強敵襲来、日本の国技舐めんじゃねぇ!5
目の前にはそり立つ壁。
見上げるほどに高い壁は、その役目を終えた後は粒子に変わり消えていく。
「リュウっ!負けっぱなしじゃあ終われねぇだろうが!!ここで全部出し切れやっ!!」
「ゔぁぁぁああああ!!」
言葉にならない叫びは決意の咆哮か、はたまた敗北に対する慟哭か。
ほとんど残っていないはずの魔力を練り上げるリュウの右腕に集っていく刻印が眩い程の光を零し始める。
ケセラセラの支援を受け、高い壁を作り上げたタモツが魔力切れのせいか、血を流し過ぎたせいかフラつきながらもリュウを展開した大盾に縛り付けていく。
宙に打ち上げられた大鬼を見遣れば、すでに頂点を過ぎ落下を始めている。
ニヤリと笑みを見せる大鬼を憎らしく思いながらも、すでに立ち上がる事すら出来ないほどにボロボロで炎弾一発すら打つ魔力もハジメには残っていない。
「わんぱく相撲でハジメが勝った時に言ったんだよ、真っ正面から戦うだけが勝つ方法じゃないってな。今回もハジメに頼り切りになっちまって情けねぇったらありゃしねぇ。詫びって訳じゃねぇが、せめて勝利だけはもぎ取ってくるわ。」
「何言ってんだ、カケルはいつでも俺にとってのヒーローなんだ。格好良く決めてきてくれよ?」
おう、と短い返事を残して駆けていく後ろ姿は、ガキの頃見た頼りになる背中で、自身の全て出し切って頑張った甲斐があったと素直に思える。
大鬼が着地するまであと僅かといったところで聞こえるカケルの気合いの咆哮。
紫電を纏い振りかぶった拳は着地寸前の大鬼に直撃し、大鬼の動きを封じると共に滞空時間を僅かに延ばす。
そこに走り込んで来たのはタモツと大盾に乗せられ運ばれるリュウの二人。
言葉にならない怒号を上げながら右腕を振りかぶるリュウに合わせる様にして大盾を振るうタモツのコンビネーションが電撃を受け硬直状態の大鬼に迫る。
「「うぉおおおぉおお!!」」
「小賢しいわぁぁあああ!!」
インパクトの直前で硬直から復帰した大鬼が吼える。
リュウの右腕に込められていた魔力が衝撃に変換され、その衝撃を更に刻印が増幅させた一撃はタイミングを合わせたタモツの動きによって普段通りとはいかずとも、遠心力を上手く利用し威力は高まっている。
リュウの全てが込められた一撃は大鬼へと直撃。
右腕に込められていた衝撃が解放され大鬼をステージ端まで吹き飛ばすも、床を削りながら進む大鬼にギリギリで踏み止まられてしまう。
技の反動で大盾から外れたリュウは床に崩れ落ち、タモツは衝撃で肩を脱臼。
唯一動けるカケルがあと少しを押し込もうと大鬼へ飛び掛かるも軽くいなされてもて遊ばれる。
「ルールに則り場外狙いという発想は悪くなかった。貴様らが万全の状態だったなら届き得ただろうな。」
大鬼がこちらへ一歩踏み出す度に勝利の可能性が遠ざかり消えていく。
必死でその場に留めようとするカケルを引き摺りながら進む大鬼の前に立ち上がるのはリュウ。
「までよ。」「くどい。」
大鬼の振るう暴力的な一撃は、リュウの身体に突き刺さったと錯覚するほどに容易くリュウを吹き飛ばしてしまう。
カバーに入ろうとしていたタモツにぶつかり、二人揃って場外へ落ちていく。
どさり、と同じ様に殴り飛ばされて来たカケルが転がる様にして隣へとやってくる。
奇しくも二人揃って床を這い蹲っており、お互いの顔を見合わせる形になっているのが、どこか可笑しく思えてケラケラと笑い合う。
「...死を前にして笑う元気があるか。」
「逆だ逆、笑うくらいしか出来ねぇから笑ってんだよ。なははっ」
完全に打つ手無し。
手持ちのカードは全部切り、もはや指一本動かす事も出来ないほどに疲弊した身体は逃げ出す事すら叶わない。
最大の切り札ケセラセラも今は光を失い、そのカタチを保つ事が出来ずに核だけを残し消えた。
「実に愉快な時間だった。到底及ばぬと知りながらも必死で抗う姿は悪くなかったぞ。才能に溢れた戦士と奇妙ななチカラを使う貴様の組み合わせは実力を何倍にも高め、本来なら一瞬で終わる戦いを拮抗したものへと変化させた。」
「...そりゃどうも。どうせならここで俺たちを見逃して再戦に期待するっていうのも悪くは無いと思うけど?」
「なははっ、そりゃいいなっ!動けない獲物相手じゃ燃えねぇだろ?ここはひとつ仕切り直しで後日再戦がいいよなっ!うん、そうしよう。」
寝転がっているせいか、近付いてくる大鬼の足音が鮮明に感じ取れ、近くで止まった事が何となく分かる。
「悪くない提案だ。だが、もう一度貴様らと出会う確率はどれほどだろうか?神にとってイレギュラーな存在である俺はいつまでもここに居られる訳では無くてな...更に下層で成長した貴様らとの再戦を待つのも一興か。」
どさり、と座り込んだ大鬼の巨躯が視界に入ったと思えば、伸ばされる丸太の様な太い腕に二人揃って腕を掴まれる。
そのまま持ち上げられれば半ば強制的に視線を合わせられ、紅く燃える様な瞳が俺とカケルを射貫く。
「なははっ、期待は裏切らねぇさ。俺たちは絶対に神の試練を越える。誰よりも早く攻略を進め、誰よりも早く最下層に到達する。その入り口で待ってろよ、必ず追い付いて次は勝つ!」
「だな、次は更に強くなった俺たちがアンタを超える。俺達の英雄譚は始まったばかりなんだ、ここで摘み取るのは気が早過ぎだぜ?」
ふむ、と頷き魔力を高める大鬼の動きに緊張しながら答えを待つ。
次の瞬間、大鬼から伝わる魔力が激痛に変わり、焼ける様な苦しみが襲いかかってくる。
「「あがっぁぁぁああああああああ」」
「一年だ。それまでに下層入り口の50層まで来い。身体に刻んだ紋が鍵となって再戦へ導いてくれる、期待してるぞ?」
唾液を垂れ流し、嗚咽混じりに返事をしようとすれど、痛みに泣き叫んだせいで声は枯れ碌に言葉も発せない。
身体を解放され床に崩れ落ちながら見たのは、同じ様に床に這い蹲るカケルと互いの腕に刻まれた大鬼が残した紋様だった。
ニートのダンジョン攻略記。
激戦の末に敗北を喫したハジメ達だったが、大鬼の気まぐれによって何とか十階層の試練を生き抜く。
残されたのは大鬼による再戦の約束と期限。
敗北によって失ったものは多く、負った怪我も相当に深い。
それでも彼らは戦いからは逃れられない。
次回、元気と空気と空元気。
乞うご期待!
どうも源助です。
ここまで書き進めて自身の未熟さを痛感しているところですが、物語の中の彼等の様に同じように成長していければと思っています。
温かい目で成長を見守っていただければ嬉しいです。
誤字脱字に未熟さが前面に出た文章ではありますが、ここまで読んで下さった読者の方々には感謝しかありません。
これからも更新頑張りますので、どうかニートのダンジョン攻略記をよろしくお願いします。




