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グルルルッ、とこちらを威嚇する様に身構える狼男の様な風貌のモンスターを睨みつけながらも、どこか余裕のある笑みで対峙する男が、まるで談笑するかのように隣に立つ女に一言二言話しかけている。
「見た目から名付けるならワーウルフってとこかしら、30階層の主にしては随分と貧弱ね。普通に戦えば多少の苦戦はするだけの強さがあるのかもだけど、一匹狼じゃまるで相手にならないわ。」
そう言い放った後で、ギチリ、とナニカが軋む音と共に崩れ落ちるワーウルフを憐れみを込めた瞳で見下すユイの顔に浮かぶのは戸惑い。
いつまで経っても粒子化しないワーウルフを訝しみ、腰に下げてMAGを数発撃ち込むもワーウルフに反応は無い。
「リュウ、何かおかしい。」
「ああ見えてる、流石は狼男ってとこか。もう怪我が塞がり始めてる。」
「急速再生の能力なのかしら?あまり時間が残ってない私達には厄介な相手、って事ね。」
更に数発撃ち込まれた所で、ようやく動き出したワーウルフが起き抜け一瞬でリュウへと飛び掛かるも、くるりと回され地面に叩きつけられた直後に、全身を押し潰さんとばかりの強烈な衝撃がワーウルフへと襲い掛かる。
-ズドンッ
階層に響き渡る程の轟音と衝撃で巻き上げられた荒野の砂埃を振り払う様に、更に一閃。
ブオンッ、と拳が空を切る音でいくらかマシになった砂埃を鬱陶しそうに片手で口を押さえながら空いた手を振るうユイが様子を見に来たが、結果は芳しくはない。
地面に埋もれたワーウルフの四肢は既に再生を終えかけており、まだまだ元気そうにモゾモゾと動いている。
「参ったなこりゃ、普通なら全身バラバラになるくらいにはチカラ込めたんだけどな。」
「全身の筋繊維が魔素で構成されてるから普通とは桁違いな密度なんじゃない?流石にレピィに丸呑みさせちゃお腹壊しそうだし、困ったわね。」
先程の強烈な一撃の代償か、右腕から血を流すリュウの治療のために呼び出したレピィが、リュウの首元へと巻き付きカプリ、と一噛み。
じわじわと腕全体を包む様に淡い光が広がっていき、ワーウルフが元気に動き出す頃には綺麗に完治したリュウの右腕が這い上がろうとするワーウルフの顔面をきっちり捉え、再びそう深くない穴底へと叩き落とす。
「このまま生き埋めで窒息死ってのは安直過ぎるか?」
「おそらく私達の方が先の時間切れで倒れることになるわね。毒も拳も銃弾も駄目なら次は壊れるまで再生させてあげるとしましょうか。」
そう言い終わると同時にタクトを取り出し、ワーウルフが落ちている穴の中へと振りかざすユイの様子を見て、自分がやるべき事を即座に理解したリュウが拳を振るいワーウルフが這い上がれない様に衝撃を黙々とぶつけ続ける。
時間にして10分。
原形が分からない程にぶくぶくに膨れ上がったワーウルフは既に自らの意思で動く事も、再生能力をコントロールすることも出来ず、ただその場でもがくのみ。
少し疲れたとばかりに大きく息を吐くユイに、下がっていろとジェスチャーを送り、自らはワーウルフの元へと歩み寄るリュウは、強敵との闘いを愉しむ様な楽しげなものではなく、淡々と己の仕事をこなすだけの機械の様な冷淡さを浮かべ、纏う雰囲気もまた少し寂しげである。
「お前は決して弱くは無かった、ただ出会うタイミングが少しばかり悪かったな。最後は本気の一撃で終わらせてやる。」
フラリと荒野に吹く風に靡く程に脱力したリュウの身体から発せられる高密度の魔力が、右腕へと集約していきリュウの右腕を蝕みながらも凄まじい輝きを放つ。
-スッッッパァァアアアンッ
異様にしなる腕から放たれた斬撃にも似た衝撃がワーウルフに触れた瞬間に、その暴力的な威力がワーウルフへと襲い掛かる。
既に再生能力を失い、自ら動く事も出来ないワーウルフには、ただその一撃を受け入れるしか出来ず、衝撃が伝わる端から粒子化が始まり、最後には普段よりも高純度の魔石が穴底に一つ残る。
そして階層の中央に現れたクリスタルに触れたのち、先行した二人は一足先に拠点へと戻るのだった。




