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止まらぬ快進撃と階層主。

本来なら心地良い朝の日差しも碌に身動きの取れない現状ではただただ憎らしく、せめてもの抵抗にと部屋をごろごろと転がって必死に日差しから逃げようとするも結果は芳しくない。


自身を拘束する魔法を解こうと試みても、昨晩の自分はやたらと頑丈かつ堅牢に構築したらしく、解除もままならない現状に溜め息ひとつ。


先程の転がりによって生じた騒音に文句を言いに来た寝不足で不機嫌なカケルが、今は救世主に見えるのは中々に末期である。


「朝っぱらからドタバタと何してんだよっ!って本当に何してんのっ!?」

「あー、ちょっと実験がてら色々試してたらさ...面目無い。」

「当面は研究禁止令を出してたよな?」

「抑えきれない欲求は誰にも止められないみたい、当然自分でもねっ!」

「何アホな事言ってんだよ。次のダンジョン攻略まで日が無いんだから頼むぜほんと。」

「ごめんごめん、これっきりにするから見逃すついでに解いてくれない?」

「はぁ、マジで頼むぜハジメ。」


ペコペコ、と頭を下げていれば、カケルが未完成の聖剣で拘束具を断ち切ってくれる。

その際にハラリと舞った前髪にカケルの怒りを感じて、少しばかり嫌な汗をかくことになったのは今回の件で丁度良い戒めなのかも知れない。


少々不恰好になった前髪よりもガチガチに固まった身体の方が優先事項で、バキバキと音を立てながら伸びをすれば多少は楽になる。


「ふぁぁああ、昨日あんま寝てねぇしもうちょい寝るわ。」

「朝から騒いでごめんよ。」

「これに懲りたら無茶な研究だの実験だのは一人でしない様にな。おやすみー」

「あ、ああ。おやすみ。」


やけに疲れた様子のカケルは早々に自室へと戻っていき、再び部屋に一人きり。

今回の暴走とも言える原因となった呪印に目を落とせば、暴走前までは手の甲にあったのに今は侵食してくる様に肘近くまで伸びてきている。


腕の調子を確かめてみても特に変わった感じはなく、ただ呪印が広がりを見せただけである。


「猿神さまに忠告されたばっかなのにこれじゃあ呆れられちゃうかな。」


宴会を開いた際に受けた忠告もろくに役立てる事が出来ず、数日経たずに呪印に呑まれた自分の軟弱さに溜め息を零しながらストレッチを終える。


昨晩の出来事でリュウとの関係にもヒビが入ってしまった為に、しばらく顔を合わせたくないな、なんて子供の様な考えが浮かんでくる。


ダンジョン攻略をしていく上で、仲間との良好な関係は必須であるにも関わらず、ギクシャクとした関係のままダンジョン攻略の日を迎えてしまったのは、三年もの引き篭もり生活で他人と関わる事から離れていた弊害なのか、子供じみたバカな強情さが生んだ結果なのかは誰にも分からない。


そして出発の時。


いつもの様にクリスタルを操作して15階層に跳べば、頭を切り替えて次の階層への道を進む。


「目標は20階層突破を考えてるけど、今回は案内役もいないし、攻略のペース見ながら撤退のタイミング決めるから、無理せず行こうか。」

「えらく弱気じゃねぇか、ああ?階層主なんざサクッと倒すくらい強気に行かねぇと勝てるもんも勝てねぇぞ?」

「強気の姿勢だけで攻略出来るほど甘い場所じゃないだろ。疲れ切った状態で勝てるかどうかも分からん階層主に挑む様な愚かな考えは、今ここで捨ててくれ。」

「二人共そこまでにしておけ。このまま険悪な状態で進むつもりなら俺は降りるぞ。」


タモツの仲裁で一旦は落ち着いたが、出発前から荒れた雰囲気のギルドメンバー達に、呆れた様子のメグが16階層へと先行して進んでいく。


それに続いて進むカケルを追う形で、案内役のアドバンテージを失った16階層の攻略が始まる。



ニートのダンジョン攻略記。

ギスギスした雰囲気の中始まった16階層攻略。

小猿達の案内というアドバンテージも無くなった今、密林という環境の脅威がギルドメンバー達に襲い掛かる。

次回もお楽しみに。

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