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続×2・可愛いあの子に首ったけ。

集め終えた大猿の魔石をカケルに報告し収納しようと荷物へ手を伸ばせば、カケルから待ったの一声。


「カケルどうした?」

「どうしてもこの生意気なクソ猿が退かねえらしいから魔石と交換か小猿の群れ滅ぼすかの二択しか浮かばねぇ。」

「交渉事でカケルがお手上げなんて珍しいな。ましてや小猿相手とは酒の席で盛り上がりそうな土産話が出来たよ。」

「タモツ、あの小猿相手じゃ誰も勝てなやしないって。だって言葉が通じないんだもん。」

「ったく、好き勝手言いやがって。とりあえず大猿から出た魔石は全部くれてやる事にしたから、秘宝ってやつに期待するしかねぇわ。」

「おっけー、今回は碌に戦ってないし素直に手放す事にするよ。小猿に借金王から金を巻き上げるなんていい根性してるねって伝えておいてよ。」

「なははっ、しっかり伝えとくわ。そんじゃまあ小猿が大事に守ってきた秘宝ってやつを見に行こうかね。」


魔石の詰まった袋をカケルに渡し、追いかけっこをしている女子二人に声を掛ければいざ出発。


この場にいた小猿達に導かれながら密林の更に奥地へと進んでいけば、ある地点を通り過ぎた際に若干の違和感を感じる。

それは階層移動の際に感じる違和感に似ていて、不思議に思いながらも置いてかれては堪らないと歩みを止める事は無い。


しばらく歩いてようやく見えてきたのは、小さな池の中央に浮かぶ苔に覆われた古い祠。

そこらじゅうに散りばめられた魔石が輝きを放ち、幻想的な景色を創り出していてメンバー全員が言葉を失う中、カケルの手から魔石の入った袋を引っ手繰る様にして奪った小猿が魔石を次々と池に投げ込んでいく。


「ウキャキャ、ウキー!!」

「はぁ、カケル通訳お願い。」

「魔石が少し足りないから、追加を持って来いってさ。」

「おーけーおーけー、ってふざけんなよっ!?」

「ウキャ?」


厚かましく追加の魔石まで要求してくる小猿に苛立ちながら、原因である祠を観察する。


発光を続ける池の中央に浮かぶ祠は、魔石から抽出された魔力を少しづつ吸収している様に見え、その池の水をひと救いしてみればやけにつるりとした感触に驚かされる。


池に満ちた水は高濃度の魔力水なのである。

いくら小さな池とは言え、この全てを魔力水で満たすには相当な量が必要だろうに。

ましてや、それを成そうとするのは非力な小猿の群れなのだ、一体どれだけ大変だったのか想像もつかない。


そして、これだけの魔力を必要とする祠の正体も中々恐ろしいものがある。


「正直言って、魔力が満ちた時に何が起こるか想像出来ない。ここまで来る途中で境界線を越えた様な違和感もあったから、多分ここはダンジョンの中でも特別な場所なんだと思う。」

