押すな押すなはフリじゃない。
ようやく辿り着けたダンジョンの入り口。
見渡せばメンバー全員が気合いの入った顔付きで出発の合図を今か今かと待ちわびている。
全員が期待の篭った目でカケルに視線を向ければ、それに応えるように大きく頷き一歩進めば掛けられた言葉は神の試練への思い。
「ようやくダンジョン攻略だ。ここまで来るのにえらく時間が掛かったけど、これまで潜ってきた修羅場は先行した連中に負けちゃいない。頼りになる検証担当が俺たちのチカラを押し上げて、燻っていた時間は俺たちにチカラを磨く時間を与えてくれた。こっから先は最前線まで最速で駆け抜ける。覚悟のある奴だけ付いて来い!」
強気な発言のままにダンジョンへと挑んでいくカケルの隣を当然のように付いて行くメグ。
力強く拳を打ち合わせ気合い充分にカケルの後に続くリュウと手持ちの道具を軽く点検した後でダンジョンに挑んでいくタモツ。
迷いなく進んでいく面々の足取りは力強く、どこまでも頼りになる。
隣にいるユイに視線を送ればそっと頷きダンジョンへと足を進める。
ダンジョンの入り口には境界線のようなものがあるのか、その先を見通せない不可思議なチカラが働いていて中の様子どころか、先に行ったメンバーの姿すら見えない。
少しだけ不安を抱いて躊躇していれば、後ろからえいっという掛け声と共に衝撃が伝わり、つんのめる形でダンジョンへ突入する羽目に。
「わわっ、ちょっユイ危ないって」
「優しく背中押してあげただけでしょ?さぁ検証検証。」
先行したメンバー達から生暖かい視線を寄越され、ゴホンと姿勢を整えればそこはダンジョン内である。
「こんなとこでもイチャイチャとは筋金入りのバカップルぶりですなぁ、おじさんおばさんも孫の顔早く見たがってるんじゃ無いの?なははっ」
「ちんたらしてねぇで早く行くぞっ」
メンバー全員を飲み込んだダンジョンは普段と変わらずに、先の見えない暗闇を入り口に構え挑戦者を待ち続ける。
ダンジョンへと足を踏み入れたら辺りの景色は変わり、洞窟の中のような場所に出る。
光を放つ苔が所々に群生しているお陰で最低限の視界は確保出来ているが、やはり薄暗い環境では普段通りとはいかずに移動速度は鈍る。
「これがダンジョンねぇ、予想通りというか何というか想像した場所まんまだな。」
「...索敵は任せて。」
先行するカケルとメグがぐんぐん進むので、置いていかれぬように付いていけば、急に立ち止まり弓矢を番えるメグが無言の強襲。
矢の行き先を追えば粒子と化すゴブリンの姿。
残った2体のゴブリンが慌てたようにこちらへ向かって来るも、あっさりとリュウの豪腕の餌食となり粒子へと変わる。
残されたのはゴブリンの魔石がひとつ。
ドロップ率はスタンピードの際と変わらず三割程度のようで、ダンジョン内ならもしやという甘い希望は潰えてしまう。
「ゴブリン二、三体じゃあ肩慣らしにもならねぇな、とっとと先に進もうぜ!」
「なははっ、流石に一階層じゃ相手にもならないか。どんどん行くぞ!!」
意気揚々と進んで行くメンバーに置いていかれないよう気を付けながらも、光る苔やダンジョンの壁などについてユイと話しながら進んで行く。
時折起こる戦闘もカケルを筆頭にサクッと片付けてしまうために後方にいる二人に出番は無い。
明らかに戦力過多な状態であるため、試したかった事を次々と試していきながら検証をしていけば下の階層に続く階段の出現。
隊列そのままに階層を降りてみれば代わり映えのない洞窟の景色。
入り口や階層の変わり目に存在する不思議な境界線の秘密を探りたいが、血気盛んなメンバー相手に駄々を捏ねるのも憚られ断念する。
「また洞窟か、ダンジョンといえば薄暗い洞窟ってのが定番ではあるけど、この視界の悪さはどうにもな。」
溜め息を吐きながらすいすいと進んで行けば二つの分かれ道。
どうするのか、と意見が出ればカケルは迷わず左を選びずんずん進んで行く。
「...何で左を選んだの?」「勘。」
思わずずっこけそうになるのを堪え、少しだけ不安な探索は続く。
ニートのダンジョン攻略記。
ダンジョン攻略へと乗り出したギルドメンバー達は、これまでを取り戻す勢いのままにどんどん先へと進んで行く。
その足取りは力強く頼もしい。
次回、あれとそれとこれとどれ?
乞うご期待。




