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3


-パキリッ


ナニカが壊れる音と共に、ゾクリ、と背筋に走った悪寒に従い、メグの手を引きカケルから距離を取ったタモツの一瞬の判断は間違いではなかった事を視線の先にある異質さを見て確信する。


カケルを中心とした半径1メートル程度が闇に侵食されたかのように黒く染まり、そこにあった残骸も戦利品である魔石も何もかもが消え失せ、残ってものはカケルが生み出したであろう闇のみ。


かつての輝きを失い、禍々しい雰囲気へと変貌した未完成の聖剣を握るカケルが、幽鬼の様な緩慢な動きで距離を取った二人へと視線を向ける。


「コレは扱いが難しいな。二人に怪我が無くて良かった良かった。」


距離をとるのが一瞬でも遅れていればどうなっていたか分からなかったというにも関わらず、ヘラヘラとした態度のカケルに、ついに堪忍袋の尾が切れたとばかりに食って掛かるタモツだったが、悪怯れる事も無い飄々とした態度のカケルには届かない。


「うっし、何となく制御出来る様になったし、とっとと先に進むぞ。二人は周辺警戒と奇襲にだけ気を配ってくれりゃいいから。」


先程の戦いで満身創痍とも取れる程にぼろぼろになった現状を省みる事無く、平然と無茶を言ってのけるカケルに戸惑いを隠せない二人だったが、カケルの表情からは真意を読み取れない。


「なっ、こんな状況で進むつもりかっ!?」

「とりあえず先行した二人に追い付けば怪我はどうにかなるだろ。それにコボルト程度なら俺一人で事足りる、心配は無いさ。」


不安どころか不信感すら抱かせるカケルの発言への返答を迷っていれば、隣にいたメグがカケルへと歩み寄りポツポツと言葉を紡いでいく。


「...側に居るって言った。」

「待つんだメグっ、それ以上は何が起こるか分からない!ソレに触れちゃ駄目だっ!」


一歩、また一歩と闇に迫るメグを必死に止めようとするタモツの叫びも虚しく、止まる気配の無いメグのつま先がカケルを取り巻く闇へと触れる。


「...カケルの道は私の道でもある。」


ズブッっと底無し沼に足を踏み入れた様な異質な感覚を、それでも恐れる事無く突き進む。


一歩進むたびに沈んでいく身体を必死で前へと進め、たった1メートル、そうたった1メートルの距離を詰めただけでメグの半身は闇に埋もれてしまった。


「カケルっ!何をボサッとしてるんだ、さっさと救い出さないかっ!!」

「大丈夫だ心配無い。俺がメグを傷付けるはずないだろう?」


底知れぬ闇を相手に必死で足掻くメグをそっと掬い上げる様に、ふわりと差し伸べた手がメグを救い出し、ようやく安堵したタモツだったが、メグが闇から抜け出す際に見えた怨嗟の念にも似た闇の腕が、抜け出すメグを引き摺り込もうとしていたのを見てしまった。


「メグ、無事か?」

「...ん、問題無い。」


そんな出来事もあり、カケル達から距離を取り後ろを付いて行く形で進み始めたダンジョン攻略は、猿神の加護と新たなチカラによって次々と階層を踏破する事となった。


一因として、先行した二人が25階層を踏破していたというのも理由に挙がるが、それ以上にカケルの生み出した闇が恐ろしい程の強さを誇った事が一番の要因だろう。


迫るモンスターを引き摺り込む様にして伸びる闇の腕によって、次々とモンスターを闇に飲み込んでいく。

そして闇は飲み込んだモンスターの亡骸を糧に段々と深さを増していくのだ。


本来なら魔物が消滅した際には、金色の粒子を撒き散らし周辺の空間に溶け出すが、その分の魔力すらも飲み込み成長していく為に、その成長速度は尋常では無い。


少しずつ、少しずつ、闇色に染まりながらカケルは進む。


それが全てを背負った彼の在り方だから。



ニートのダンジョン攻略記。

カケルを蝕む闇に潜む怨嗟の念は、スタンピードの際に救えなかった人達やそれを非難するだけの無責任な連中が生み出した怨念。

徐々に闇に引き込まれるカケルがダンジョンを進む。


その先にある答えを求めて。

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