夢と希望とダンジョンと。
ダンジョン内での朝を迎え、メンバー達がのそのそと起き出す。
その動きは緩慢で、戦いで受けた傷が癒えぬままでの撤退すら危ぶまれる。
「さてと、朝のミーティングと行きたいとこだけど、改めて見ると本当にボロボロだな。」
「...言ってる本人が一番重傷。」
「確かにな、ダンジョンを一番甘く見てたのは俺だったのかもな。」
「...油断大敵、驕りは瞳を曇らせる。」
「だな、今回の一戦で痛感したよ。」
肩を竦め、苦笑いを零すカケルにバシバシと脳天チョップを繰り返すメグをやんわり止めるのは顔色の悪いタモツ。
「おいオメェ等、仲良くすんのは結構だが、これから15階層までこの状態で戻らなきゃならねぇんだからもうちっと気合い入れてけや。」
「大丈夫だよ、ハジメが<道>を開いてくれてるから。それより先にみんなを回復させちゃうね。」
「「「っ!?」」」
「目が覚めたのか。すまん、ハジメは...」
「大丈夫だよ。眠ってる間にハジメから散々謝られたから。おいでレピィ、みんなボロボロだから頑張ろうね。」
ユイから立ち上がった魔力が形を成して、白蛇が姿を現わす。
そのまま杖へと姿を変えたかと思えば、即座に傷付いたメンバー達に癒しの光が包み込み、ボロボロだった状況が改善される。
ふぅ、とひと息付いた後で、スタスタと20階層へと繋がる階層境界へと歩き出すユイ。
「ちょっ、待てって!いまいち状況が飲み込めてないけど、今の俺たちじゃ階層主には勝てないぞ!?」
「大丈夫だって言ったでしょ?ハジメが開いた道が閉じる前に早く行かなきゃ、勝手に飛び出して無茶ばっかりするハジメを叱る為にはこんなとこでのんびり出来ないよー?」
「...眠ってる間にハジメと会ってたは本当?」
「猿神さまのおかげかな?ケセラセラを通じて夢の中で色々と話したの。ダンジョンの構造なんかも勉強になったし、あんな状態でも研究バカなとこは変わってなくて...みんなが大変な時に一人寝ててごめんね。」
「...ハジメと話せて良かったね。」
話しを聞きながらも黙々と拠点を片付けたタモツが荷物を纏めてしまえば出発となる。
と言っても、ハジメの攻略を終えた20階層へと踏み込みクリスタルに触れて帰還するだけ。
地上へと帰る際に再び訪れたのは白の空間。
「見事、とは言いがたい階層突破でしたが、おめでとうございます。褒美として女神よりこちらをお預かりしております。」
「そりゃどうも。次の階層突破もハジメにおんぶに抱っこでクリアしたらどうなんの?」
「次の階層からは分岐によって道が違いますので、あのイレギュラーに頼る事は不可能かと。」
「あっそ。じゃあどうすりゃハジメに会える?」
「貴方に刻まれた鬼の呪がいずれ導くかと。」
「そりゃまた先の長い話しになりそうだ、まぁ希望が残ってるだけ十分か。んじゃ、また。」
「ええ、ご健闘をお祈りしております。」
用は済んだとばかりに、ひらひらと手を振り出口へと向かうカケルを祈るようにして見送る女神の使いの姿が、カケルの消えると同時に薄れ消えていく。
そしてわずかな違和感と暗転を経て辿り着いたのは、懐かしの拠点と慌てて出迎えに来たスタッフ達。
事務的な会話をいくつか済ませ、背負っていた荷物と戦利品を預ければ、地上に戻った安心感とダンジョン内で碌に休めなかった為の疲労感に襲われ一気に眠気が来る。
ハジメが帰って来ないことに何かを察したスタッフ達に苦笑いを零しながらも、いちいち説明する気力も起きず、他のメンバー達の帰還を見届けた後で自室へと戻り休む事に。
心も身体も疲れ果てたメンバー達に訪れた休息の時間。
それは変革という嵐の前の静けさなのかもしれない。
ニートのダンジョン攻略記。
無事帰還を果たしたギルドメンバー達。
そんな彼らを待つのは果たして激動か平穏か。
次回、10万人の後輩とゴブリン。
乞うご期待。




