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一難去ってハリケーン!

ざわざわと部屋の外が騒がしく、その喧騒によって覚醒へと向かう意識をどうにか止めようとする睡眠欲が必死に戦うも、残念ながら部屋の外で起こった爆音に敗北を喫する。


くそっ、と悪態を吐きながら寝ぼけ眼のままに安眠妨害の元凶を探せば一瞬で見つかる。


ギルドメンバー達が休んでいる拠点から少し離れた空き地に堂々と鎮座した大型ヘリ。

そりゃ喧しいはずだ、と納得しながらも湧き上がる苛立ちそのままに文句を言いに行こうとすれば掛けられる静止の声にどうにか留まる。


「ありゃ組織の連中だ、多分だが階層突破と女神の寄越した魔石の件を嗅ぎ付けて来たんだろ。面倒ごとは俺と和田さんが担当だから、ハジメはここで大人しくしとけ。」

「大丈夫なのか?」

「ま、組織に属してる以上はいきなりドンパチ始める様な阿呆じゃないだろうよ。」


まるで散歩に行くような気軽さで拠点を出て行くカケルを見送りながら、もしもの事態を想定し手持ちの装備を確かめる。

核だけになったケセラセラ、空っぽになった魔石を入れておくためのホルダー、研究用にキープしておいた魔石が数個。


思った以上に貧相な装備にガッカリしながらも、魔石ホルダーを装備して魔石を詰めておく。

核になったケセラセラは以前作成したペンダントに嵌め込み身に付けておく。


更にもしもを考え、別のハウスで休んでいるタモツとリュウと合流するべきだと思い行動を開始する。


ヘリが止まっている方とは逆の窓から抜け出し、リュウ達と合流しようと動き出せば目に付いた金髪の少女。

コソコソと周囲を気にしながら動く少女は側から見れば完全に不審者ではあるが、数秒前の自分も似た様な動きをしていたくせに金髪少女に対して冷たい視線を向けるハジメの厚顔っぷりは中々に酷いものがある。


「...ねぇ君何してるの?」

「はわわっ!?ワタシ怪しい者じゃありませんデスヨっ!」


こちらに気付いた金髪少女が拙い日本語で必死に弁明すれど、最初の印象とその慌てっぷりに更に増していく不信感は凄まじく上昇していく。


「あ、あのぉ、ワタシはダンジョン攻略を行なっている組織に所属していまして、決して怪しい者ではアリマセンので、ここは見逃してもらえませんデスカ?」

「...。」


組織に所属していて、人目を避けコソコソと動く理由を考えれば、自分達の研究成果を盗もうとしているに違いない。

そんな安直な考えに至ったハジメの行動はひとつしか無い。


「どr「はわわわわっ!?ダメですぅ!」むぐっ」


大声で泥棒と叫んでやろうとしたが、瞬時に察した金髪少女が見た目に反した俊敏な動きでハジメの口を塞ぎ危機を回避する。


金髪少女に押し倒される形で口を塞がれたハジメは金髪少女に非難の目を向けるも、混乱状態の金髪少女はいつまでも口を塞いだ手を離そうとしない。

酸素供給を絶たれたハジメが次第に焦り出すも、金髪少女の混乱は収まる気配を見せず、ハジメの顔色が徐々に青くなっていく。


必死に足掻くハジメをのし掛かり全力で抑え込む金髪少女。

もはや組織からの刺客と言っても過言では無い状況を変えたのはハジメを心配し合流しようと探しに来たユイ。


「ハジメっ!」

「ぶはっ、ぜぇぜぇぜぇ死ぬかと思った。」

「え、ハジメ博士?何処デスカっ!?」

「「え?」」


もはやカオスとなりつつある空間をどうにか落ち付けようと考えを巡らせるも、酸欠気味な脳は良い案を与えてはくれない。


「あーっと、君は組織所属の諜報部だよね?」

「いえ、ワタシは攻略と検証を担当しているアリスと言いマス。今回は誤解を招く様な行動を取ってしまい申し訳アリマセン。」


深々とお辞儀する金髪少女もといアリスに困惑していれば、状況を理解したユイが仲介を務め場を落ち着かせる。


「つまりアリスちゃんはハジメと直接話してみたいと思っていたけど、こっちの担当者からNGを出されたからコッソリ忍び込んでハジメを探していたと、そういう事?」

「ハイっ、魔法発見の第一人者で魔武器などの発明もハジメ博士が行なったと聞きました。ワタシも米国支部で検証を担当している以上、直接お話しして教えを請いたいと思っていたのデス。」


