ニートと社長とダンジョンと。
想像力。
それは誰もが持ち得るものであり
それは人の数だけ存在して
それは無限の可能性を秘めている。
そして今の世界はそれが現実となり得る世界であり、それが世界を救う唯一のチカラである。
そんなチカラに触れた時、人は何を思い、何を願うのか。
世界各地で起こるモンスターという脅威に立ち向かう為のチカラを願う者もいれば、そのチカラに溺れ暴力を振るう者もいる。
そして日本の山間にひっそりと佇むダンジョンでも、そのチカラの神秘に触れ歓喜する者がいた。
必死にメモ書きに思い付いた事を書きなぐる様は側から見れば狂人のそれ。
口元はわずかにニヤけ、見る者が見れば即通報ものではあるが、ここにいるのはハジメを知る者達だけであるが為に指摘も通報もされないのは、ハジメにとって幸か不幸か。
そんなハジメに忍び寄るひとつの影。
「...え?」
-ザクリ。
脇腹から伝わる強烈な熱。
何が起きたのか、と視線を向ければ自身の脇腹に突き立てられたナイフを確認し、混乱する脳が刺された事を認識すれば、それをキッカケに伝わる激痛がハジメの身体に走る。
「うぐぅ、がぁあぁあぁ!!タモツっ敵襲だ!」
激痛に折れそうになる心を奮い立たせ、仲間達に聞こえるように声を上げる。
その声にいち早く反応したのはタモツ。
「ハジメ下がれっ、おぉおおおおお!!」
展開した盾でハジメを庇うように立ちはだかるタモツに舌打ちを零す襲撃者。
その背後から気配を消し強襲を掛けるメグを遮る影が三つ。
「...こんなとこまで、面倒くさい女。」
「貴女達が出しゃ張らなければこんな面倒な事しなくても良かったのよ。」
「散々利用されてやったってのに、まぁだ足りねぇってのかっ!!」
怒声と共に未完成の聖剣を振るうカケルの一振りが襲撃者達へ迫るもギリギリで躱される。
襲撃者の正体はダンジョン対策本部の一団。
特殊訓練を受けている彼らがレベルアップを果たした事で戦闘力は上がり、その中でも魔法の発現した数名で構成された対策本部最強のチームがハジメ達に強襲を掛けてきたのである。
半年間ダンジョンで鍛え上げられた対策本部の実力に苦戦するギルドメンバー達に庇われる形でダンジョンの壁にもたれかかるハジメの顔色は相当に悪い。
ハジメの怪我は普通ではなく、傷口は爛れ溢れる血はどす黒く変色している。
手当に当たるユイも医療知識はそれなりにあるが、この様な症状は心当たりが無く思い付く限りの対処法を試してみるもハジメの容態は悪化する一方である。
「カケルっ、ハジメが死んじゃうっ!!」
「...てめぇら、ハジメに何しやがったぁぁぁああああ!?」
「もう全身に毒が回った頃かしら?ダンジョン産の毒に通常の解毒は効かない。その毒は全身を激痛が支配し、最期は悲惨な姿で終わりを迎える」
噴き出る汗が拭いながら、必死でケセラセラに魔力を送り込もうとするが痛みが限界を越え集中など出来ない。
自分でも分かるほどに限界が近い。
朦朧とする意識の中で最後に見たのは、贈ったケセラセラに祈りを捧げるユイの泣き出しそうな表情だった。
ニートのダンジョン攻略記。
橘林檎の執念がハジメを絶体絶命へと陥れる。
予想以上に手強い対策本部の連中に苦戦しながらも必死で戦うギルドメンバー達だが、未知の毒に冒されたハジメに残された時間は少ない。
次回、昼寝は作業効率を上げるらしい。
乞うご期待。




