の言葉ばかり。


危なっかしい足取りで一歩、また一歩と歩み寄る姿に零れだす涙は後悔か、歓喜か。


「ユイ、ごめん。」

「おかえり、みんな心配してたよ。ほら、私はケセラセラのお陰で夢の中だったけどお別れも聞けたし...普段からハジメの無茶にも慣れてるから全然平気。」


ようやく手の届く場所に居るユイをそっと抱きしめる。


そして気がついた。


ボロボロになった手に

痩せ細った身体に

身体に残る小さな傷痕に

少しだけ色を失った瞳に


「どれだけ感謝しても足りない位にユイには迷惑ばっかり掛けちゃってるね。」


ようやく回りだした舌が紡ぐのは感謝の言葉ばかり。


餓鬼に堕ちて、心だけは守ろうとした己の防衛本能が鬼の呪に侵されぬ様、自身の最も深く堅牢な場所へと心を仕舞い込んだ。


暗く、深い闇の底。


眠りに就いて、ただ終わりを待っていた。


暖かい記憶が少しずつ、少しずつ解けては消え、自分の中から失われるのを感じながら目覚めを待っていた。


「思い出す記憶の中にはいつも君がいた、いつも側に居てくれたんだ。」


暗い闇の底で、まるで子守唄の様に響く魔石を噛み砕く咀嚼の音がジリジリと自我を削る中、蛍火よりも、もっと儚く淡い灯りが心を支えてくれた。


祈る様に握り締めていたケセラセラが放つ光。


自分の魔力は鬼に支配されていた為使えない。

ならば一体なぜ光を放つのか。


自身のケセラセラと対をなすもう一つのケセラセラが送り出した魔力が細く、短く、希薄になりながらも闇の底まで届いていたから。


「君はいつも眩しいくらいに輝いてる。何も持たない俺を照らし、支えてくれる。」


闇の底で眠っていた自分を揺り起こす衝撃。

感じられたのは猿神様の神気とそれに混じったユイの魔力。


闇の中、出口のないはずの世界にもたらされた一本の光。


光に縋る様に辿り、追いかけ、掴み取れば、鮮烈。


大事な人が傷付き、倒れても倒れても立ち上がる姿。


指一本動かせない状況に心が叫んだ。


何故なんだ、と。


どうして俺なんかの為に死ぬほどの痛みを堪え立ち上がるのか、と。


なんで、どうして、何故なんだ。


なんで立ち上がるんだ。

もうやめてくれ。


ただ見ているだけの地獄の様な時間に決着を付けてくれたのは輝きを失った旧友、カケル。


「みんながボロボロになって戦ってるのに俺は見てるだけだった。情けないよな、みんなを助ける為に飛び出したのに結局助けられてばっかで...こんな俺でも隣にいていいかな?」


短くも長いハジメの懺悔の言葉。

それに終止符を打ったのはユイの平手打ち。


パシンッ、と心地良く響いた音にギルドの面々はにこやかに笑みを浮かべながら二人を待つ。


「おかえり、って言ったじゃない。確かにみんなボロボロで、私なんてカケル達と仲違いもしちゃった挙句、リュウ引き連れて飛び出して最後はカケルに助けられて大恥かいたわよ。それもこれも全部ハジメが一人で飛び出しちゃうからで、つまりはこれから暫くの間ハジメは皆んなにペコペコしながら雑用とか開発とか援護とか色々しなくちゃダメなの。だから、ハジメはこれからずっと私の隣に居てくれなきゃダメなの。わかった!?」


怒涛の剣幕で紡がれたユイの言葉に圧倒されながらも、帰る場所がある事、呆れられはしても見捨てられてない事をしみじみと感じながら、自分が居なくなった時とは少しだけ変わったギルドにハジメは帰るのだ。


「ユイ、君が居てくれて良かった。これからはずっと隣に居るから。」

「もう勝手にどっかに行っちゃ駄目だからね。」


出現したクリスタルの近くでニヤニヤと笑うカケルの元へ、ユイを支えながら二人で歩いて行く。


「よっ、色男っ!こんな薄暗いダンジョンで一世一代のプロポーズたぁなかなかやるねっ!ところで結果はどうなんで?」


深い闇を覗かせながらも、以前と変わらぬカケルの悪童っぷりに苦笑いを零しながら、肩を浮かせて、さぁ、と返せば隣でユイが顔を赤くし早足に。


「わわっ、急に早く歩くと危ないよっ!?」

「あれってプロポーズだったの!?いやいや、だって、えー?」


完全に一人の世界に飛び込んだユイをどうにか支えながら、わいわいとした雰囲気で無事に35階層の攻略は完了したのだった。


ーーーーーーーーーー


「さて、賭けは妾の勝ちの様じゃな。まさか倒し切るとまでは予測出来んかったが故、まさか唯一の眷族とは、悪い事をしたのぅ。」


にやけ顔で鬼神を揶揄う猿神は、楽しそうに足元で控える小猿の頭を撫で回す。


「ふんっ、眷族などまた適当に探すから構わんさ。此度の戦いで人の可能性を知った。アレの考えは未だに読めんが、あと三年だったか。どうなることやら...。」


隣で喧しく吠える猿神を碌に相手にもせず、なにかを考える鬼神は猿神の額を小突き、たたらを踏ませた後、煙の様に姿を消したのだった。


最後に木霊した猿神の怒りの声を聞いたのは、共として一緒にいた小猿だけだった。

どうも源助です。


まずは拙い文章をここまで読んでくださった読者の方々に精一杯の感謝の念を送りたいと思い、画面越しで云々唸っております。


これで鬼の呪編がひと段落しました。

改めて読み返すと随分と駆け足に進めてしまい、乱筆乱文及び読解力を試す様な文章になったな、と反省点ばかりです。


ここからは全世界を蝕むスタンピードをどうにかしよう、そういえばアリスは元気かな?編となります。


これからもニートのダンジョン攻略記を宜しくお願いします。



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