全ては神のみぞ知る。
一歩、また一歩と歩みを進める度に、自身に纏わり付いてくる有象無象の存在を、腕力に物を言わせ強引に振り払い、ただ前へ。
自我はとうに枯れ果て、わずかに残った蛍火の様に儚い自我だけは、全てを喰らおうとする暴力的な鬼の意志に奪われない様にと心の奥底、もはや自分すら手の届かない程の奥へと仕舞いこんだ。
今の自分を突き動かすのは鬼へと変貌する際に渇望した、大切なものを守りたいという思い。
その思いの大半はカケルを生かす事で達成したが、それでもまだやるべき事が残っている。
それはダンジョンモンスターの殲滅。
そして全ての元凶となった幼女神を喰らう事。
チカラに溺れ、ただひたすらに進むハジメの孤独な戦いは続く。
終わりなき渇望の果てにその身が朽ちるまで。
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「随分と愉快なイレギュラーが生まれたのね。」
優雅にティータイムを楽しみながら、対面に座る存在へと語り掛けるのは幼女神。
その姿はかつて人類の前へと姿を現した時とは大きく異なり、異様なまでに毒々しいドレスを身に纏い、その表情は愉悦に満ちている。
「ふん、そのお陰で予定より早く顕現出来たのだから我としては有難いがな。」
豪華という言葉だけでは言い表せないほどに煌びやかな食器をガシャリ、と乱暴に扱う鬼に眉を顰める幼女神の側近達を気にする風でもなく、鬼という種族らしく傲慢な態度でテーブルに着く鬼の神の表情も決して暗くなく、むしろ、幼女神と同じように愉悦に満ちた表情に近い。
「私としてはあのニート君に頑張ってもらいたいけど、鬼神の貴方から見てどうなの?」
「本来ならばとっくに朽ちておるはずだが、貴様の与えたチカラの影響で餓鬼に堕ちてなお生き長らえている。特別な才は無いが、その異常性に期待するのも暇潰しには丁度良いか。」
そう、と笑みを深めた幼女神が席を離れ出口へと向かいながらその幼い姿を変化させていく。
「遊びが過ぎれば火傷するぞ?」
「ご忠告どうも、でも折角の機会は存分に楽しまないと勿体無いでしょう?」
そう言い放ち颯爽と地上へと向かう幼女神を見遣り、ふんっ、と鼻を鳴らし、鬼神も同様に席を離れ神々の茶会は終わりを告げる。
新たに顕現した鬼神が及ぼす影響は、幼女神の思惑は、鬼と化したハジメの行く末は。
スタンピードで全世界が荒れる中、ダンジョンは激動を前にして静かにその闇を深めていく。
ニートのダンジョン攻略記。
世界が危機に晒される状況の中、ダンジョンの最奥で行われた神々の茶会。
それはこの危機的状況を加速させ、人々は神の試練へと向かう。
幼き神の箱庭で彼女を愉しませる為だけに。
次回、絶望の果ての禁断の果実。
乞うご期待。