「この生意気な小猿が言うには、神域が魔力で満ちたら女神が降臨するらしい。それも相当に別嬪さんらしいぞ。」

「...エロ猿。」


小猿達が信仰する女神を想像してみると、なんだか弱っちい気もするが、カケルの聖剣強化の秘宝を与えるという話もあながち嘘では無いのだと思わせる特別感は確かにある。


「んじゃま?今から戻って魔石集めするか。」

「んー、多分だけど俺の魔力でいけると思う。どうせここでの戦闘じゃ役立たずだし、7-8割程度なら試してみていい?」

「ハジメっ!?わざわざ危ない事しなくても魔石集めて戻って来ればいいじゃない。」


少々過保護なユイのお叱りも正しくはあるが、今回は新装備の慣らしという面もあり食糧などはニ日分しか用意して来ていない。

密林地帯へ戻り必死になって魔石を集めている間に食糧が尽きて仕舞えば退却するしかない。


そして次のダンジョン攻略の際に小猿の相手を出来るかといえば、そこは何とも言えない部分がある。

それはカケルが掲げる最前線という目標。

ハジメの騒動でダンジョン攻略が止まっている間に、アリスが所属しているチームと北欧のチームが十階層を突破したのだ。


アリスの活躍は嬉しく思うけども、負けてはいられない。

誰も知らないものを一番に知りたいという欲求が心の中で負けるなと叫んでいる。

大鬼の呪印が早くここまで来いと深淵へと誘って来るのだ。


それはカケルも同じ考えの様で、やれるのか、と率直な問いに強く頷く。


「とりあえずハジメに任せてみて、無理そうならそん時また考えるか。」

「行き当たりばったりなのも俺達らしくていんじゃない?それじゃ期待しないで待っててよ。ユイもそんな心配しないで、ただ魔力を流し込むだけだし。」


ユイの手をそっと解き、池に手を浸して魔力を放出していく。

乾いた砂が水を吸う様に、際限なく魔力を吸収していく事に僅かに不安を覚えながらも魔力の放出を続けていく。


残り魔力が体感で3割程度を切った頃にようやく変化が起こり始める。

ジワリと動き始めた魔力水が祠の中に呑み込まれていき、眩い光を放つ。


次の瞬間、その場に居た全員が膝から崩れ落ちる様にして強制的に跪く形になる。


<我が眷属達よ、見事だ。と言いたいところではあるが、最終的に妾を目覚めさせたのは人の子か。>


うぐぐ、と気合いだけで顔を上げればそこに居たのは猿の神。

流石は生意気な小猿。これのどこが別嬪さんだ、と猛烈にツッコミたい衝動に駆られるが、これ以上身体が言うことを聞かない。


<そんなに畏まらず楽にしてよいぞ。>


先程まで無理に動かそうとして居たエネルギーをそのままに、急に動ける様になってしまえば結果は分かりきっている。


-ドボンッ


踏ん張ることも出来ず勢い良く池に飛び込む事となったハジメを見てカラカラと笑う猿神。


<久方振りの現世でも人の子を揶揄うのは楽しいものよな。さて、我が眷属の手助けの礼として約束を果たすとしよう。聖剣の担い手よ、神の与えたる試練に立ち向かう為のチカラを受け取れ。>

「...これは俺だけしか貰えないチカラなのか?」

<お主の様に高い適正があれば与える事も出来るが、ここにいる人の子ではお主だけじゃな。我が眷属を救い顕現の手伝い御苦労であった、人の身でこれ以上神域に留まれば魂が疲弊してしまう故に立ち去るが良い。>


歓喜に沸く小猿達に導かれ神域を後にすれば、どっと来る疲労感に驚く。

あっという間に過ぎた出来事に頭の中が整理出来ていないが、とりあえず落ち着ける場所まで移動しようと決まり、またもや小猿達に導かれる様にして前に拠点を築いた場所まで戻ってくる。


「とりあえず、神様に会っちまった衝撃が凄すぎて何にも考えられない。」

「だな。俺なんか神様パワーまで貰ったから更にプラスで混乱してるっての。」


中身のないくだらない話しをしながら、今朝片付けたばかりの拠点をもう一度作り休憩へ。


「とりあえず猿神さま?は人間基準だと別嬪では無かったな。あれか、猿基準だと凄い別嬪さんなのか?」

「そうらしいぞ、あのクソ生意気な小猿が猿神さまを見た途端にトリップした位だからな。猿神さまを一目見たいが為に必死こいて魔石集めするんだから大したもんだよ。」

「魔石を盗んだ事は許してないけどな。」

「なははっ、借金王には今回の一件は厳しいもんがあったか。」

「笑い事じゃないからなっ!?」


色々とあったし、色々と考えなければいけない事も山積みだけども、とりあえず今は眠りたい。

ダンジョンの中だというのにうつらうつらと眠りに落ちていくメンバー達を守ろうと、それっぽい動きを見せる小猿達に見守られながらダンジョン二日目の攻略は終わりを迎える。



ニートのダンジョン攻略記。

小猿の努力はギルドを力を借りてどうにか実り、無事に猿神の顕現に成功する。

猿神という新しい勢力図の出現や授けられたチカラの詳細、ダンジョンに隠された神域の秘密など分からない事だらけではあるが、疲労困憊のメンバー達を襲う睡魔には誰一人勝てずに眠りに落ちていく。

次回、寝落ちの後の快進撃。

乞うご期待!

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