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「よぅ、随分と寝坊したみたいだけど夢見はどうだった?」
誰も彼もが魔力切れでダルそうな表情を浮かべ、リュウに至っては怪我の治癒もそこそこな状態の為、未だ起き上がれない。
そんな中、古い友人を揶揄う様に声を掛けたカケルが己の雷で焦げた拳を握りしめ、ようやく目を覚ましたハジメを殴り付ける。
「あの時、もし俺が残っていたらなんて言う、たらればの話をするつもりはねぇ。ただ、お前の自己犠牲の精神に振り回された結果がこの状況だ、今の痛みをしっかり噛み締めとけっ!」
未だ虚ろげな表情のハジメだが、殴りつけられた頬をそっと撫で、少しずつ表情を、感覚を、心を取り戻す。
「...言い訳も、思い付か、ないよ。」
「あたりめぇだバカ。」
絞り出す様にして紡がれた言葉にギルドの面々は、ようやく取り戻したのだと実感し涙する。
「おかえりなさい。」
魔力切れで昏睡してもおかしくない程に疲弊しているはずのユイが、フラフラと危なげな足取りでハジメへと駆け寄れば、辿り着く寸前で転びそうになる所をメグに支えられる。
「...頑張った甲斐があったね。あのバカはしばらくは扱き使う予定だから今のうちに甘えておいで。」
「メグっ、ありがとぉ。」
ツカツカ、と歩み寄る二人に合わせる顔は無いとばかりに俯向くハジメに平手打ち一発。
「...これで私の分はチャラにしたげる。」
なんともクールに決めたメグは、そのまま踵を返してカケルの元へと戻るのを見遣れば、再び受けた衝撃に仰け反るハジメ。
何事かと振り向けば原形も分からなくなる程にひしゃげた大盾を松葉杖がわりにしているリュウとそれを支えるタモツの姿が。
「俺とタモツの分も今のでチャラだ。」
「二人とも、ごめん。ありがとう。」
これほどまでにぼろぼろになった。
全てを賭す覚悟で戦いに挑んだ。
何度も死ぬ覚悟をした。
それでも届かなかった己の手。
ようやく届いた。
言葉にならぬ熱い想いが込み上げて来るが、己以上にその想いを抱いていた奴を知っている。
己以上に全てを賭した奴がいるのだ。
この瞬間の為だけに。
「ユイ、あとは任せたぞ。」
誰よりも強く在ろうと誓った男は、今も拳を握る。
二度と大切と思えるナニかを奪われぬ様、己の中に滾るチカラの底に眠る限界を目指して。
「強くなりてぇな。いや、強く在らなきゃな。」
ポツリと呟いた言葉に静かに頷く隣の男も、リュウと同様にチカラを欲していた。
「俺は盾だ。どれだけ無様を晒そうと次は守ってみせるさ。」
中央に出現したクリスタルによたよたとした足取りで向かいながら、二人は誓う。
「「強くなる。」」




