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10万人の後輩とゴブリン。

寝る前に感じていた疲労感はどこへやらとばかりに、やけにすっきりとした目覚めを迎え、起床を促すアラームを止めてグッと背筋を伸ばせば一日が始まる。


といっても、ダンジョン攻略を終えたばかりで、すぐに攻略を開始とはいかず、次のダンジョン攻略までに食糧や消耗品などの補充、回収した魔石を組織へと納める手続きをしたりとダンジョンに潜る以外にもやる事は多い。


何より、最近になり懸念され始めているスタンピード対策として冒険者制度を確立しなければならない為に、地上に戻ってきたばかりだというのに会議の予定がぎっしりと詰まっているであろう事に溜め息をひとつ。


そのタイミングで自室の扉をノックする音に軽く返事をして入室を促せば、邪魔するよ、と入ってきたのは和田である。


ダンジョン攻略よりも組織との仲介や冒険者制度の導入をメインに活動している和田が、こんな田舎に顔を出すのが珍しい為に少し驚く。


「こっちに来るなんて珍しいですね、昨日戻ったばかりなんで報告書も纏まってないですよ?」

「ああ、それは後回しでも構わないよ。それより朗報だ、冒険者制度の導入が決まったよ。詳しいことはこれに纏めてあるから目を通しておいてくれ。」

「そうですか、散々走り回った甲斐があったのか、それとも組織の圧力か...まぁ、これでダンジョン攻略に集中出来ると思えばどっちでもいいですけどね。」

「二度もスタンピードに立ち向かった君が署名を募ったからこそ実現した制度なんだ、もっと胸を張っていいと思うよ?」

「全国のダンジョンに挑む人間が集まった後で喜ぶ事にしますよ。」


予想外の反応に目を丸くしながらも、用事を済ませた和田はそそくさと退散していく。


和田が去ったのを見て、ため息を零しながらベッドに腰掛ける。心に込み上がる達成感はあるが、それを一番に分かち合いたい友の不在に素直に喜べない。


今日何度目かの溜め息を吐き、先程渡された書類に目を通していけば、冒険者制度の導入が決定されてすでに数万の応募が来ているらしい。


「こりゃまた随分と集まった見たいだな。好奇心に突き動かされた馬鹿か使命感から来る蛮勇か、後悔だけはして欲しくないもんだねぇ。」


はぁ、と深い溜め息の後で両頬を叩いて気合を入れ直し、書類を最後まで目を通した後で朝食へと向かえば、そこでユイとばったり出会う。


おはよう、と互いに挨拶を交わし合い、自然と同じテーブルで朝食を取る事に。


「しっかり眠れたか?」

「ええ、しっかり休めたわ。カケルの方は?」

「俺も朝までがっつり眠れたよ。冒険者制度の導入について聞いた?念願叶ってようやく実現したんだ。」

「そっか、これで後方の憂いは消えた、と。心置きなくダンジョン攻略に専念出来るね。」

「あ、ああ。すぐにハジメに追いつかなきゃならねぇし、あいつが抜けた分の穴を埋める為にもチカラを付けなきゃなんねぇ。」

「お互い頑張ろうね。じゃ、先行くね。」


スッと立ち上がり部屋へと戻っていくユイを呆気にとられながら見送り、カケルも朝食を済ませて恒例となった朝のミーティングへと向かう。


話す内容を考えながら歩いていれば、朝風呂帰りのメグと遭遇して一緒に向かう事に。

こんな時でもお風呂をこよなく愛するメグに呆れながらも、ふわりと漂う石鹸の良い香りと満足そうなメグの表情に毒気を抜かれ、いつもの様に肩を並べて黙って歩いていく。


既に部屋に到着して待っていたらしいタモツに挨拶し、返事と共に渡されたコーヒーを受け取りながら全員揃うまで雑談に耽る。


全員揃ったところで、次の階層調査の日程や攻略ペースの話し合い、雑談中に話題にあがった冒険者制度の話しなどをしてミーティングは終了。


いつも通りをこなし、代わり映えの無い業務をこなしていく中で、少しだけ、少しだけ物足りないなと思いながら過ごしていく。


そうして過ごしているうちに、和田の奮闘によって日本中で冒険者が誕生した。



ニートのダンジョン攻略記。

ハジメの欠けた日常を退屈に感じながら、次のダンジョン攻略に向け活動するカケル。

そこに届いた冒険者誕生の報せ。

次回に続く。

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