感情豊かなアリスは申し訳無さそうな顔から楽しげな顔とコロコロと表情を変えながら、魔法研究について熱い思いを伝えてくる。


ハジメもユイも研究・検証といった事には人一倍熱い思いを持っており、誤解が解けてしまえば打ち解けるのにそう時間は掛からなかった。


ユイの拠点にお邪魔するのは気が引ける為、カケルと共用の拠点で研究内容について熱い議論を交わす事に。


当然その時には組織から来た本隊と交渉をしている和田の事など頭の片隅に追いやっており、警戒など全くしていない。


時間を忘れ三人で議論に夢中になり、その楽しい時間に終止符を打ったのは呆れた表情を浮かべたカケルと組織から派遣されたアリスの上官が拠点へと迎えに来てからである。


大鬼との戦闘で失った装備を補填する為に必死に交渉テーブルで戦った和田とカケルを他所に、女神から渡された高純度の魔石について議論を交わした挙句に魔石と交換する約束をしてしまったハジメとユイ。

しかも条件的にはこちらの方が良いというオマケ付きだった為に、和田はガックリと肩を落とし、アリスは上官にこっ酷く叱られる羽目に。


想像以上に楽しい時間となった組織の襲来はアリスという可愛らしい少女と研究バカ二人によって丸く収まったのである。


その後も歓迎会と称してはアリスを呼び出し魔法構築や魔道具の原理、モンスターの特性など様々な事を情報交換しながら帰国までの時間を使う。


そして別れの朝。


「もう行くのか。アリス、君と議論した時間は凄く有意義で楽しかったよ。機会があればまた話そう。まぁ出会いは最悪だったけどね。」

「ハジメさんっ、その事については秘密って言ったじゃないデスカ!」

「あははっ、ごめんごめん。」

「スゴく楽しい時間ありがとうございマシタ。ユイさんのご飯スゴく美味しかったので、絶対また来ます。」

「あはは、褒めてくれてありがとう。また一緒にお話ししようね。」

「ハイっ!!」


上官に急かされながらヘリに乗り込む金髪少女アリスを見送れば、ダンジョン攻略の日々に戻る事になる。

アリスとの取引で高純度の魔石と通常の魔石を交換してもらえる事になり、ユイとメグが得た高純度魔石二個を渡し、魔石300個を手にする事ができた為装備の新調が可能となった。


アリスから得た知識は新たなアイデアを生み出し、これまで以上の装備に胸を躍らせながら拠点へ戻ればカケル、リュウ、タモツが待ちわびた顔で向かい入れてくれる。


「二人とも交渉の件については良くやったとしか言えないけど、今後は控える様にしてくれ。」

「ごめんごめん。でもおかげで米国の研究内容が手に入ったんだ、これでみんなの装備がグレードアップ出来るよっ!」

「...ハジメよぅ、それで大鬼が残した呪印と同程度かそれを超えるだけの装備が作れるのか?」


ぞくり、と全身の毛が逆立つほどの気迫で迫られ返答に困っていれば、冗談だ冗談、とバシバシ肩を叩いてくるリュウに戸惑いながら新装備について話し合いが始まる。


「ーーというわけで、高純度魔石の使用についてはカケルとリュウの装備新調に使うことになるけど、タモツは大丈夫かな?」

「ああ構わない、俺の装備は補修で間に合うし今まで以上に前衛の二人が強くなれば戦いも楽になる。」

「じゃあそれで決まりってことで。リュウの期待に添えるかは分かんないけど、俺とユイの知識を総動員して新装備を考えたから、それなりに期待してていいよ。」

「はっ、生意気言いやがってこの野郎っ」


がっちりと肩を組みじゃれ合いながら、休息と次の攻略に備え穏やかな時間を過ごす。



ニートのダンジョン攻略記。

嵐の様に突然やってきた金髪少女アリスによって得た知識は、ハジメとユイに新たなアイデアを授けてくれた。

そして、大鬼との戦いで失った聖剣と刻印をより強く作り直すこととなる。

次回、世間はニートにちと厳しい。

乞うご期待。

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