3
振るわれた拳に一切の恐れを抱くことなく、真っ正面から受けたリュウの心中は驚愕一色だった。
餓鬼の本能に支配され、ひたすらに魔力を溜め込み続け強化されたハジメの一撃よりも更に二歩も三歩も先にある強烈な一撃。
まるで受け流す事も出来ず、唯一出来たのは全力で衝撃をぶつけてダメージを減らす事だけ。
ぼろぼろの身体では碌に踏ん張れずに衝撃そのままに飛んでいくリュウの様は例えるなら壊れたピンボール。
バウン、バウンッ、と地を跳ねながら吹き飛ばされたリュウのフォローに回ろうとしたユイだったが、自らの影を飲み込んだ巨影に本能が警笛を鳴らす。
バチリ、と弾かれた様に即座に回避行動を起こすも、そこにあったのは絶対的なチカラの差。
猿神に襟首を掴まれて乱暴に振り回される形で体制を崩さなければ、ユイも先程のリュウと同じ様に派手に吹き飛ばされる所だった。
「参ったのう、あと一歩じゃったが...良い話と悪い話どちらが聞きたい。」
悩ましそうな表情でユイに問い掛ける猿神から話を聞けば、神格を得た故にチカラを得たが制約もあるのだという。
そのうちの一つに他の神の眷族にチカラを振るえば神同士の戦いが起こり得る、という事。
そして、鬼神といえば闘神の中でも上位に入る程の強さ。
ここで鬼神に出しゃ張られると流石の猿神も分が悪いらしい。
「どうせ戦闘狂の奴の事じゃ、こちらが手を出すのを待っておるのじゃろ。さて、どうするか。」
「...良いっ、話、というっ、のは?」
今なお、嵐の様に襲い掛かる大鬼の殴打を猿神に振り回されながら、どうにか回避出来ているユイが息も絶え絶えに質問を返せば、返って来たのは頼りになる眷属を此処へ呼び付けたとの事。
「そうっ、ですかっ!!状況の打破に、期待してもっ!?」
「不味いの、ちと距離を取る...舌を噛むで口を閉ざしておけ。」
ぶわり、と風を感じたかと思えば、一瞬のうちに吹き飛ばされたリュウの下まで来ている事に驚く間も無く、意識を無くしたリュウを掴み再度の跳躍。
次の瞬間に訪れたのは耳をつんざく程の爆音と閃光、そして先程まで居たであろう一帯が空間ごと吹き飛ぶ様だった。




