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続・可愛いあの子に首ったけ。


「「「待てやコラぁぁあああああ!!」」」

「ウキャァァアアア!?」


早々に準備を済まし、生意気な小猿との追いかけっこに勤しむ冒険者達が密林地帯を駆け回る。

追われる小猿も三人を相手に必死の逃走を見せるも、ルール無用の何でもアリな鬼ごっこに大苦戦しており三人の仕掛ける包囲網に追い詰められつつある。


そんな光景を呆れた表情で見ている三人は、少年の心を取り戻してしまった男の子の分まで拠点の片付けをやらされて、持っている荷物も普段の倍以上となかなかに大変な思いをしている。

彼らが遊び疲れて帰って来た時に雷が落ちない事を祈るばかりである。


「タモツは混ざらなくていいの?」

「最年長の立場としては、流石にあそこまで童心には帰れないさ。」

「...バリアのお陰で快適。休憩とこの発明に免じて私は怒らないからユイがちゃんと叱ってね。」

「えぇ!?私が怒るの担当なの?みんなのお母さんじゃないんだから知らないってば。」

「...ユイはハジメ専門?」

「メグ、その言い方なんだか妙な含みを感じるから辞めて。」

「...あながち間違いじゃ...ギブギブ、もう言わないから許して。」

「ちぇっ、締め上げてカケルとの関係を根掘り葉掘り聞き出そうと思ってたのに。」


がっちりと捉えたメグの頭蓋が軋みを上げる前に早々のギブアップ宣言に、冗談交じりで舌打ちをしながらメグを解放する。


女子二人の恋バナに付いていけないタモツの孤独感だけは何とも言えないが、11階層の難点だった虫被害を解決したメンバー達の雰囲気はそう悪くないのは確かである。


「--ぉーい、あの生意気な小猿はもしかしたら凄い発見かもしれない。とりあえずこっち来てよ。」

「あ、ちょっと!そんな急に引っ張らないで。」

「ほら、急いで急いでっ!」


鬼ごっこを満喫していたハジメが戻ってきたかと思えば、ユイの手を引き密林の奥地へと誘う。

曰く、凄い発見かも、と興奮気味に口走るハジメに振り回されながら満更でも無い表情で駆け出すユイと追随するメグとタモツ。


そして密林地帯の奥地で見た光景は、以前襲撃に遭いリュウの一撃で沈んでしまった大猿の群れとハジメ達が追いかけ回していた小猿の群れの対立シーンである。

視線をずらせば、リュウに片手で吊られながらも必死に身振り手振りで何かを伝えようとする小猿の姿。


「リュウは何してるの?」

「さぁ?流石に猿語は分かんないから。それより猿達の対立だよっ!モンスター同士の対立が起こり得るなんて新事実だよね。もしかしたらこの先モンスターをテイム出来る可能性も出て来たわけだし、階層毎にモンスター達の勢力図なんかも気にしていかないといけなくなるよね。」

「モンスター同士の対立かぁ、良い事なのか悪い事なのか...って、ハジメの言ってた進化論が正しいならマズい事態じゃない!?」


今にも始まりそうな猿戦争にドキマギしていればカケルから集合を掛けられ一旦集まることに。


「あー、この生意気な小猿が言うには、聖剣を強化出来るであろう秘宝が小猿の集落にはあるんだとさ。それで大猿との戦いを手伝ってくれたら秘宝をくれるらしいから戦います、以上っ!」

「え、カケルって猿語が分かるの?」

「俺にもよく分かんねぇけど、なんか理解出来ちゃったんだよね。まぁ便利だから細かい事は気にしないでいこうや、なははっ!」


それでいいのか、と心配しながらも、20体以上いる大猿の群れとの戦闘が控えている為、深く追求はしないで戦闘準備を整えていく。


といっても、ハジメの炎属性と密林地帯は相性が悪く、湿度の高さと大量の木々から生み出された腐葉土がそこらじゅうにある為にあまり大技は使えない。


「この階層は支援に徹するしかないかな。」

「...ハジメ、陽炎ちょうだい。」

「りょーかいっと、それじゃみんなの新装備の調子でも見てようかな。」


リュウの身体から魔力が溢れ出て全身を覆ったかと思えば、次の瞬間に爆発的な加速で大猿の群れへと飛び込んでいく。

その一撃で数体の大猿を吹き飛ばしたのを見る限り、相当な威力な事が伺える。

そのまま多数の大猿を相手に大立ち回りを見せるリュウの奮闘振りに改めて凄さを実感しながら、カケルへと視線を向ければこちらもこちらで中々に凄まじい。


小猿の群れの先頭に立ち、まるで物語の勇者の様に聖剣を掲げるカケルの姿。

そのまま小猿を率いて大猿と衝突し、大猿を斬り倒していく。


タモツやメグの支援も功を制し、危なげない戦いに出る幕無く決着が着いてしまう。

流石にこの悪環境の中で戦うのはキツかったのか、渡した水筒から浴びるようにして水を飲むメンバー達を労りながら例の秘宝の登場を待ちわびる。


「あ゛ぁ!?助けてやったら秘宝の約束だろうが、何で魔石と交換なんて話しになんだよ!」

「ウキキ、ウキャキャキャ、ウキキウキャ!」

「うるせーよ、とっとと出さねぇと次はお前ら滅ぼすぞバカ野郎がっ!!」

「ウキャキャキャ!!」


吠えるカケルと必死な猿の姿にダンジョンの神秘に触れた気がして、ほんわかとした気持ちになりながらドロップした魔石を回収していれば、こちらに熱い視線を送る別の小猿の姿。


手にした魔石を右に動かせば、釣られる様に動く小猿の反応が面白く、右に左にと魔石を動かしていればユイに叱られてしまう。


脅威はほぼ無いとはいえ、ダンジョン内でモンスターと戯れるという貴重な体験に変なテンションだった事を自覚させられ、しょんぼりと肩を落としながら魔石の回収を終えてしまう。


大猿の魔石ドロップ率も3割程度とゴブリンと大差無く、質の面でもそこまで大きく変化している様には感じない。


「とりあえず借金返済の為にも魔石は山ほど集めないと...はぁ、研究したい。」

「ハジメがやり過ぎたせいで私まで当面禁止を食らったんだからねっ、ほんと反省してるの!?」

「反省してるし、両親誤魔化す為にお金を都合してくれた事にも感謝してるよ。やっぱユイがいないと俺ってダメダメだ。」

「...ユイってダメ男が好きなの?」

「メグ?ちょっとだけ向こうでお話しようか。」

「...ユイってばおこなの?」

「安心して?すでに激おこを越えようとしてるとこだから。」

「...あわわ、何事もやり過ぎ注意だね?」


男どもの鬼ごっこと戦闘が終わったと思えば、次は女子二人による追いかけっこが始まってしまう。

やけに緩い雰囲気の中、ダンジョン攻略は続いていく。



ニートのダンジョン攻略記。

意外にも恋バナ好きというメグの一面に翻弄されるユイ。

何故か猿語が理解出来てしまい、小猿の群れを救う為に大猿と戦うカケル。

どこか混沌と化しつつあるダンジョン11階層は未だゴールは見えてこない。

次回へ続く。

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