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世間はニートにちと厳しい。

装備の新調と傷付いた身体を癒す為に取られた休日も残りわずかとなってきた頃に事件は起きた。


パシャリ、と焚かれたフラッシュに反応して振り向けば、そこには見るからにジャーナリストらしい格好の男女二人組。


明らかに好意的には見えない二人組に警戒を露わにしていれば、どこか感情を逆なでする様なのっぺりとした声で話しかけられる。


「いやぁ、流石はダンジョン攻略をされてるだけの事はありますね。一般人とは思えないほどの見事な反射神経だ。あ、私決して怪しい者じゃございません。週刊誌で記事書かしてもらってる三村と言います、よろしくどうも。こっちは相方の大岳言います。」

「大岳です、よろしくお願いします。」

「...。」


カケルや和田から事前に注意されていた為に、こういった事の対処法は教わっている。

ひたすら無視が一番。


「周防さーん?聞こえてます?取材をさせて頂きたいんですけどいいですか?」


人前で、しかも記者を前にして魔法の練習をするわけにもいかず、仕方なく拠点へと足を向ければ背後から突然の衝撃。


何事かと振り返れば、大岳と呼ばれた小柄な女性記者がタックルをしてきたのだ。

当然、体格に差があり、レベルアップを重ねているハジメの身体能力の高さも相まって、簡単に弾き返された女性記者はその場に蹲る。


唐突にタックルされ混乱したハジメだったが、転けた拍子に怪我をしたらしい人間を放置出来るほど冷酷ではなく、大丈夫ですか、と手を差し伸べたのが運の尽き。


再びパシャリと写真を撮られれば、ダンジョン攻略を行なう冒険者と名乗る集団の一人が、一般人を襲うシーンの出来上がり。


「はぁ、あんた達は一体何がしたいんだよ。」

「おっ!やっと話してくれましたね。何がしたいかって、そりゃ取材ですよ取材。」

「わざわざ立ち入り禁止の区域に不法侵入して、断りもなくパシャパシャ写真を撮って、更にいきなりタックルしてくるのが取材ですか。」


こちらとしても心苦しんですがね、などと心にもない事を言う三村と名乗る記者を不審者を見るような目つきで見ていれば、差し出した手を借りる事なく自分で立ち上がる女性記者。


「とりあえずスタッフを呼びますから、その場で待機してスタッフの指示に従って行動してくださいね。あ、あと取材に関して言えば和田が代表して受けているのでそちらにお願いします。」

「いえいえ結構ですよ。お手数お掛けするのも悪いですし、自分達で帰りますから。それじゃ、次は取材受けてくださいねー。」

「あ、ちょっ!スタッフが来るまで待機していて下さいって!!これ以上この敷地内で勝手な行動を取る様なら警察沙汰になりますよ!?」


ピタリ、と動きを止めた記者を名乗る二人がゆっくりと振り返るも、その表情にあるのは怒り。


「困ったことがあればすぐ警察ですか、国家権力に守られた奴らはどんなことしても許されますからねぇ。どうせ周防さん、アンタも裏で悪どいことやってるんでしょ?経歴調べてみれば、普通のサラリーマンからドロップアウトして三年間の引き篭もり生活、その間は両親の脛を齧って好き放題してたそんな碌でなしが冒険者?はっ、どうせ一般人相手に好き勝手やってるんでしょ?目立った特技も無いアンタがレベルアップ一つでこれまで自分を馬鹿にしてきた連中を叩きのめす事が出来るんだ、さぞ気持ち良かっただろう?なぁ周防さん教えてくれよ、どうやって御堂カケルに取り入ったんだい?弱みを握ってるの?まさかお友達だからなんて馬鹿げた理由じゃ無いよね?」


絶句。

ダンジョン対策本部の一部の連中は違法行為を度々行なっていたとは聞いていたが、ここまで怒りを買うほど嫌われているとは思いもしなかったのだ。


「俺はそんな事してません。それに警察を呼ぶと言ったのだって三村さんと大岳さんが敷地内へ不法侵入を行った挙句、こちらの指示に従わずに立ち去ろうとするからでしょう?大人しくして下さい。」

「んー?そんな事してません。なんて言うなら周防さんを取材しても大丈夫ですよね?なのに我々の顔を見たら無言で立ち去ろうとして、駆け寄った女性記者を突き飛ばす様な真似まで、明らかに暴力的な面が見られますけど、そこのところはどうなんです?」


いつの間にか勝手に突っ込んで来た加害者側の女性記者が被害者にすり替わって、更にこちらが突き飛ばしたなんて言うオマケ付きになっている。

これ以上は付き合って居られないと、大声でスタッフを呼び付けカメラのフィルムや盗聴していた音声などのデータを没収する。


「周防さん、私からすればスタンピードで溢れてくるモンスターも街中を我が物顔で歩く冒険者も大して変わりが無いんですよ。いずれ御堂カケルが提唱する冒険者制度が実現した日には日本中の弱い立場の人達が苦しむ事になる。それだけは絶対に阻止しなければいけないんですよ。君達が作り出した波を止める為なら私はどれだけ卑怯な手を使う事を躊躇しません。いずれ周防さんにも分かりますよ、自分達のしようとしている事の愚かさがねっ!」


そんな捨て台詞と共に去っていった三村の姿に少しだけ思う部分もあるが、その為に和田とカケル、それを支える関係者達が毎日寝る間を惜しんで駆けずり回り冒険者制度を完璧な物に仕上げようと努力している。


それでも、どこか痼りの様なものを心に埋め込まれた気分のままに部屋の研究機材を眺めるもやる気になれず、ボフンっ、と少しだけ立派になったベッドに身を投げ出せばそのまま眠りに落ちていく。


次の日。

まさか週刊誌の一面を自身が飾るとは思いもしないままに。



ニートのダンジョン攻略記。

ハジメに訪れたトラブルの種は大きく花開き、混乱をもたらす結果となる。

動揺を抑えきれないハジメを次々と襲いかかる無慈悲な言葉の棘はハジメを傷つけていく。

次回、世間はニートにちと厳しい。2

続く。

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