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宙を駆け上がるカケルと宙で迎え撃つ大鬼。
体勢はカケルに圧倒的なアドバンテージがあるが、3メートルを越える巨躯を持つ大鬼も存分に重力によるアシストを受けて勢いは十分。
「うぉおおおおぉぉお!!」
闇を撒き散らしながらメグの作り出した足場を使い、まるで見えない螺旋階段を駆け上がるカケルは側から見れば雷を纏った黒い竜巻。
それを宙にて迎え撃つ赤き大鬼もまた、この戦いにおいて最大規模の魔力解放でとっておきを放つ。
「百鬼夜行。」
ポツリと呟かれたその技名?がキーとなり、膨大な魔力を糧に異様な数の妖が空を埋め尽くす。
「捩じ伏せるっ!」
「押し潰れろっ!」
-衝突。
蠢く闇に触れた端から削り取られ、竜巻に巻き込まれた妖達が次々と闇に呑み込まれていくなか、妖を足場がわりに大鬼がカケルへと迫る。
周囲に侍らせた妖達を盾に闇から逃れた大鬼が黒い竜巻の中心へと向かえば、身を焦がす程の雷が大鬼を迎え撃つ。
「鬱陶しいわぁぁあああ!!」
大鬼の怒声と共に爆発にも似た暴力的な魔力が吹き荒れ、黒い竜巻が徐々に霧散していく。
が、その中心にカケルは既に居ない。
妖を足場がわりにしたのは大鬼だけでは無い。
カケルもまたメグの足場と妖達を足場に上へ、上へと駆け上がっていたのだ。
闇色の聖剣を構えたカケルを中心に闇が集う。
それはまるで暗雲の様にダンジョンの空を埋め尽くし、時折走る雷が暗雲が孕む危険を知らせてくる。
「これで終いにしようや。“雷霆”」
振り下ろされた聖剣に導かれる様に黒い雷が大鬼に襲い掛かる。
それはまるで生き物の様にうねり、まるで大鬼の身体を喰い千切るかの様に雷が落ちる度に大鬼は身体を失っていく。
絶叫にも似た声を上げる大鬼に一切の油断も見せず、自身の魔力が尽きるまで、闇に溜め込んで来たモンスターの亡骸をエネルギーに変換しながら大鬼が朽ち果てるまで雷は止まない。
時間にして10分。
流石に魔力が底を尽き、暗雲は晴れ、ダンジョンが生み出した擬似太陽が少しだけ顔を出す。
魔力切れでダルそうにしながらも、地上に降り立ったカケルの前にあるのは四肢を焦がされ、身体の半分以上を雷に喰い千切られた大鬼の姿。
既に自力で動く事もままならない程に疲弊した大鬼相手に、一切の油断を見せないカケルが聖剣を構える。
「...見事だ。俺が逝けば刻んだ呪も自然と消えるだろう。当然、餓鬼に堕ちた小僧もまた同様。」
「まだ話せるとか、どんだけタフなんだよ。」
大鬼にとどめを刺すべく、聖剣にいくつかの魔石を”食わせ“てカケルは踏み出す。
「餓鬼どころか原罪にも劣らぬ暴食の性質を持つ闇か、なるほど勝てんわけよ。流石にソレに喰われるのは敵わん、まだ餓鬼の方がマシよ。」
身体の端から粒子に変わり始めた大鬼が残した言葉通り、まるでカケルの纏う闇を避ける様に、逃げ惑う様にして粒子が舞う。
「地獄の苦しみには慣れてるだろ?大人しく喰われてろよ。」
闇を広げて大鬼を喰らおうとするカケルから逃げた大鬼から洩れ出した金色の粒子は、未だ蹲り意識を失くしたままのハジメに吸収されていく。
「...実に愉快な戦いだった。」
「おいこら、この後に及んで舐めた事してんじゃねぇぞ!?」
焦るカケルを尻目に大鬼の最後は平静である。
「なに、悪い様にはせんよ。流石にこの状態では呪も組めんしな。心配なら猿神にでも問え。」
見事に闇から逃げ切った大鬼の魂はハジメに吸収され、ハジメの負っていた傷を癒す。
鬼の姿が徐々に霧散していき、久々に人に戻ったハジメを見たカケルは、仲間達に長い戦いの終わりを告げたのだった。
「バカが帰って来たぞ、と。」




