米国奪還、台風少女の大奮闘。
「いきなり30階層突破だ!?20階層の間違いじゃあねぇのか!?」
「いえ、組織からの報告書には30階層突破と書かれていますし、向こうは相当に盛り上がってるみたいなので間違いないかと。」
そのまま掴みかからん勢いでスタッフを問いただすカケルを止めたのはユイ。
その表情は固く険しいが、わずかに嬉しそうにも見えるのは報告書にアリスの名前が大々的に載っているからか。
「ユイ、この快進撃のカラクリ分かるか?」
「多分だけど、アリスの開発した新装備が凄いんじゃないかな?前に遊び来た時に色々と話しは聞いてたし、ハジメに追い付こうと頑張ったんだろうね。」
以前の出会いと研究バカの集いを思い出し頰を緩めるユイに強くは言えず、冷静さを取り戻してカケルが質問を続けていく。
「うちでも同じ物作れるか?」
「流石に現物が無いと厳しいかな。それに核部分に高純度の魔石を使ってるはずだから、アレコレ試す訳にもいかないしね。」
そうか、と考えに没頭し始めたカケルを他所に、話題の新装備MAGへと興味を移したユイとそれに関心を示すタモツの談議が始まる。
報告を聞いた後、リュウは早々にトレーニングへと向かい、メグはカケルが黙り込んだのをキッカケに自室へと戻ってしまう。
次のダンジョン攻略に備え各自で力を磨いている中、話題に上がったアリスもまた忙しくしていた。
短期間での30階層突破という快挙を成し遂げた米国チームは英雄として持て囃され、その立役者でもあるアリスもまた英雄として讃えられていた。
そしてそれは、未だに鎮圧し切れていない米国のスタンピード鎮圧への期待へと変わり、少女の心に大きな負担を掛ける事となる。
「はぁ、ハジメさんに会いたいデス。」
カチャカチャと手を動かす事は止めず、溜め息を零しながら叶わぬ願いを口にするアリスは、上官に諌められながら自身が開発した新装備を組み上げていく。
政府と共同開発したMagic auto gunとは全く別の新装備。
装着型の駆動スーツ、正式名称はMagic armor convoy通称-Mac-である。
構想自体はアリス個人が考えたが、問題点や改善点等は以前に日本に来た際、ハジメとユイにアドバイスを受けて試作型を改良、高純度の魔石をリアクターとして使用する事で段違いのパフォーマンスを発揮する事となった新装備である。
Macを装着した装備者は30階層の主の攻撃にも耐え得る程の防御力を備え、攻撃は通常のMAGとは違う特別仕様のMAGを使い火力面でも劣る事無く悠々と階層を突破。
その際に女神からの報酬として高純度の魔石を手に入れ、これまでにないほどの成果を挙げることに成功したのだ。
そして手に入れた魔石で新たにMacを製造する事で、国内のスタンピード鎮圧へと乗り出そうとしているのである。
そこで負担が一気に掛かったのが、Macの開発者であるアリスである。
軍事利用を可能な限り拒否したアリスによって、製造法は完全に機密事項に。
また、リアクター部分に関して言えば共に戦う仲間たちですら構造を知らないという徹底ぶりでアリス一人しか製造が出来ない為、寝る間を惜しんでまで製造に追われる毎日となり、口を開けばハジメやユイに会いたい、とばかりボヤく日々。
そんな中、聞こえてきたのは日本の冒険者制度の導入が決まり、冒険者という職が誕生したという話。
かつてハジメが嬉しそうに語っていた夢の一部が叶ったのだと、自分の事のように喜びハジメにお祝いのメッセージを送るも返事は来ない。
忙しくしているのだろう、と寂しく思いながらも祖国の為に目の下に濃い隈を作りながら新装備を製造するアリスなのだった。
ニートのダンジョン攻略記。
アリスの奮闘によって攻略最前線へと躍り出た米国チームだったが、祖国奪還の為に攻略を中断しスタンピードと対峙する事となる。
次回もお楽しみ。




