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再び快進撃っ、猿と蛇と鬼と鬼。

大自然ならではの気持ちのいい爽やかな朝日が顔を出し、山間のダンジョンと近くに作られた施設を照らし始めた頃。


「よし、随分と久々のダンジョン攻略になったが気合い入れて行くとしようかっ!!」


そんな掛け声を合図にぞろぞろとダンジョンへ挑む冒険者の一行がいた。


皆口々に今回の攻略に対しての考えを言い合いながら、恒例のクリスタル操作を行ない境界線を越えて行く。

潜り抜けた際の違和感にも慣れ、簡単に点呼を取った後21階層へと足を踏み入れる。


階層を越えた瞬間に、ぶわっ、と吹き荒ぶ強風に鬱陶しげに顔を顰めながらも周囲を見回し軽く地形を確認して、メンバー達と情報共有を行う。


「前回下見に来た時と同じで一面荒野でどこもこのくらいの強風で、確認出来てる魔物はコボルト系だな。」

「で、次の階層の方角はどっちだ?」

「まだこの階層を碌に把握してないのにもう次の階層か、そんな急いでどうするんだよ。」


はぁ、と溜め息混じりにリュウを責めようとするカケルを宥めるタモツの苦労も空しく決定的な台詞がユイの口から飛び出す。


「34階層にハジメがいるって猿神さまに教えて貰った。あんまり時間掛けてるとまた離されちゃうから、そこまで最速で行くつもり。」


おいおい聞いてねぇぞ、と頭を掻きながら困惑気味なカケルを置いてけぼりにメグ、ユイ、リュウの三人でどんどん進んでいく攻略計画に異議を申し立てるも、あらかじめ三人の中で決めていたかのように取り付く島も与えられず、不貞腐れた顔で話を側で聞くだけになったカケルの機嫌はすこぶる悪い。


「初めから聞いてりゃ俺だって反対しねぇっての!!」

「この階層の強風で決めたの、メグの弓も索敵魔法も上手くいかない以上は駆け抜けた方が良いって判断しただけ。」

「...ただでさえ戦力が少ないから、危険は犯せない。」


不貞腐れたまま魔力を立ち上げ階層境界の方角を指し示すカケル。

スタンピードを経て成長したおかげか、以前の様に昏睡する事もなくスタスタと歩き出すカケルに肩を竦めながらも、なんだかんだで仲良く攻略を進めていくメンバー達。


階層境界までの道のりの途中で数回モンスターと遭遇したが、強風吹き荒れる悪環境をものともしないリュウの立ち回りと、鬱憤を晴らそうとやけに気合いの入ったカケルの俊敏な動きで危なげなく片付けてしまい、これと言った事もないままに21、22、23階層と次々と攻略を進めるギルドの快進撃は止まらない。


代わり映えのない景色に飽き飽きしながら、ユイの子蛇を使った探索で次の階層境界を見つけ出すまでに僅かな休憩を挟みつつの強行軍。


「はぁはぁ、随分と駆け足で進むじゃないの。もう少し休憩が欲しいかなぁなんて...なんでもないです。」


ジロリ、と冷ややかな視線に押し負け、速攻で発言を撤回するカケルを不憫に思ってか、頼れる盾役のタモツがその視線を遮る形で割って入る。


「俺も休憩は必要だと思うが、そうまでして急ぐ理由はなんだ?ハジメの事だけじゃあないだろ?」


冷静なタモツの言葉に参ったとばかりに両手を上げ、説明を始めたリュウの口から出た衝撃的な事実にユイを除くメンバー全員が絶句する羽目になる。


曰く、ハジメの残した禁忌とも言える手法を取り入れたまでは良かったが、地上と違い空気中に漂う魔力が濃すぎる為に長時間の攻略はコントロールが効かなくなるという。


事前にダンジョンへと潜った際は、二日目の中頃から制御が効きづらくなり、完全に制御不能になったのがその二時間後。


「そりゃリュウに限った話しか?」

「いえ、私も同じ様に制御が効かなくなる可能性があるわ。流石に三人欠けた状態じゃ攻略も危険が増えるだろうから、急いでクリスタルがある階層まで行きたかったの。」


わずかな逡巡の後、ジロリと二人を睨み、吼える様に心の内を曝け出すカケル。


「馬鹿野郎っ!なんで勝手な事ばかりしてんだよ。そんなに俺の指揮が頼りないかっ!?」


そんなカケルの心の叫びすら強さを求めた二人には届かず、むしろここまで来るのが遅過ぎたのだと返される始末。


「じゃあ俺が全面的に反対してたら二人で攻略を進める気だったのか?それがどんだけ無茶な事かぐらい分かってるだろ?」


ここまで来ても冷たい視線を崩さないユイと、参ったな、と頭を掻くリュウの態度にここでようやく疑問を持ち出すカケル。


「カケル、お前がスタンピードの件で忙しくしてたのは理解してる。ハジメが守ろうとしたもんを必死になって守った事もすげぇと思ってる。ただな、肝心のハジメをほっぽり出してまで俺は赤の他人を救いたいとは思えねぇんだわ。」

「ハジメが隣に居てようやく誰かの為に頑張ろうって思えるの。ハジメを救う為に、その為だけにひたすら勉強をした、無茶もした、ようやく此処に戻って来れたっ!だから進ませて?私にはハジメしか帰る場所が無いのっ!!」


二人の強烈な独白に、困惑するカケルとタモツの前にスッと現れたメグが決断を迫る。


ハジメを想うユイの気持ちを理解するメグだからこそ、厳しくカケルを叱咤する。

それはその身を賭してまで救われたからこそ生まれた感情なのかも知れないが、メグの中には既にハジメを侮る様な感情は残っていない。


「...カケル、選ばなくちゃいけない。どんな選択をしても私はカケルの側にいる。」


不意に吹いた強風が運ぶ獣の臭いがやけに強烈だった。


-パッッパァァアアアアッッン!!!!


「油断なんてらしくねぇな、そんなウジウジ悩む事じゃあねぇだろ。オメェはただ一言、連れ戻してこいって言やぁ全部解決すんだろ。」


金色の粒子を浴びながら、無粋な襲撃者を易々と振り払い粒子へと還すリュウの圧倒的な武に気圧され、未だ返事に迷うカケルを見てユイが溜め息混じりに答えを出してしまう。


「カケル、ハジメを追い掛けて私とリュウは先行するから気を付けて来てね。合流は40階層辺りかな?」

「どうしても譲れないのか?」

「何を頑なになってるのか知らないけど、地上では連絡取れるんだし問題ないでしょ?」

「明らかに危険だと分かっていながら送り出せねぇだろうがっ!」

「リュウと私なら心配は要らない。その為に頑張って来たの。」


カチャリ、と鈍い輝きを放つ聖剣を引き抜くカケルを見て、拳を握るリュウを抑えるユイ。


「心配要らないって事を身に染みて教えてあげる。」

「舐めてんじゃねぇぞっ!!!」


紫電を纏い高速で迫るカケルに向かい、脅威の反射速度でタクトを振り上げるユイ。


-ガチンッ


金属音にも似た甲高い音が響く中、がくりと膝をつく影がひとつ。


「...何しやがった。」


にこりと微笑み、カケルの頬を撫でるユイの妖艶な雰囲気に周囲が息を飲む中、カケルにだけ聞こえる様に何かを耳打ちし、そのままヒラリと身を翻して果てない荒野へと歩み出す。


全てはハジメを取り戻す為に。

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