6
カケルが振るう腕に追随する形で、蠢く闇が津波の様に大鬼に襲い掛かる。
大鬼は実力を見極める為か、それなりのチカラが込められた拳とカケルの闇が衝突する。
結果はカケルの放った闇が優勢。
拳の先からジリジリと削り取られる大鬼が流石にマズイと感じ取ったのか、全身に魔力を巡らせて全力の後退。
「貴様らは、やはり面白い。」
未だに纏わり付く闇を膨大な魔力で吹き飛ばし、実に楽しげな表情で口元を弛ませる。
上空に突如出現した巨大な地蔵を大きく躱しながら、僅かな隙間から襲い掛かる強烈な矢を紙一重で躱す大鬼。
そこを畳み掛ける様に全てを呑み込む程の大きくうねる闇が大鬼に迫る。
「随分と濃い闇だ、どれだけの怨念を呑み込んで来たのか...だが、まだ温い!!」
漲る魔力が両腕に集約し、これまでの戦いで一番の輝きを放つ。
振るわれた拳から放たれたのは閃光の様な一撃。
蠢く闇の中、その勢いを落とす事なく闇を突き抜けカケルへと迫る。
「ったく、相変わらずの化け物っぷりだなオイ。」
そう言いつつ、魔力を滾らせ黒い雷を纏うカケルが急速に加速し、闇色に染まった聖剣を携え大鬼へと駆け出す。
頭上スレスレを通過して行く閃光と纏う雷に身を焦がしながら、闇を潜り抜けた先で一閃。
パキリッ、と何かが欠ける音に合わせて、両者は反発し合う磁石の様に距離を取る。
「あーあ、イケると思ったんだけどな。」
悪巧みが失敗した子供の様に無邪気な表情で大鬼に語り掛けるカケルの聖剣に一切の刃毀れは無い。
「...貴様っ、巫山戯た真似をっ!!」
先程の交錯で欠けたのは大鬼の額に生えた二本角のうちの一本。
鬼の象徴とも言える部位を傷付けられた大鬼は戦いを楽しむ事も忘れ、魔力を漲らせただただ蹂躙する為だけの戦闘形態へと変化する。
欠けた角から洩れ出る魔力すら燐光のように宙を舞い、先程よりも更に早く、速く、疾く。
加速度的に上昇していく大鬼のスピードが捉えきれなくなったタイミングで空間に響く破砕音。
次いで轟く怒声にも似た叫びと衝撃。
「...すまねぇ、飛び出した挙句に救われてちゃ格好つかねぇよな。あとは任せるわ。」
砕け散ったタクトを握るユイと右腕のひしゃげたリュウが最大にして最高のチャンスを生み出す。
ユイの魔道具であるタクトで一瞬ではあるが大鬼を拘束し、リュウが右腕と引き換えに放った一撃は大鬼を上空へと打ち上げたのだ。
「無茶するねぇ。奇しくもかつての階層戦と同じ様な展開か...メグ、足場頼むわ。」
「...ん、好きに走っていいよ。」
一層濃密になった闇と激しさを増した雷に身を焦がされながら、カケルは宙を駆ける。
絶妙なタイミングで構築される足場に一切の疑いも持たず、ただただ真っ直ぐ大鬼へと駆け上がる。
「呑まれて朽ちろ、そして俺の糧となれ。」
「人間如きが舐めるなよっ!!」
誰も届かない上空で長い戦いに終止符が打たれる。




