止まらぬ快進撃と階層主。
ダンジョン内で朝日を感じるというのも可笑しな話ではあるが、時間経過により擬似太陽が顔を出して朝を告げたことで攻略準備に取り掛かるギルドメンバー達。
見張りの順によって眠そうな表情に差はあるものの、猿神さまの御告げによってメンバー間のギスギスした雰囲気は解決されたお陰で、流れる空気はかつての様に非常に明るい。
目覚まし代わりに熱々のコーヒーを啜るハジメと大欠伸を浮かべるリュウ、そんな二人にご苦労様と朝食を届けるタモツとユイ。
見渡す限り一面がジャングルでなければ楽しい朝のひと時の様にも感じるが、残念ながらここはダンジョン。
夜明けとともに目を覚ましたであろう魔物達の声が木霊しているのだ。
「夜の間は静かでいいもんだったんだがな。」
「そうだね、日の出と共にこの騒がしさだから少し驚いたよ。森の生態系が違うから生活リズムが一定なのかも、夜間行軍すれば敵と遭遇しないから効率はいいのかも?」
「流石にリスクの方が大きいでしょ。真っ暗闇で戦闘になんてなったら大惨事だよ?」
だよね、と肩を竦めながら苦笑いをひとつ零せばバシバシと背中を叩いてくるリュウの調子の良さも戻ってきており、ダンジョン内だというのを忘れる程に楽しげな時間が過ぎていく。
わずかに感じる左腕の疼痛に少しだけ不安が過ぎるも、今この雰囲気を壊したくない、と思ってしまえば口には出せない。
「ぼちぼち出発すんぞ、仲良く遊ぶのもいいけど気抜きすぎて怪我すんなよー。」
「「「りょーかい。」」」
拠点を片付けてしまえば出発の時間。
運命の19階層の攻略が始まる。
すでに階層境界の方向は把握しており、多少の戦力ダウンはあれど攻略速度はいつも以上に早い。
チーム内の不和によって失われつつあったコンビネーションも、カケルとリュウの二人の戦力が落ちた事で逆に工夫が生まれて討伐速度も悪くない。
そんな19階層攻略は想定していた時間よりも1時間近く早く完了し、20階層への境界を発見したことでメンバー達の士気はより一層高まりを見せる。
「随分とあっさり辿り着けたな。戦力ダウンで多少遅れると思ってたのに、まさか予定時間を上回るスピードで来るとはな。」
「みんな気合い入ってたもんね。」
「このやっつけ感たっぷりの刻印じゃ流石に階層主戦は不安だがな。」
「仕方ないだろ?まさか鬼の呪を剥がすと全部ダメになるなんて思わなかったんだから。」
あーだこーだとじゃれ合いながら休憩を取り、全員が現状でのベストな状態まで回復すれば決戦の時。
踏み出した一歩で視界が歪めば、次に現れたのは密林地帯の中にぽつんと空いた空間。
その中央には獲物が来るのを今か今かと待ちわびていた大猿達の姿。
そして、大猿達を従えている白い大猿が堂々とした態度でこちらを迎え入れてくる。
「まさかの大猿の団体様が相手とは中々骨が折れそうじゃないの。」
「...数が多い、それに密林の奥にも相当な数の気配を感じる。」
「定番で言えば雑魚が常に一定数存在して大乱闘って感じかな?」
「ハジメの意見が当たりだとこっちとしてはかなりマズいよね?これは相当レピィに頑張って貰わないとかな。」
思い思いに戦闘準備を済ませれば、待ち切れないとばかりに飛び出してきた大猿数体をタモツが受け止める。
そのまま流れる様に押し倒せばリュウの剛腕とカケルの聖剣、そして模倣魔法の組み合わせによる鉄杭を撃ち込んで速攻で片付ける。
「雑魚は適当に相手して、白い大猿を一気に叩くっ!!」
「「「応っ!!」」」
ニートのダンジョン攻略記。
ついに始まった階層主戦。
魔力枯渇を繰り返し不調のカケルと刻印を失い戦力が大幅に落ちたリュウ、そんな不利な状況を理解し一気に片を付けようとするギルドメンバー達だが、圧倒的な数の大猿はそれを許しはしなかった。
次回、運命の一戦、思いは共にあると信じて。
乞うご期待。




