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彼は変わってしまった。
振るう剣はかつての輝きを失い、今は全てを飲み込む程の漆黒を宿す。
身に纏う雷は鮮やかな紫電が黒に染まった。
好奇心を宿していたその瞳が写すのは、纏わりつく様に自身に群がる様々な怨念と絶望の未来。
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先行した二人と別れ、割とのんびりとした攻略ペースで後を追うこと二日。
三人は28階層にてイレギュラーと対面していた。
ガチリ、と硬質な物同士がぶつかり合う音が何度も響き、その度に地面を削りながら必死で耐えるタモツの後ろに控えるのはカケルとメグ。
強風が吹き荒れる荒野ではメグの戦力は大幅に下がっており、普段ならばメグが担当する様な敵相手に何も出来ずに近付くモンスターを相手するのすら必死な様子。
カケルはというと、有翼種のモンスターに引き寄せられたモンスターの対応と自在に空を飛び廻る有翼種-ハーピー-を相手に手一杯な状況。
「このままじゃ一生埒が開かん。タモツ、あの大技で攻撃のルートを制限しろ。」
ハーピーが放つ特有の音色に惹かれる様にして集まるモンスターを手にした剣で斬りはらいながら指示を出すも、減らないモンスター達の猛攻に晒されているタモツに大技を放つだけの余裕はない。
返事をする余裕すらないタモツの姿に舌打ちを零し、地を駆けるコボルトを斬り捨て近くにいたメグを抱き寄せる。
「少し魔力を借りるぞ。」
返事も聞かないままにカケルとメグの二人を闇色の魔力が包み込み、そのまま影へと沈んでいく。
ジワリ、と広がり始めた影に飛び込んだコボルトは、影から伸びる無数の腕に引き込まれる様にして影へと沈み込んでいく。
その様子を上空から見ていたハーピーは警戒してか攻撃の手を一度止め、上空で滞空しながら影に沈んで以降一向に姿を見せないカケルが動き出すのを待っている。
「タモツ、雑魚はこっちで引き受ける。お前はあの地蔵で目障りな鳥を叩き落とせ。」
「了解したっ。」
魔力を練り上げ始めたタモツに危機感を覚えたのか、上空から突撃し始めたハーピー達を遮る様にして反り立つ闇の壁。
それを強引に突き破ろうとするハーピーを迎え撃つのは闇から伸びる無数の腕。
衝突。
決着は一瞬だった。
突き破ろうとするハーピーは真っ直ぐに闇の壁に向かって来たが、衝突の瞬間に壁から伸びた無数の腕がハーピーの身体を絡め取りそのまま闇へと引き込む。
もがくハーピーの必死の抵抗も空しく、ズブズブと音を立てて闇へと沈んでいった。
それを見た他のハーピー達は闇の壁を避けてタモツへと迫るが、カケルの稼いだ時間を最大限に活かしたタモツの渾身の一撃が迫るハーピー達を迎え撃つ。
「乾坤っ六地蔵ぉおおおおお!!」
振り下ろされた硬く握られた拳の軌道を大きく辿り降り注ぐ地蔵に次々に押し潰されていくハーピー達。
数体のハーピーは難を逃れたが、反り立つ巨大な地蔵を足場に上空まで駆け上って来たカケルに羽根を斬られて地に落ちていく。
上空という優位な立場を失ったハーピーは次々にトドメを刺され、戦いは終結を迎えたのだった。
「大丈夫か?」
「...ん、問題無い。」
カケルに限界まで魔力を奪われたメグはグッタリとしているが、大きな怪我もなく魔力が回復するまで休憩を取るだけで問題はなさそうである。
前線で敵の攻撃を一身に受けていたタモツも大盾を上手く使い致命傷は避けていた為、小さな傷はいくつもあるが動けない程では無い。
「随分と苦戦させられたな、今日はこの辺りで拠点を建てて休む事にする。タモツ、悪いがもう一踏ん張りしてもらうぞ。」
「了解した。」
思わぬ敵に苦戦を強いられたカケル達だったが、なんとか切り抜けるも消耗が激しく足止めを食らう事となった。
疲れた身体に鞭を打ち、どうにか簡易拠点を築いたカケル達はしばしの休息の後、既に主が倒された30階層に辿り着いたのだった。




